scene02:総司令代行
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
威嚇射撃だろうが発砲もあって警戒しながら入り口を警戒していると、声で予想できたとおり、あらわれたのはC.C.だったのだが、
「ちょ、は? え?」
彼女は何故か一糸まとわぬ姿で銃を此方に向けていた。格好の謎と手荷物が物騒な物もさることながら、真剣な表情をしているのが凄くアンバランスである。何故そう言う事態になったのだろうか。
「C.C.どうしたのよ、その格好?」
「水に浮かぶのはこれが一番だ」
「は?」
「海の生態系を一巡りして来たような気分だったぞ。まったく、あのミカン男が早く沈まないからガウェインがおしゃかになってしまった」
何か意味のわからない事を言っているが、どうやら海に落ちたらしい事と浮かぶ為に衣類を脱ぎ捨てたらしい事は理解できた。
「ひょっとして……ガウェイン、海に落ちちゃったの?」
「それ以外の事を言っているように聞こえたか?」
ちょっとブスッとしたような不機嫌な感じでそう言われたが、それなら回りくどい言い回しではなくそう言って欲しい。
「それにしても」
「?」
「どうやらボーヤには刺激が強すぎたようだな」
「は? ッ?!」
C.C.が意味深な笑みを浮かべながら述べた発言の意味が最初はわからなかったが、彼女が視線を送る先をみて気付いた。
「どうした? 私の身体に見惚れていたのか?」
「信也!! アンタね」
「いや、こんなの不可抗力だろ。ッ?!」
女の自分でも目のやり場に困るので上着をC.C.に貸した。どうもC.C.本人は気にしていないようだがさすがに……
C.Cは自分の正面に腰を降ろした。頬に手形が着いた信也は、上着一枚のC.C.を視界に入れないよう少し離れた位置の壁に背を預けている。頬の手形については、その……つい手が出てしまい……申し訳ないとは思っている。
そんな妙な空気になったが信也が質問をする。
「まずは確認したい。C.C.、お前は俺達の敵か? 味方か?」
「私はゼロの共犯者だ。お前達がゼロの敵とならない限り敵となる事はない」
「なるほど。では、『ルルーシュを助ける為、俺達に力を貸すのは吝かではない』と言う認識で間違いないか?」
「ああ、その通りだ」
と言った後にC.C.は首を傾げながら此方を見ている。
「おい。いいのか?」
「カレンはゼロの正体とギアスについて知ったから、俺からルルーシュについて一通り説明した」
「そうか」
特に気にならないのかどうでもいいのか、少し驚きはしたようだがゼロの正体についてはそれだけで終わった。
「それでは現状の確認だが。ナナリーはさらわれてここに連れてこられた。それを知ったルルーシュが後を追ってここに来た。この認識で間違いないか?」
「ああ、そうだな」
「さらった犯人は誰だ?」
「これ以上は……」
「もう巻き込まれている。その犯人はブリタニア側あるいは日本の再独立が都合の悪い立場の人間で戦争を失敗させる為にナナリーをさらったんだろ?」
既に独立戦争を潰され巻き込まれたと言う信也の言葉にC.C.は黙り、しばらくの間を開けてから口を開いた。
「V.V.」
「「V.V.?」」
「そうだ」
信也は右手を顎に当ててしばし考える風だったが話しを続けた。
「スザクにギアスを教えたのはそのV.V.で間違いないか?」
「おそらくそうだろうな。他に候補がいない」
「やはりギアス関係者か」
信也が苛立った様子で自身の髪をグシャッと握っている。
「式根島の時にちゃんと調べて対応をしておくべきだったな」
「式根島?」
「ああ、おそらくカレン達四人を神根島に飛ばしたのもそいつの仕業だろうからな」
「え?! そうなの?」
「よくわかったな」
どうやら自分も人事ではなかったらしい。だが驚く自分を放置して、感心したのか表情が僅かに動いたC.C.と大した事ないと言った感じの信也は会話を続ける。
「さっきまで確証はなかったが、この島を調べてナナリーをさらったのが明らかに『普通の誘拐』ではなかった。考えたら他に思い当たる事例もなかったからね」
「なるほど」
どうも、信也は状況を理解して確認しているようだが原因や何故こうなったかは全くわからないようだ。
「そのV.V.とやらはスザクにもギアスを与えたのか?」
「それはないようだ」
「そうか」
与えるとはどう言う意味だろうと聞きたかったが、信也に目で止められたのでやめた。どうやら今は話しを進めたいらしい。
「で、そいつはブリタニア側の人間でありながら何故ゼロの正体を知っていたんだ?」
「……」
「知っていたならもっと以前にルルーシュを討てたはずだが?」
「……」
