「それで『幼稚園バスを護送車と勘違いして襲おうとした揚げ句、尻が挟まり慌てて逃げて帰って来た』と言うわけか？」
「そうだ」
　反省の色が全く見られないC.C.は気になるのか自分の尻を撫でながら他人事の様に告げたので、信也の瞳が妖しい色を放ち、カレンが脅えて縮み上がる。
「ご、ごめんなさい。私……」
「誰にでも失敗はあるから仕方ないさ」
「でも……」
「そんな事より、カレンはケガしてないのか？」
「え？　う、うん、大丈夫」
　信也はカレンの頭を優しく撫でながら詫びる。
「謝らなければいけないのは俺の方だ。カレンには苦労ばかりかけて、本当にすまない」
「おい私に労いのk――」
「気にしないで。今は大変な時だけど、信也にはケガを治す事に専念してほしい。……なのに、私が不甲斐ないから逆に迷惑をかけて……」
「誰にだって向き不向きはあるから仕方ないさ」
「それでもゴメン。こんなケガしてるのに……」
　カレンは信也の左腕の傷に優しく手を当てながら申し訳なさげに俯く。
「お前達、私の存在を―――」
「カレン、お前……」
「なに？　どうか……きゃあ！？」
　急に信也に抱きしめられてカレンは頬を赤らめるが、信也の表情は申し訳なさげだ。
「少しやつれたか？」
「え？　うん、ブリタニアに追われるハードな毎日だからね」
「本当に苦労ばかりかけてすまない。早く復帰してカレンが……いや、カレンを始めとした団員達が衣食住に困らない生活を送れるようにしないと」
「でもそんなに簡単に……」
「大丈夫だ。俺だってただ寝てただけじゃない。時間はかかると思うが手は打ってあるし、一応動き出している。それに俺は総司令代行だからね、それぐらいできないとな」
「でもお願いだからムチャはしないで！　あなたにもしもの事があったら……私は……」
「……カレン」
　カレンは不安なのか、信也の背に回した手がギュッと服を握っている。
「あのね、信也」
「ん？　なに？」
「私、その………落ち着いたら……あなたに伝えたい事があるの」
「…………」
　カレンが不安げに揺れる瞳で見つめるので、信也にしては非常に珍しく自分の事なのにカレンが言いたい事がわかったようだ。
「じゃあその話を聞く為にもなるべく早く落ち着けるようにしないとなぁ。それに、何よりもムチャして死んだりしないように気をつけないとな」
「うん！」
　信也の言葉に、不安げに揺れていたカレンの瞳には嬉しさが浮かび、頬を赤らめながら少し泣きそうな笑みを浮かべた。



「…………私の存在を忘れてないか？　いや、わざとだろ、お前達」