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逍遥日記

イラッ☆

2013/06/28 23:00
旅行
 道を間違えて城跡から段々離れて行っている。
(あ~~…やっぱあそこは右じゃなくて戻って左だったかなぁ?)
 遂にはどうも行き止まり臭い場所に来てしまったので、行き止まりだと確認してUターンする事にした。
 しばらくすると、後ろから謎の罵声が聞こえてきた。振り返ると爺がいる。
(やべぇ、よくわからないけど、変な奴に目を付けられたかも……さっさと戻ろう)
 よくわからないがとりあえず危うきには近寄らずの考えで早々に間違える前の道へ戻る事にした。

 ところが三分程後。

「おい!!」
「? (うわぁ~~追い掛けて来ちゃったよぉ)」
 理由はわからないが変な奴に本当に目を付けられたらしく大声で呼び止められた。
「なんでしょうか?」
 内心凄く嫌だったが、振り返ってすげぇ爽やかな声で御尋ねした。
 振り返るとやはりと言うべきかさっきの爺。わざわざ追い掛けてきた様だ。
 私が割りと背が高い方だからと言うのもあるが、背が低い印象を受けました。まあ、それよりも眼球が黄ばんだみたいに濁っていて目ヤニが着いていた事の方が印象的でしたが――。ともかく嫌で仕方がないが、逃げる理由もないので、此方に向かって来るその爺が到着するのを待ちました。
 で、近くに来たその爺の第一声が、
「お前、今あっちに来ただろ」
「???」
 意味不明。とりあえず丁寧に答える事にしました。
「ええ、道に迷っていまして通り抜け出きるかと思ったのですが、私有地の様だったので引き返しましたが……」
 厳密に言うと袋小路になっている市道を付近の住民(この爺だろうか?)が占有して駐車場の様に使用していたのだが、一々不法行為だと指摘する意味も必要も無かったのでそこには触れず状況を説明したのだが……
「何しに行ったんや!」
「???」
 この爺は話を全く聞いてない。ただどう言うわけかこの爺の中では私は不審者だと確定らしいと言う事を察した。
「いや、ですから私は道に迷ってあちらへいきましたが、私有地の様でしたので引き返しました。入ってはいませんでしたよね?」
 不法侵入だと決めつけられたら困るのでそこだけはハッキリさせておいた方がよいと判断してそう言ったのだが、爺はそれが気に入らなかったらしい――て言うか自分が間違っていたらしい事を察したのに認めたくないと言う反応をした様に見えたが……あるいはさかしらな印象を与えたのだろうか。その辺りは相手に常識がないのでよくわからない。
 そもそもその辺りの近所を徘徊していたとかなら不審者認定されても仕方がないと思うが、私の行動を時系列にならべると『城の堀を観察』→『道を間違えて住宅街へ入ってしまう』→(十分経過)→『間違いに気付く』→(三分後)→『行き止まりに当たり間違いを確信し、撤退』→『爺から罵声』→(三分程後)→『爺に絡まれる』となりさ迷っていたのは15分以内、爺の家(おそらくそうなのだろう)の前にいた時間なんてどう考えても30秒以内である。これで不審者だと認定したのならあの爺の脳内では『見た事がない奴がいる』→『家近くで引き返した』→『覗かれた?』→『いや、覗いたに違いない!』→『不審者だ』→『後をつけてやる!』→『待てやコラ!!』となった事になる。意味不明て言うか理解不能。何処で断定になったのだろう。
 だいたい不審者だと感じたのならばこそこそ後などつけずその場ですぐに何をしているのか尋ねるのが普通であるし、会話をする以前から決めつけていると言う段階で意味不明。しかも此方の言い分を聞いていない。現実を認識する能力が欠如しているか、ヤカラとしか考えられない。

「でも覗いとったやろうが!!」
 ヤカラかタカリかよアンタはと思ったがとりあえず聞き流した。
「いや、ですから。私は道に迷って行き止まりだったので、引き返しただけです」
「覗いてたやろうが!!」
(テメェの家だかなんだか知らねぇが興味もねぇよ。つうかどの家を覗いたんだ? 記憶にねえよ。てか、道に迷ったて言ってるだろうが!!)
 と内心では思ったが、同時にこの頭のおかしい爺の考えがぼやんとだが読めた。
 要するに『自分が間違っていた事には心の何処かで気付いているけど間違いを認めたくない』『恥をかきたくない』『だからお前が悪い!』と言う頭の固い頑迷な老害特有の超常思考だ。そうでなければ人の話が全く聞こえない自分至上主義の耄碌爺である。
 正面から喧嘩して完膚なきまでに論破した上で警察を呼んで私は観光に来ているだけなのに道に迷ったら変な爺に絡まれた。ほら観光客でしょ?てデシカメ内にある城跡の写真を見せて無実を証明し、逆に脅迫罪だとか、名誉毀損だと訴える――て言う展開が一瞬頭に浮かびましたが。この爺の相手をする数十倍面倒くさいのでやめました。
 そんな事よりこの頭のおかしい爺のくだらない自尊心を満たしてやった方がさっさと話が終わる。じゃあ貴方が優位ですよっておだてるに限る。
「ですから私は他所から此方に来ていまして今迷子になっているんです!!」
 二十代後半のいい年した青年が爽やかに大きな声で『自分は迷子です』と宣言すると言う凄くシュールな光景になったが、この頭のおかしい爺のくだらない自尊心とやらを満たしてやるには『私はバカです』と下手に出るこの選択で間違っていないはず。
「何処から来たんや!!」
「大阪です」
「大阪から来て……ブチブチ(以下聞き取れなかった)」
「ええ、大阪からこの辺りに来て迷子になっているので今から元の所へ戻るところです」
「大阪ではフンガフンガ(何言ってるかわからない)迷子になったらなぁ!! 警察に言うんや!!」
 負け惜しみから来る捨て台詞なのか、とりあえず怒鳴りたかったのか詳細はわからないが、とりあえず道を間違えて10分程でお巡りさんを頼らないと不審者扱いされるなら警官を日本全国で数千万人規模で増員しないと人手が足りないと思う。
「ええ。ですので一度もと居た場所に戻りたいと思います。では失礼致します」
 わざわざ最敬礼に近い御辞儀をしてその場を後にした。



 ――と言った感じの事が今日ありました。ちなみに時間は15時前、別に暗くなってからお邪魔したわけではありません。
 チッ! 休日に城跡付近で道を間違えて住宅街に迷い込んだら頭のおかしい爺に不審者扱いされました。せっかくの休日に!!
 ちなみにその後、あの爺が後を尾行してくるかもと思って念の為に駅まで戻りました。後をつけてこられたのがかなり気持ち悪かったので。
 後から考えたら相手が頭がおかしいだけの小物だったからあそこまで冷静だったのだと思う。だいたい一々高圧的で嫌味な口調だったり怒鳴ったりしてましたが、河内弁程に迫力がなかったので怖くなかったです。本当に生え抜きの地元民の河内弁って本当に恐いから(笑)

 あんな頭のおかしい爺みたいな人ばかりが住んでいるわけではないとわかってはいますが、なんかよそ者に冷たい人が多かったかなぁ。だから……もう二度と行かないよ、大和郡山!

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