C.C.は髪をいじるだけで答えなかった。どうやら黙秘という事だろう。
「V.V.の能力は?」
「……」
これも黙秘のようだ。信也は冷たい視線を送っただけで特に咎めなかったので私も口を挟まなかった。
「そのV.V.って奴は今ここに、あるいは追いつける範囲にいるのか?」
「今はいない」
「では、ナナリーを救出する事はできないのか?」
「現状ではナナリーの居場所がわからないから不可能だ」
「? ナナリーがさらわれた時はわかったのにか?」
「……」
また、黙秘。先程から殆ど口を挟まずに二人のやり取りをみていて気付いたが、どうも二人は何処かよそよそしい。外から見ていた時はゼロを含めた三人で親しそうに見えていたが、どうやらこの二人に仲間意識は思っていた程ないようだ。
「V.V.の居場所はわかるのにナナリーの居場所はわからないのか?」
「繋がりのない者まではわからない」
「その繋がりとはギアスか?」
「それは正しくない。が、その認識で問題ない」
「つまりC.C.だけでなく、V.V.も万能ではないと言う事だな」
「当然だ。私もV.V.も神ではないからな」
「ふむ……」
信也が何を考えているのかわからない。また、話しの内容で意味がわからない部分もあったが、ルルーシュのギアスだけでなく特殊な能力が他にもあるらしい事だけは理解できた。
「で、こっちの質問にも答えてもらうぞ」
「まあ、当然だな」
「え? C.C.はいくつかの質問に答えてないけど、いいの?」
「いいんだよ。聞くだけムダだから。この人、共犯者のルルーシュが聞いても答えないから」
そう言われては口を挟めない。
「相変わらず察しがよくて助かる。質問してもいいか?」
「ああ、どうぞ」
「では聞くが、ルルーシュはどうした?」
「ここでスザクに捕まって連れて行かれた。その後はどうなったかわからない」
信也の答えにC.C.は首を傾げている。
「では何故お前達はここにいるのだ? アイツを助けに来たのではなかったのか?」
「いや、俺がここに来たのは何があったのかの確認。あとナナリーがいたら保護しようと思ってね」
「なるほど」
「ブリタニア軍の公式発表では『ゼロは処刑した』とのことだが、カレンの話しと此処の様子をみるに本当に処刑したのかどうかはちょっと疑問だがな」
「ちょっと待って! その話しは私も聞いてないんだけど」
「あ~、そう言えばまだだった。東京で起こった事を時系列で並べると、東京租界の戦線ではゼロがいなくなった事を察した俺の意見で撤退を開始。途中まではなんとか秩序だって退却をしていたんだが、ブリタニアがスザクに『ゼロを処刑したから降伏しろ』とメディアを通じて勧告してきた。で、そこから戦線は一気に崩壊して完全に敗北。俺、神楽耶、ラクシャータ、卜部さん、ディートハルトは無事に戦線を離脱できたが、主戦場で孤立した扇さんや藤堂将軍達はどうなったかわからない」
「ええ?! 置いてきたの?」
「ああ。スザクのランスロットに主力部隊と分断されてしまって、どうにもならなくなった」
「そんな……」
「最後は『神楽耶様を連れて退却しろ』って向こうから言って一方的に通信を切られた」
淡々と述べているが信也の顔を見ると表情を歪めており不本意な退却だったことは察した。
「で、退却した後に俺はここに様子を見に来た。だから、現状ではルルーシュの居場所はおろか、生死すらわからない」
「アイツなら生きているぞ」
「……なんでわかるの?」
「私にはわかる」
信也が凄く微妙な表情をしているが、おそらく私も似たような表情をしている事だろう。
「それは契約者だからか?」
「そうだ」
「なるほど」
「いや、それで納得するの?」
思わずつっこむが信也は諦めたような表情をしている。
「だって、ギアスについては俺もわかんないし、聞いても教えてくれないだろ」
「ああ、そうだな」
「だってさ」
「だからって!!」
「まあ、式根島から神根島に飛ばされた時もわかると言って事実だったから、とりあえず信じるしかないだろう。それにアイツが生きていて助けるなら、最終的に自分達でも確認するからいいだろ」
「それは……そうだけど」
とりあえず信じるが、後は自分達で確認というのは正しいので、C.C.の言動に納得はいかないが口をつぐんだ。
「で、ルルーシュが生きてるとして、今後処刑される可能性はないのか?」
「今のところはないようだ」
「そうは言っても、あのブリタニア皇帝だ。息子でも容赦ないだろ」
「どうかな」
「え?」
「いや、何でもない。まあ、ないとは言い切れないだろうな」
「その場合、C.Cはどうするんだ?」
「どう、とは? どう言う意味だ?」
信也の言葉にC.C.は首を傾げている。
「ルルーシュがいなくなる、あるいは助けないと決めた場合、C.C.にとって俺達や黒の騎士団は用済みだろ?」
