夕焼けを刻む時 Ⅰ
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カーテンコールも終えて、舞台の幕が完全に閉じた瞬間。クラスメイトの面々が私たちに駆け寄ってくる。おつかれさま、とってもよかったよ、なんて笑ってくれる彼らに私は笑顔で応じた。天馬も「当たり前だろ」なんて笑っている。ああ、あんまり覚えてないけどちゃんと成功できたんだ。よかった。
「ねえ、天馬」
「なんだよ」
「楽しかったね」
「おう、」
私の言葉に天馬は視線をそらしてしまった。
「また、一緒にやろうね、お芝居」
「もう、舞台なんてごめんだ」
私の言葉に天馬はそう小さく呟いた。
私とやっても楽しくなかったのかな、なんて思い少し目を伏せてしまう。すると天馬が私の表情に気付いたのか、慌てて言葉を付け足した。
「お前との芝居は楽しかった!」
「じゃあ」
「でも、舞台に立つのはもうごめんだ」
天馬はそう言って笑うと、
「共演しようぜ、ドラマで」
と言葉を続けた。
私は曖昧に笑って「楽しみだね」とだけ返した。
私と天馬が共演できるとしたら舞台の板の上でないと不可能なわけだけれど。天馬がそれを望まないなら私が望むなんてことはできない。天馬は売れっ子の子役だ。その言葉をもらえるだけでこんなにうれしいことはないのだ。もう、十分だ。そう思うことしかできない自分がいやに情けなくなる。
「あれ、」
そこまで思って、ふと、考える。私いつからこんなに天馬のことを考えるようになったのだろう。だって、これじゃあまるで、私が天馬ことを____
「好き、みたいじゃない………」
声に出してしまえば、段々と顔の熱が広がっていくのを感じる。そうか、私は、あの圧倒的な存在感に、人を引き付ける笑顔に、恋をしてしまったのだ。一人納得してふわふわと浮きたつようなこの感覚を噛みしめる。勝手に想うくらいなら、許されるだろうか。結ばれたい、なんてそんな大それたことは願わないから、どうか、この暖かで幸せな感情を捨てずに胸の奥にとどめておくことを許してはもらえないだろうか。