逍遥日記
天正壬午の乱
2011/06/29 00:00日本史
天正壬午の乱
本能寺の変と東国戦国史
初版 2011年3月1日
著者 平山 優
発行者 土屋俊介
発行所 株式会社学研パブリッシング
武田遺領をめぐる動乱と秀吉の野望
―――天正壬午の乱から小田原合戦まで
著者 平山 優
初版 平成二十三年六月一日
発行者 伊藤光祥
発行所 戎光祥出版株式会社
両書は発行所が異なるが、著者が同じで『武田遺領をめぐる動乱と秀吉の野望―――天正壬午の乱から小田原合戦まで』は事実上『天正壬午の乱 本能寺の変と東国戦国史』の続編であり、続きだと考えて貰ってよい。読んでいただければわかるが、間違いなく資料収集は同時に行われている。むしろ、天正壬午の変について調べた結果、事後問題である真田領(沼田城など)の帰属問題を始めとする諸将の思惑が入り乱れた動向から小田原征伐までを一つの流れと考えた方がよいと判断したのだろう。
もっともこの騒乱に関わった大名家は織田、武田、徳川、上杉、北条、豊臣、佐竹、真田、木曽、諏訪、小笠原、保科…と数え上げれば限がないので当然ではあるが。
また個人的な本音を言えば卒論でこの天正壬午の乱を研究しようとしたのだが、あまりに広範囲で関わった人間が多過ぎたので私は止めている。
そう言う経緯があるので、この著書は書店で発見した瞬間に購入を決意したのは言うまでもない。(値段が倍だったら泣きながら諦めていた可能性はあるが…)
注目や見所はたくさんあると言うかほとんどが目から鱗が落ちるような話である。戦国史が好きな方へは是非お勧めしたい。
本能寺の変後、旧武田領にいた織田家の武将達の動向をここまで丁寧に綺麗に調べあげられている物を読んだのは初めてで大変参考になった。
毛利長秀(秀頼)と小笠原信嶺の対立、河尻秀隆の動向、滝川一益の通説や逸話とは異なる動向、木曽義昌と小笠原貞慶の対立、あるいは上杉景勝の支援を受けた小笠原貞種の介入など、新鮮であった。
木曽義昌の動向については驚かせられ、今まで彼に対する認識が甘かったのだと感じた。
木曽義昌と聞けば、岩村城救援拒否と武田家滅亡時の寝返りだけの印象が強いが、彼は領土拡張を狙いかなり活発に動いていた事がわかった。寝返りの褒美に貰った二郡を確保しようとしただけでなく、諏訪や伊那に手を出し、佐久衆の人質を確保していたり、想像以上に信濃全域に影響を与えていた事を知った。
また、平山氏の著書なので当然ながらスポットが当たっていた為にて知る事が出来たのだが、天正壬午の乱から小田原征伐までの一連の騒乱に武田の遺臣達が武田家時代の縁や繋がりを利用して徳川、上杉、北条、あるいは織田や豊臣と言った大国の動向に多大なる影響を与えていた事がわかった。例をいくつかあげると、武田勝頼→森長可→上杉景勝と属し、最後に北条との内通が発覚し処刑された春日信達(高坂昌達)の北条への寝返りは真田昌幸の手引きがあったし、保科正直の高遠城復帰と北条から徳川への寝返りなどにも真田昌幸の助言や影響があった。あるいは劣勢の徳川が多勢の北条を防ぎきれたのは武田遺臣を多く味方に付ける事ができた徳川方が地元民しか知らない登山道等を利用し、奇襲や撹乱をした結果であった事を改めて知る事ができた。
他にも様々な点で興味深かった。機会があれば個別に動向等を整理して感想や私見を述べてみたい。
本能寺の変と東国戦国史
初版 2011年3月1日
著者 平山 優
発行者 土屋俊介
発行所 株式会社学研パブリッシング
武田遺領をめぐる動乱と秀吉の野望
―――天正壬午の乱から小田原合戦まで
著者 平山 優
初版 平成二十三年六月一日
発行者 伊藤光祥
発行所 戎光祥出版株式会社
両書は発行所が異なるが、著者が同じで『武田遺領をめぐる動乱と秀吉の野望―――天正壬午の乱から小田原合戦まで』は事実上『天正壬午の乱 本能寺の変と東国戦国史』の続編であり、続きだと考えて貰ってよい。読んでいただければわかるが、間違いなく資料収集は同時に行われている。むしろ、天正壬午の変について調べた結果、事後問題である真田領(沼田城など)の帰属問題を始めとする諸将の思惑が入り乱れた動向から小田原征伐までを一つの流れと考えた方がよいと判断したのだろう。
もっともこの騒乱に関わった大名家は織田、武田、徳川、上杉、北条、豊臣、佐竹、真田、木曽、諏訪、小笠原、保科…と数え上げれば限がないので当然ではあるが。
また個人的な本音を言えば卒論でこの天正壬午の乱を研究しようとしたのだが、あまりに広範囲で関わった人間が多過ぎたので私は止めている。
そう言う経緯があるので、この著書は書店で発見した瞬間に購入を決意したのは言うまでもない。(値段が倍だったら泣きながら諦めていた可能性はあるが…)
注目や見所はたくさんあると言うかほとんどが目から鱗が落ちるような話である。戦国史が好きな方へは是非お勧めしたい。
本能寺の変後、旧武田領にいた織田家の武将達の動向をここまで丁寧に綺麗に調べあげられている物を読んだのは初めてで大変参考になった。
毛利長秀(秀頼)と小笠原信嶺の対立、河尻秀隆の動向、滝川一益の通説や逸話とは異なる動向、木曽義昌と小笠原貞慶の対立、あるいは上杉景勝の支援を受けた小笠原貞種の介入など、新鮮であった。
木曽義昌の動向については驚かせられ、今まで彼に対する認識が甘かったのだと感じた。
木曽義昌と聞けば、岩村城救援拒否と武田家滅亡時の寝返りだけの印象が強いが、彼は領土拡張を狙いかなり活発に動いていた事がわかった。寝返りの褒美に貰った二郡を確保しようとしただけでなく、諏訪や伊那に手を出し、佐久衆の人質を確保していたり、想像以上に信濃全域に影響を与えていた事を知った。
また、平山氏の著書なので当然ながらスポットが当たっていた為にて知る事が出来たのだが、天正壬午の乱から小田原征伐までの一連の騒乱に武田の遺臣達が武田家時代の縁や繋がりを利用して徳川、上杉、北条、あるいは織田や豊臣と言った大国の動向に多大なる影響を与えていた事がわかった。例をいくつかあげると、武田勝頼→森長可→上杉景勝と属し、最後に北条との内通が発覚し処刑された春日信達(高坂昌達)の北条への寝返りは真田昌幸の手引きがあったし、保科正直の高遠城復帰と北条から徳川への寝返りなどにも真田昌幸の助言や影響があった。あるいは劣勢の徳川が多勢の北条を防ぎきれたのは武田遺臣を多く味方に付ける事ができた徳川方が地元民しか知らない登山道等を利用し、奇襲や撹乱をした結果であった事を改めて知る事ができた。
他にも様々な点で興味深かった。機会があれば個別に動向等を整理して感想や私見を述べてみたい。