「その通りだな」
「やはりな」
ここでカレンは信也が最初にC.C.に『敵か、味方か』を確認した真意をやっと理解できた。それを前提に考えると、それぞれの質問も理解できる。
『この状態でも秘密主義を貫き通すのか?』『秘密主義を黙認したとして信頼できるのか? と言うか裏切らないのか?』『ギアスの手がかりとして味方にしておきたいがそもそも協力する意思があるのか?』『ルルーシュさえいれば後は用済みだろ?』と、まあ、要するに信也は秘密主義のC.C.を信用していないのだ。少なくとも組織(キョウトあるいは黒の騎士団)として信用する事はできないと考えているようだ。
「ルルーシュとの契約の内容は何なんだ?」
「……」
またしても黙秘。ゼロが正体を隠しているのが可愛く見えるほどの秘密主義である。
「では問いを変えよう。その契約はルルーシュでないと果たせないのか?」
「そうだ」
「まあ、当然か、でなければルルーシュに固執しないな」
信也はちょっとだけ考えた後に質問の方向性を変えた。
「では、他の人間と新しく契約交わし、そいつに契約を果たさせることは可能か? 例えば俺やカレンとか」
「え? ちょっと待って」
唐突に自分の名前が出て来た事に驚き、思わず会話を止める。
「ギアスもそうだが、今回の事の手がかりも他にあてがないんだから。いて貰わないと困るだろ」
「そ、それはそうだけど……」
理屈はわかるし、必要性もわかる。だが此方としては信也と違ってさっき知ったばかり、未知の物に巻き込まれる事へ抵抗があるのは当然ではないか。その辺が表情に出ていたのか信也が慌てだした。
「あっ、言っておくけど、あくまで物の例えだから。俺がカレンによくわからない契約を結ばせたりしないし、むしろ止めるから」
「あ、そう」「だろうな」
謎の納得でC.C.と意見が一致した。
「まあ、コイツにそう言う事をできるタイプの人間なら、とっくの昔にゼロであるルルーシュは首輪を着けられていただろうな」
「そうよね。てか、やっぱりそう言うタイミングあったんだ」
「ゼロの正体とアイツのギアスを知って学園に出入りしていたんだぞ。その気になればいつでも可能だったはずだ」
「それもそうね」
「俺があまい事は自覚している。話しを戻していいか」
「どうぞ」「好きにしろ」
「で、だ。ルルーシュ以外と契約を結んでC.C.の望みを叶える事は可能なんじゃないか? マオとも契約していたんだろ?」
「マオ?」
「11年前にC.C.が契約を結んでいた、ルルーシュの前任者。ナナリーを誘拐したアイツ」
「ああ、あの犯人もギアス能力者だったんだ」
「そういうこと。で、どうなんだ」
信也の質問に対して、C.C.は黙秘や無視ではなく指で髪を遊びながら少し考えている雰囲気だった。
「以前、『ギアス能力者って奴は、普通にその辺にゴロゴロいるのか?』と尋ねたら『ギアスを使う人間はそう簡単にはいない。あらわれたギアス能力者はマオと言う、かつて私と契約した者だ』と答えていただろ?」
「……」
「思うに、『何らかの素質がある人間』であればC.C.と契約を結んでギアスを手に入れることが可能なんじゃないのか? まあ、人数制限が存在する。あるいはC.C.の気分次第という可能性はあるがな」
「……まったく」
「?」
「察しがいいのもここまで行くとやりづらいな」
そう言うとC.C.はため息をついた。
「結論から言えば、おおよそだが正解だ。」
「やはりそうか……」
「察しの通り。素質がある者であれば私と契約してギアスを手に入れることは可能だ。それで?」
「ん?」
「確認したと言う事は何か考えがあるんだろ?」
「ああ、そうだな。まず前提として、ルルーシュとナナリーを助けると言うのは当然協力する。とは言え、俺の大切な人を犠牲にしてまでは助けることはできない」
「お前の戦う理由なのだから当然だな」
C.C.に視線を向けられた。いつもの微笑ではないちょっと好意的な笑み……の様な気がした。
「なので、条件をもう一つ加える」
「条件を加える?」
「ああ、ルルーシュ達を救出する事への協力に加えて、失敗したあるいは実現が不可能になった場合は、代わりの契約者を用意する、あるいは探す事に協力する」
「……なるほど。だから、私に力を貸せ、と」
「そういうこと。ルルーシュ以外のことに非協力的になられても困るし、ルルーシュに何かあった時に手のひらを返されても困る。それにいなくなられてもギアスの手がかりがなくなって困る」
「確かに、私にとっても悪くはない条件だな」
「ルルーシュが戻るまでの仮契約、とでも思って貰えばいい。アイツが戻る方が俺にとってもいいからな」
