stage0.75歓迎会の出会い
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「こ、これはその……」
見られてしまい不味いと思い必死に言い訳を考えるが、都合のいい理由が思い付かない。
それに言い訳を述べる事よりも気になる事があって、
「こんな場所に日本語がわかる人がいるのは意外だった?」
そうなのである。ここに日本人が参加する事は極めて希有である。
此方の疑問を見透かした様に先に述べた黒髪の少年は「よっと!」とかけ声と共に飛び降りて私の近くに来た。
近くで見てわかったが、どうやら歳は同じぐらいのようだ。
何処の貴族かわからないので、警戒しながらシュタットフェルト家の令嬢として対応する。
「ええ、それはまあ……ブリタニアの貴族の集まりですし」
「そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ? まあ、初対面の人間を信用しろと言っても無理でしょうけど」
此方の警戒を解く為か、少年は柔らかい物腰で返された。
「ちなみに、私も同じような理由でここにいるので、会場へ連れ戻すような事は致しませんので安心して下さい」
「それは、御心遣い痛み入ります」
「今更御嬢様なフリしなくても」
「フリって、不本意ながら一応これでも御嬢様なのは事実よ」
「ハハハ……これは失礼致しました」
そう言って彼は悪戯っぽい笑みを浮かべながら優雅な振る舞いで頭を下げた。
後々から考えれば、これ等の発言や振る舞いは私に気を使った冗談だったのだろう。
「ところで、一つお伺いしても宜しいでしょうか?」
「なんなりと。一つと言わずいくつでもどうぞ」
そう言うので少し危険かも知れないとは思ったけど、私はその少年に遠回しに聞いてみた。
「どうして日本語をご存じなんですか? 留学経験でもあるんですか?」
すると少年は苦笑いを顔に浮かべながら答えた。
「そんな警戒しなくても素性がバレたからと言って貴女に何かしたりしませんよ?」
「え~っと……」
「バレても口を封じたりしませんよ。家が勝手に隠してるだけで私自身は隠していませんから、ちなみにお気付きの通り私の生まれは日本です」
「やっぱりそうなのね」
「まあ、見た目が黒髪に黒目、典型的な日本人の特徴ですからねぇ」
「じゃあどうしてここに?」
「父は日本人ですが、母がブリタニアの貴族出身だったので、戦後母の実家に引き取られ、後に叔父の養子になったんです」
「ハーフなんだ、あなたも……」
「も? て事は……」
その後、少年との会話は意外と弾んだ。同じハーフだからと言うだけでなく、他の貴族達と違って家の自慢なんて彼はしなかったからかも知れない。
日本とブリタニアの文化や生活様式の違いでお互い驚いた事、ブリタニアの貴族達のお家自慢話にウンザリした経験、果ては、あの金髪の御曹司は顔を合わせる度に私に家の自慢話をしに来るとか、あの名家の三姉妹はダンスが下手で相手の足を踏んでいる等々、話題はつきなかった。
なんだか久々に作り笑いではなく本心から笑った気がした。
知らない内に長く話し込んでいたみたいで、彼のお付きの人がやって来て、
「御話が盛り上がっているところ大変申し訳ないのですが」
「もう時間か?」
「はい。旦那様が御挨拶なさるので……」
「私のお披露目の意味もあるから一緒に来いと言う事か?」
「はい」
付き人に心を許しているのか、彼はあからさまなため息をついた後に返事をした。
「わかった、すぐに行く。どうやら先に俺の迎えが来てしまったみたいだ。話の途中なのにすまない」
「ううん、気にしないで久々に楽しかった。ありがとう」
「俺も楽しかった。ありがとう。それじゃあ」
少し名残惜しかったが用事があるんじゃ仕方がない。お付きの人に先導されながら去って行く彼の背中を見送りながら肝心な事を聞いていない事に私は気付いた。
「ねぇ! ちょっと待って!」
「え? 何?」
「名前! まだ聞いてなかったから」
「あ、忘れてた……」
「普通はお互い最初に名乗るのにウヤムヤになっちゃったから……」
お互い顔を見合わせて名前も知らずに話していた事実に何やら可笑しくて少し笑えた。
「で! あなたの名前は?」
「信也だ。真田信也。これが俺の《本当の名前》だ、君は?」
「カレン! 紅月カレン」
「カレンか、いい名前だね。まあ、名前とキャラにギャップがあるけど」
「うるさい! 失礼ねぇ! 言われなくても自覚してるわよ!」
「ハハハ……失礼しました。じゃあな、カレン。俺行くんで」
「はいはい。また何処かで」
「じゃあまた」
それだけ言うと彼は今度こそ去って行った。
(……信也か)
また何処かでなんて言ったけど、公爵様だかなんだかが来るからって日本中からブリタニアの貴族が集まっているのだから実際はもう会う事もないだろうと思っていた。
ただ彼に名前を尋ねたら、貴族としての名前ではなく本当の名前を教えてくれた事がちょっと嬉しかった。考えてみたら彼も私も一度も自分の現在所属している家名を名乗らなかった。こんな場所で出会わなければ、もしかしたら普通に友達になれたかも……て、ちょっとだけ寂しい気持ちになった。
