初夏の訪れ
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体育祭。
うちの高校では新クラスの親睦目的なのか毎年この時期に行われる。
体育祭なんて本当に必要なのだろうか。
運動できる人間が、運動のできる人間だけが輝いてきれいごとのように【皆で頑張ろうね】なんて呪いのようにクラス全体を縛り付ける。
ああ、先頭に立っている君たちはいいだろう。運動できる人は。
そうだね、がんばろうね。目指せ優勝!なんて盛り上がって。
でも、私みたいな運動が嫌い、いやその、苦手というか、ちょっと得意じゃない?みたいな人種には苦行でしかない。
わかりやすく目に見えてクラスの足を引っ張ってしまう。
いや、私だって許されるならずっとベンチを温めていたいのに。
ムリヤリ出ろと言われて出たら冷ややかな視線を向けられる。
ここは地獄か?
まあめちゃくちゃ暑い時期にされるよりはマシかもしれないけど。
「すっげえ顔」
体育祭の種目決めのホームルームの時間。
新一が私の顔を覗き込んでそう言った。
「ここは地獄か、と考えている」
「相変わらずだな、お前」
私の言葉に新一はけらけらと笑った。
「貴様には私の気持ちは永遠に分からんだろう」
「何キャラなんだよ」
「体育祭ってなんで存在すんの」
「今更だろ、諦めろ」
こんな行事も今年が最後だぞ、
新一はそう言って100m走に立候補する。うわまじかこいつ。
「いいねえ、サッカー部のエース様は」
「茶化してねえでお前もさっさと決めろって」
「えー、ベンチ」
「却下」
「じゃあ入場門」
「フィールドに入れ」
「……たまいれ」
「おーい!優が玉入れ出るって!!」
「おい」
玉入れだったら出てもいいかな、そんな動かないし。
多分私の投げる球は籠に届かないんだけど。
そう思って答えたら、新一がすぐさま大声でクラス全体にお伝えする。お前は拡声器か何かなの?
「横暴だ……」
「諦めろ」
私は新一を睨み付けるも、新一はけらけらと笑ったまま。
「楽しそうだね」
「あったりめーだろ!ようやく元の姿に戻れたんだぞ!」
「今だけはあんたが羨ましいよ」
新一は本当に嬉しそうだ。
まあ、一年ぶりに高校生活を満喫しようとしている幼馴染にちょっとくらい付き合ってあげるのも悪くはないかな。
「頑張ろうね、体育祭」
「、おう!」
私がそう言うと、新一はまた嬉しそうに目を細めて笑った。