なるほど、秘密主義は容認するが自分達に協力はしろと言うのが信也からの提案で、C.C.の反応も悪くない様だ。
「で、探すと言うのは何か心当たりがあるのか?」
「指定してくれたらそいつを迎えに行くし、そちらが条件を提示してくれれば人を出して探す」
「それでは私が教えねばならんではないか」
「まあ、ルルーシュを取り戻せず、キョウトや黒の騎士団に適応者がいなかった場合はそうなるな」
「確かにその場合はやむを得んか」
「悪くないとは思うが?」
「わかった、受けよう。ただ、一つだけ付け加える事がある」
「なんだ?」
「新たな契約者となる素質のある人間は探す必要がない」
「何故だ?」
C.C.はちょっと悩んだ風だったが「説明するより早いか」と呟くと立ち上がって信也の方へ歩み寄った。
「どうしっ?!」
C.C.が腕を握った瞬間、信也の言葉は途切れ、何かに驚いた様に目を見開いて少し震えている。
(!?)
C.C.に腕を握られた瞬間、信也が見ている景色が一変して青い激流の中に放り込まれた。
(なんだ、これは? 以前みたものと同じ? いや、少し違うような……)
謎の青い激流とともにいくつかの情報が脳へ流れ込んで来たが、以前、神根島近くでC.C.と接触した際に見た時と少し異なっているように感じた。
『これは契約、力をあげるかわりに私の願いをひとつだけかなえてもらう』
『契約すればお前は人の世にいきながら人とは違う理で生きる事になる』
『異なる摂理』
『異なる時間』
『異なる命』
『王の力はお前を孤独にするその覚悟があるのなら……』
「これがーー」
そこで青い激流を通り抜けたのか、映像が途切れてもとの少し薄暗い遺跡の風景に戻っていた。
信也が眼を見開いたまま固まっているだけでなく不穏なものを感じ、カレンはC.C.の手を振りほどいて引き離し、信也を守るように身構える。
「強引な女だな」
「…………」
「危害を加えたりはしない」
「本当かしら? 信也を操って思い通りにする可能性だってあるでしょ」
「そう疑うな。口で説明するより早いから省いただけだ」
「は? 一体どう言う意味?」
此方の疑問を無視し、C.C.は信也に問いかける。
「で、お前は理解したか」
「ああ、なるほどな。そう言う事か」
「?」
「よくわからないが理解した」
「え? 本当に大丈夫?」
信也の言ってる事が矛盾しているので不安になるが、今の彼は特に動揺していない。
「ああ、で、わかった事だけをカレンに共有する」
「え、うん」
「素質があるのは……俺だ」
「えっ? えええええ!?」
そんな事が本当にあるだろうか、と余計に不安になった。
「いやいや、そんな都合の良いことってある? そう思わせられてるだけじゃないの?」
「そう疑うな、ただの偶然だ」
「そんな言葉で信じろって言うの?」
「まあまあ、落ち着けカレン」
「でも」
「大丈夫だ。まず、俺は何もされてないから安心しろ」
「それは……本当?」
「説明を省かれただけだ」
さっきのあれは本当に大丈夫なのだろうか? と言うか彼の大丈夫はあてにならないので逆に心配になる。
「それに『俺に素質がある』なんて嘘をつく必要はないだろう。むしろ、側に置いて起きたいのは俺の方だ。彼女がそんな嘘をつく必要はない」
「それはそうだけど……」
そう言われてしまっては反論のしようもない。何か釈然としないが、とりあえず納得するしかないようだ。
「側に置いておきたいなんて、ほれられたか? お前も気の多い男だな」
「今、その冗談は笑えない」
「なんだ違ったか」
「カレンで遊ぼうとするな」
「なんだ、バレたか、つまらん」
ため息する信也と緊張感のないC.C.を見比べながら行く末に不安を感じた。
「ともかく、ルルーシュの救出に協力、それが失敗あるいは不可能な場合は俺が改めて契約してC.C.の願いを叶える。と言う仮契約を結んで貰いたい」
そう言うと信也は手を差し出した。
「確かに悪くはない条件だな。いいだろう、結ぼうその契約」
C.C.もその手を取った。これで二人は協力関係となった。少し思うところや気になるところはあるが、今までとは違って秘密を開示してくれているので、とりあえずは不満や疑念を口にはしなかった。
「ちょ、は? え?」
彼女は何故か一糸まとわぬ姿で銃を此方に向けていた。格好の謎と手荷物が物騒な物もさることながら、真剣な表情をしているのが凄くアンバランスである。何故そう言う事態になったのだろうか。
「C.C.どうしたのよ、その格好?」
「水に浮かぶのはこれが一番だ」
「は?」
「海の生態系を一巡りして来たような気分だったぞ。まったく、あのミカン男が早く沈まないからガウェインがおしゃかになってしまった」
何か意味のわからない事を言っているが、どうやら海に落ちたらしい事と浮かぶ為に衣類を脱ぎ捨てたらしい事は理解できた。