見られてしまい不味いと思い必死に言い訳を考えるが、都合のいい理由が思い付かない。
それに言い訳を述べる事よりも気になる事があって、
「こんな場所に日本語がわかる人がいるのは意外だった?」
そうなのである。ここに日本人が参加する事は極めて希有である。
此方の疑問を見透かした様に先に述べた黒髪の少年は「よっと!」とかけ声と共に飛び降りて私の近くに来た。
近くで見てわかったが、どうやら歳は同じぐらいのようだ。
何処の貴族かわからないので、警戒しながらシュタットフェルト家の令嬢として対応する。
「ええ、それはまあ……ブリタニアの貴族の集まりですし」
「そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ? まあ、初対面の人間を信用しろと言っても無理でしょうけど」
此方の警戒を解く為か、少年は柔らかい物腰で返された。
「ちなみに、私も同じような理由でここにいるので、会場へ連れ戻すような事は致しませんので安心して下さい」
「それは、御心遣い痛み入ります」
「今更御嬢様なフリしなくても」
「フリって、不本意ながら一応これでも御嬢様なのは事実よ」
「ハハハ……これは失礼致しました」
そう言って彼は悪戯っぽい笑みを浮かべながら優雅な振る舞いで頭を下げた。
後々から考えれば、これ等の発言や振る舞いは私に気を使った冗談だったのだろう。
「ところで、一つお伺いしても宜しいでしょうか?」
「なんなりと。一つと言わずいくつでもどうぞ」
そう言うので少し危険かも知れないとは思ったけど、私はその少年に遠回しに聞いてみた。
「どうして日本語をご存じなんですか? 留学経験でもあるんですか?」
すると少年は苦笑いを顔に浮かべながら答えた。
「そんな警戒しなくても素性がバレたからと言って貴女に何かしたりしませんよ?」
「え~っと……」
「バレても口を封じたりしませんよ。家が勝手に隠してるだけで私自身は隠していませんから、ちなみにお気付きの通り私の生まれは日本です」
「やっぱりそうなのね」
「まあ、見た目が黒髪に黒目、典型的な日本人の特徴ですからねぇ」
「じゃあどうしてここに?」
「父は日本人ですが、母がブリタニアの貴族出身だったので、戦後母の実家に引き取られ、後に叔父の養子になったんです」
「ハーフなんだ、あなたも……」
「も? て事は……」
その後、少年との会話は意外と弾んだ。同じハーフだからと言うだけでなく、他の貴族達と違って家の自慢なんて彼はしなかったからかも知れない。
日本とブリタニアの文化や生活様式の違いでお互い驚いた事、ブリタニアの貴族達のお家自慢話にウンザリした経験、果ては、あの金髪の御曹司は顔を合わせる度に私に家の自慢話をしに来るとか、あの名家の三姉妹はダンスが下手で相手の足を踏んでいる等々、話題はつきなかった。
なんだか久々に作り笑いではなく本心から笑った気がした。
知らない内に長く話し込んでいたみたいで、彼のお付きの人がやって来て、
「御話が盛り上がっているところ大変申し訳ないのですが」
「もう時間か?」
「はい。旦那様が御挨拶なさるので……」
「私のお披露目の意味もあるから一緒に来いと言う事か?」
「はい」
付き人に心を許しているのか、彼はあからさまなため息をついた後に返事をした。
「わかった、すぐに行く。どうやら先に俺の迎えが来てしまったみたいだ。話の途中なのにすまない」
「ううん、気にしないで久々に楽しかった。ありがとう」
「俺も楽しかった。ありがとう。それじゃあ」
少し名残惜しかったが用事があるんじゃ仕方がない。お付きの人に先導されながら去って行く彼の背中を見送りながら肝心な事を聞いていない事に私は気付いた。
「ねぇ! ちょっと待って!」
「え? 何?」
「名前! まだ聞いてなかったから」
「あ、忘れてた……」
「普通はお互い最初に名乗るのにウヤムヤになっちゃったから……」
お互い顔を見合わせて名前も知らずに話していた事実に何やら可笑しくて少し笑えた。
「で! あなたの名前は?」
「信也だ。真田信也。これが俺の《本当の名前》だ、君は?」
「カレン! 紅月カレン」
「カレンか、いい名前だね。まあ、名前とキャラにギャップがあるけど」
「うるさい! 失礼ねぇ! 言われなくても自覚してるわよ!」
「ハハハ……失礼しました。じゃあな、カレン。俺行くんで」
「はいはい。また何処かで」
「じゃあまた」
それだけ言うと彼は今度こそ去って行った。
(……信也か)
また何処かでなんて言ったけど、公爵様だかなんだかが来るからって日本中からブリタニアの貴族が集まっているのだから実際はもう会う事もないだろうと思っていた。
ただ彼に名前を尋ねたら、貴族としての名前ではなく本当の名前を教えてくれた事がちょっと嬉しかった。考えてみたら彼も私も一度も自分の現在所属している家名を名乗らなかった。こんな場所で出会わなければ、もしかしたら普通に友達になれたかも……て、ちょっとだけ寂しい気持ちになった。