赤井秀一(沖矢)
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朝起きて、ポストを覗く。
いつの日かそれが毎日の楽しみになっていた。
アメリカで忙しなく働く私の彼氏。
日本と本国を頻繁に行き来する彼ではあるが、
そうは言っても会えない日の方が多いのは事実で。
会いたい、なんてそんなことを言ってしまえば
本当に翌週の航空券を手配してしまう彼に、そんなこと言えるはずもなく。
毎日ほんの数分だけ、電話をする。
そんなある日のことだった。
「あれ、」
朝起きて、ポストを確認すると、一枚のエアメール。
「秀一さん……?」
宛名は海の向こうの愛しいあの人。
「なんでわざわざ手紙なんか、」
今のご時世だ。メールだってあるし、電話だって毎日しているというのに。彼はなぜかアナログな方法で私に連絡をしてきた。
不思議に思いながら封を開けると、
そこには意外にも綺麗な字が並んでいた。
『Dear 佳奈
電話ではいつもあまり話が出来ないから、
手紙を書いてみることにした』
そう前置きをして、綴られた文章
お昼ご飯のサンドイッチが予想よりおいしかった、とか
仕事に疲れてコーヒーとカフェオレを間違えた、とか
なんだか笑ってしまうほど他愛なくて。
あの不器用な彼が、頭を悩ませながらこれを送ってきたのだと思うと、なんだか嬉しくって、かわいくって。
「返事、書こっか」
それからというもの、
私と彼の海を越えた手紙のやり取りは続いた。
お互い、何気ないやりとりで。
別にメールでだって出来るんだろうけど。
なんだかこのご時世にあえて綴るアナログなメッセージのやり取りが楽しくって。
だいたい週に一度の頻度で届く手紙を楽しみにしながら、
私は今朝もポストを開けるのだ。
「お前はいつも秀一さんに会ってるんだもんなあ」
郵便ポストに入れる前の手紙を撫でながらつぶやく。
こんなてのひらサイズの、小さい紙切れに、こんなこと思うなんて。
ちょっと馬鹿らしくなって、ひとりですこしだけ笑った。
「なんだか、妬けちゃう。」