「ひょっとして……ガウェイン、海に落ちちゃったの?」
「それ以外の事を言っているように聞こえたか?」
ちょっとブスッとしたような不機嫌な感じでそう言われたが、それなら回りくどい言い回しではなくそう言って欲しい。
「それにしても」
「?」
「どうやらボーヤには刺激が強すぎたようだな」
「は? ッ?!」
C.C.が意味深な笑みを浮かべながら述べた発言の意味が最初はわからなかったが、彼女が視線を送る先をみて気付いた。
「どうした? 私の身体に見惚れていたのか?」
「信也!! アンタね」
「いや、こんなの不可抗力だろ。ッ?!」
女の自分でも目のやり場に困るので上着をC.C.に貸した。どうもC.C.本人は気にしていないようだがさすがに……
C.Cは自分の正面に腰を降ろした。頬に手形が着いた信也は、上着一枚のC.C.を視界に入れないよう少し離れた位置の壁に背を預けている。頬の手形については、その……つい手が出てしまい……申し訳ないとは思っている。
そんな妙な空気になったが信也が質問をする。
「まずは確認したい。C.C.、お前は俺達の敵か? 味方か?」
「私はゼロの共犯者だ。お前達がゼロの敵とならない限り敵となる事はない」
「なるほど。では、『ルルーシュを助ける為、俺達に力を貸すのは吝かではない』と言う認識で間違いないか?」
「ああ、その通りだ」
と言った後にC.C.は首を傾げながら此方を見ている。
「おい。いいのか?」
「カレンはゼロの正体とギアスについて知ったから、俺からルルーシュについて一通り説明した」
「そうか」
特に気にならないのかどうでもいいのか、少し驚きはしたようだがゼロの正体についてはそれだけで終わった。
「それでは現状の確認だが。ナナリーはさらわれてここに連れてこられた。それを知ったルルーシュが後を追ってここに来た。この認識で間違いないか?」
「ああ、そうだな」
「さらった犯人は誰だ?」
「これ以上は……」
「もう巻き込まれている。その犯人はブリタニア側あるいは日本の再独立が都合の悪い立場の人間で戦争を失敗させる為にナナリーをさらったんだろ?」
既に独立戦争を潰され巻き込まれたと言う信也の言葉にC.C.は黙り、しばらくの間を開けてから口を開いた。
「V.V.」
「「V.V.?」」
「そうだ」
信也は右手を顎に当ててしばし考える風だったが話しを続けた。
「スザクにギアスを教えたのはそのV.V.で間違いないか?」
「おそらくそうだろうな。他に候補がいない」
「やはりギアス関係者か」
信也が苛立った様子で自身の髪をグシャッと握っている。
「式根島の時にちゃんと調べて対応をしておくべきだったな」
「式根島?」
「ああ、おそらくカレン達四人を神根島に飛ばしたのもそいつの仕業だろうからな」
「え?! そうなの?」
「よくわかったな」
どうやら自分も人事ではなかったらしい。だが驚く自分を放置して、感心したのか表情が僅かに動いたC.C.と大した事ないと言った感じの信也は会話を続ける。
「さっきまで確証はなかったが、この島を調べてナナリーをさらったのが明らかに『普通の誘拐』ではなかった。考えたら他に思い当たる事例もなかったからね」
「なるほど」
どうも、信也は状況を理解して確認しているようだが原因や何故こうなったかは全くわからないようだ。
「そのV.V.とやらはスザクにもギアスを与えたのか?」
「それはないようだ」
「そうか」
与えるとはどう言う意味だろうと聞きたかったが、信也に目で止められたのでやめた。どうやら今は話しを進めたいらしい。
「で、そいつはブリタニア側の人間でありながら何故ゼロの正体を知っていたんだ?」
「……」
「知っていたならもっと以前にルルーシュを討てたはずだが?」
「……」
C.C.は髪をいじるだけで答えなかった。どうやら黙秘という事だろう。
「V.V.の能力は?」
「……」
これも黙秘のようだ。信也は冷たい視線を送っただけで特に咎めなかったので私も口を挟まなかった。
「そのV.V.って奴は今ここに、あるいは追いつける範囲にいるのか?」
「今はいない」
「では、ナナリーを救出する事はできないのか?」
「現状ではナナリーの居場所がわからないから不可能だ」
「? ナナリーがさらわれた時はわかったのにか?」
「……」
また、黙秘。先程から殆ど口を挟まずに二人のやり取りをみていて気付いたが、どうも二人は何処かよそよそしい。外から見ていた時はゼロを含めた三人で親しそうに見えていたが、どうやらこの二人に仲間意識は思っていた程ないようだ。
「V.V.の居場所はわかるのにナナリーの居場所はわからないのか?」
「繋がりのない者まではわからない」
「その繋がりとはギアスか?」
「それは正しくない。が、その認識で問題ない」
「つまりC.C.だけでなく、V.V.も万能ではないと言う事だな」
「当然だ。私もV.V.も神ではないからな」
「ふむ……」
信也が何を考えているのかわからない。また、話しの内容で意味がわからない部分もあったが、ルルーシュのギアスだけでなく特殊な能力が他にもあるらしい事だけは理解できた。
「で、こっちの質問にも答えてもらうぞ」
「まあ、当然だな」
「え? C.C.はいくつかの質問に答えてないけど、いいの?」
「いいんだよ。聞くだけムダだから。この人、共犯者のルルーシュが聞いても答えないから」
そう言われては口を挟めない。
「相変わらず察しがよくて助かる。質問してもいいか?」
「ああ、どうぞ」
「では聞くが、ルルーシュはどうした?」
「ここでスザクに捕まって連れて行かれた。その後はどうなったかわからない」
信也の答えにC.C.は首を傾げている。
「では何故お前達はここにいるのだ? アイツを助けに来たのではなかったのか?」
「いや、俺がここに来たのは何があったのかの確認。あとナナリーがいたら保護しようと思ってね」
「なるほど」
「ブリタニア軍の公式発表では『ゼロは処刑した』とのことだが、カレンの話しと此処の様子をみるに本当に処刑したのかどうかはちょっと疑問だがな」
「ちょっと待って! その話しは私も聞いてないんだけど」
「あ~、そう言えばまだだった。東京で起こった事を時系列で並べると、東京租界の戦線ではゼロがいなくなった事を察した俺の意見で撤退を開始。途中まではなんとか秩序だって退却をしていたんだが、ブリタニアがスザクに『ゼロを処刑したから降伏しろ』とメディアを通じて勧告してきた。で、そこから戦線は一気に崩壊して完全に敗北。俺、神楽耶、ラクシャータ、卜部さん、ディートハルトは無事に戦線を離脱できたが、主戦場で孤立した扇さんや藤堂将軍達はどうなったかわからない」
「ええ?! 置いてきたの?」
「ああ。スザクのランスロットに主力部隊と分断されてしまって、どうにもならなくなった」
「そんな……」
「最後は『神楽耶様を連れて退却しろ』って向こうから言って一方的に通信を切られた」
淡々と述べているが信也の顔を見ると表情を歪めており不本意な退却だったことは察した。
「で、退却した後に俺はここに様子を見に来た。だから、現状ではルルーシュの居場所はおろか、生死すらわからない」
「アイツなら生きているぞ」
「……なんでわかるの?」
「私にはわかる」
信也が凄く微妙な表情をしているが、おそらく私も似たような表情をしている事だろう。
「それは契約者だからか?」
「そうだ」
「なるほど」
「いや、それで納得するの?」
思わずつっこむが信也は諦めたような表情をしている。
「だって、ギアスについては俺もわかんないし、聞いても教えてくれないだろ」
「ああ、そうだな」
「だってさ」
「だからって!!」
「まあ、式根島から神根島に飛ばされた時もわかると言って事実だったから、とりあえず信じるしかないだろう。それにアイツが生きていて助けるなら、最終的に自分達でも確認するからいいだろ」
「それは……そうだけど」
とりあえず信じるが、後は自分達で確認というのは正しいので、C.C.の言動に納得はいかないが口をつぐんだ。
「で、ルルーシュが生きてるとして、今後処刑される可能性はないのか?」
「今のところはないようだ」
「そうは言っても、あのブリタニア皇帝だ。息子でも容赦ないだろ」
「どうかな」
「え?」
「いや、何でもない。まあ、ないとは言い切れないだろうな」
「その場合、C.Cはどうするんだ?」
「どう、とは? どう言う意味だ?」
信也の言葉にC.C.は首を傾げている。
「ルルーシュがいなくなる、あるいは助けないと決めた場合、C.C.にとって俺達や黒の騎士団は用済みだろ?」
「その通りだな」
「やはりな」
ここでカレンは信也が最初にC.C.に『敵か、味方か』を確認した真意をやっと理解できた。それを前提に考えると、それぞれの質問も理解できる。
『この状態でも秘密主義を貫き通すのか?』『秘密主義を黙認したとして信頼できるのか? と言うか裏切らないのか?』『ギアスの手がかりとして味方にしておきたいがそもそも協力する意思があるのか?』『ルルーシュさえいれば後は用済みだろ?』と、まあ、要するに信也は秘密主義のC.C.を信用していないのだ。少なくとも組織(キョウトあるいは黒の騎士団)として信用する事はできないと考えているようだ。
「ルルーシュとの契約の内容は何なんだ?」
「……」
またしても黙秘。ゼロが正体を隠しているのが可愛く見えるほどの秘密主義である。
「では問いを変えよう。その契約はルルーシュでないと果たせないのか?」
「そうだ」
「まあ、当然か、でなければルルーシュに固執しないな」
信也はちょっとだけ考えた後に質問の方向性を変えた。
「では、他の人間と新しく契約交わし、そいつに契約を果たさせることは可能か? 例えば俺やカレンとか」
「え? ちょっと待って」
唐突に自分の名前が出て来た事に驚き、思わず会話を止める。
「ギアスもそうだが、今回の事の手がかりも他にあてがないんだから。いて貰わないと困るだろ」
「そ、それはそうだけど……」
理屈はわかるし、必要性もわかる。だが此方としては信也と違ってさっき知ったばかり、未知の物に巻き込まれる事へ抵抗があるのは当然ではないか。その辺が表情に出ていたのか信也が慌てだした。
「あっ、言っておくけど、あくまで物の例えだから。俺がカレンによくわからない契約を結ばせたりしないし、むしろ止めるから」
「あ、そう」「だろうな」
謎の納得でC.C.と意見が一致した。
「まあ、コイツにそう言う事をできるタイプの人間なら、とっくの昔にゼロであるルルーシュは首輪を着けられていただろうな」
「そうよね。てか、やっぱりそう言うタイミングあったんだ」
「ゼロの正体とアイツのギアスを知って学園に出入りしていたんだぞ。その気になればいつでも可能だったはずだ」
「それもそうね」
「俺があまい事は自覚している。話しを戻していいか」
「どうぞ」「好きにしろ」
「で、だ。ルルーシュ以外と契約を結んでC.C.の望みを叶える事は可能なんじゃないか? マオとも契約していたんだろ?」
「マオ?」
「11年前にC.C.が契約を結んでいた、ルルーシュの前任者。ナナリーを誘拐したアイツ」
「ああ、あの犯人もギアス能力者だったんだ」
「そういうこと。で、どうなんだ」
信也の質問に対して、C.C.は黙秘や無視ではなく指で髪を遊びながら少し考えている雰囲気だった。
「以前、『ギアス能力者って奴は、普通にその辺にゴロゴロいるのか?』と尋ねたら『ギアスを使う人間はそう簡単にはいない。あらわれたギアス能力者はマオと言う、かつて私と契約した者だ』と答えていただろ?」
「……」
「思うに、『何らかの素質がある人間』であればC.C.と契約を結んでギアスを手に入れることが可能なんじゃないのか? まあ、人数制限が存在する。あるいはC.C.の気分次第という可能性はあるがな」
「……まったく」
「?」
「察しがいいのもここまで行くとやりづらいな」
そう言うとC.C.はため息をついた。
「結論から言えば、おおよそだが正解だ。」
「やはりそうか……」
「察しの通り。素質がある者であれば私と契約してギアスを手に入れることは可能だ。それで?」
「ん?」
「確認したと言う事は何か考えがあるんだろ?」
「ああ、そうだな。まず前提として、ルルーシュとナナリーを助けると言うのは当然協力する。とは言え、俺の大切な人を犠牲にしてまでは助けることはできない」
「お前の戦う理由なのだから当然だな」
C.C.に視線を向けられた。いつもの微笑ではないちょっと好意的な笑み……の様な気がした。
「なので、条件をもう一つ加える」
「条件を加える?」
「ああ、ルルーシュ達を救出する事への協力に加えて、失敗したあるいは実現が不可能になった場合は、代わりの契約者を用意する、あるいは探す事に協力する」
「……なるほど。だから、私に力を貸せ、と」
「そういうこと。ルルーシュ以外のことに非協力的になられても困るし、ルルーシュに何かあった時に手のひらを返されても困る。それにいなくなられてもギアスの手がかりがなくなって困る」
「確かに、私にとっても悪くはない条件だな」
「ルルーシュが戻るまでの仮契約、とでも思って貰えばいい。アイツが戻る方が俺にとってもいいからな」
なるほど、秘密主義は容認するが自分達に協力はしろと言うのが信也からの提案で、C.C.の反応も悪くない様だ。
「で、探すと言うのは何か心当たりがあるのか?」
「指定してくれたらそいつを迎えに行くし、そちらが条件を提示してくれれば人を出して探す」
「それでは私が教えねばならんではないか」
「まあ、ルルーシュを取り戻せず、キョウトや黒の騎士団に適応者がいなかった場合はそうなるな」
「確かにその場合はやむを得んか」
「悪くないとは思うが?」
「わかった、受けよう。ただ、一つだけ付け加える事がある」
「なんだ?」
「新たな契約者となる素質のある人間は探す必要がない」
「何故だ?」
C.C.はちょっと悩んだ風だったが「説明するより早いか」と呟くと立ち上がって信也の方へ歩み寄った。
「どうしっ?!」
C.C.が腕を握った瞬間、信也の言葉は途切れ、何かに驚いた様に目を見開いて少し震えている。
(!?)
C.C.に腕を握られた瞬間、信也が見ている景色が一変して青い激流の中に放り込まれた。
(なんだ、これは? 以前みたものと同じ? いや、少し違うような……)
謎の青い激流とともにいくつかの情報が脳へ流れ込んで来たが、以前、神根島近くでC.C.と接触した際に見た時と少し異なっているように感じた。
『これは契約、力をあげるかわりに私の願いをひとつだけかなえてもらう』
『契約すればお前は人の世にいきながら人とは違う理で生きる事になる』
『異なる摂理』
『異なる時間』
『異なる命』
『王の力はお前を孤独にするその覚悟があるのなら……』
「これがーー」
そこで青い激流を通り抜けたのか、映像が途切れてもとの少し薄暗い遺跡の風景に戻っていた。
信也が眼を見開いたまま固まっているだけでなく不穏なものを感じ、カレンはC.C.の手を振りほどいて引き離し、信也を守るように身構える。
「強引な女だな」
「…………」
「危害を加えたりはしない」
「本当かしら? 信也を操って思い通りにする可能性だってあるでしょ」
「そう疑うな。口で説明するより早いから省いただけだ」
「は? 一体どう言う意味?」
此方の疑問を無視し、C.C.は信也に問いかける。
「で、お前は理解したか」
「ああ、なるほどな。そう言う事か」
「?」
「よくわからないが理解した」
「え? 本当に大丈夫?」
信也の言ってる事が矛盾しているので不安になるが、今の彼は特に動揺していない。
「ああ、で、わかった事だけをカレンに共有する」
「え、うん」
「素質があるのは……俺だ」
「えっ? えええええ!?」
そんな事が本当にあるだろうか、と余計に不安になった。
「いやいや、そんな都合の良いことってある? そう思わせられてるだけじゃないの?」
「そう疑うな、ただの偶然だ」
「そんな言葉で信じろって言うの?」
「まあまあ、落ち着けカレン」
「でも」
「大丈夫だ。まず、俺は何もされてないから安心しろ」
「それは……本当?」
「説明を省かれただけだ」
さっきのあれは本当に大丈夫なのだろうか? と言うか彼の大丈夫はあてにならないので逆に心配になる。
「それに『俺に素質がある』なんて嘘をつく必要はないだろう。むしろ、側に置いて起きたいのは俺の方だ。彼女がそんな嘘をつく必要はない」
「それはそうだけど……」
そう言われてしまっては反論のしようもない。何か釈然としないが、とりあえず納得するしかないようだ。
「側に置いておきたいなんて、ほれられたか? お前も気の多い男だな」
「今、その冗談は笑えない」
「なんだ違ったか」
「カレンで遊ぼうとするな」
「なんだ、バレたか、つまらん」
ため息する信也と緊張感のないC.C.を見比べながら行く末に不安を感じた。
「ともかく、ルルーシュの救出に協力、それが失敗あるいは不可能な場合は俺が改めて契約してC.C.の願いを叶える。と言う仮契約を結んで貰いたい」
そう言うと信也は手を差し出した。
「確かに悪くはない条件だな。いいだろう、結ぼうその契約」
C.C.もその手を取った。これで二人は協力関係となった。少し思うところや気になるところはあるが、今までとは違って秘密を開示してくれているので、とりあえずは不満や疑念を口にはしなかった。