scene01:血の味
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信也は退却する黒の騎士団のアジト内に用意したモニターで戦況を確認する。
まずG-1ベースの自爆だが、あれだけでは追撃を振り切る事はできなかったようだ。まあ、冷静に考えれば退却する此方の煙幕兼攻撃である事にはすぐに気付くので仕方が無い。
次にランスロットの動きを確認する。どうやら租界内の主力部隊へ向かったらしく此方には来なかった。フロートとランドスピナーを破壊しているので、此方には来ないと予測していたがどうやら推論は当たったらしい。敵がどう判断したかは推測するしかないが、藤堂達が奮戦して敵を引き付けてくれているお陰かも知れない。
それにしてもキョウトは……いや、日本は枢木スザクと言う男とつくづく相性が悪いらしい。
「私の責任ですね…」
「え?」
「私が情にとらわれず、裏切り者を早期に始末していればこんな事には……」
確かに神楽耶の言う通りキョウトを(ある意味で)裏切ったスザクを始末しなかった結果、今こうして追い詰められているのだ。
もっと以前から考えれば、スザクを始末していればユーフェミアに騎士に任じられる事もなかったし、行政特区の話も無く虐殺も不完全な形での挙兵もなかっただろう。
「確かにスザクの件は失敗でしたが、それは私やうちのじいちゃんも同罪です」
「しかし……」
「神楽耶の判断は決して失策ではありませんでした。様々な事の巡り会わせの悪さが原因かと考えます」
富士での真実を知る信也からすれば、神楽耶の判断が一番正しかったと確信している。あのまま何もなく特区が成立していれば、ルルーシュやスザクが特区を軌道に乗せ、日本人の生活や経済の水準は向上していたであろう。そして、信也が反抗派率いて国外でブリタニアに対して激しい抵抗活動を続ければブリタニアが日本の底力を恐れ更なる融和的な政策をした事は間違いない。現状は最悪と言ってもいいぐらいの状況だが、こうなったのは歯車が少し狂った結果に過ぎな無い事を知る信也からすれば神楽耶を咎めるつもりは全くない。
「ところで……」
「はい?」
「こんな見え透いた手で大丈夫でしょうか?」
「気休めです」
「え?!」
信也は驚く神楽耶に悪戯っぽい笑みを浮かべたあとでディートハルトに声をかけた。
「デイートハルト、この見え透い策を相手はどう受け取る?」
「それは、この戦況です! こんなのは苦し紛れの策と……ッ!?」
何かに気付いたディートハルトの顔には驚きの後に納得の色が浮かぶ。
「気付いたか?」
「はい」
「問題ないだろ?」
「ええ、これならば上手くいくでしょう」
ディートハルトはそう言って納得し、他の作業の指揮を取りに行った。
「??」
「こんな時だからこそ引っ掛かるんですよ」
信也は意味ありげに神楽耶へ笑みを向けた。
後退した黒の騎士団残党に漸く追い付いたブリタニアの追撃部隊は残党が立て篭もる陣地を前にして異常に気付く。
「敵陣の様子が変だ」
「やけに静かだな」
黒の騎士団の陣は門は大きく開かれ、静まり返っている。一方、随所にナイトメアが配置されているだけでなく、陣の全体にレーダーを撹乱するチャフスモークがばらまかれている。
「降伏するのか?」
「しかし、オープンチャンネルで降伏声明は出ていない」
「では罠か?」
前線のナイトメアパイロット達が判断に困っていると指揮官が怒鳴り付ける。
「馬鹿者!! ゼロも藤堂もいない奴らに何が出来る! 見え透いた時間稼ぎだ! 突入して蹴散らせぇ!」
指揮官の命令でナイトメアが次々突入していく。
ゼロも藤堂もいない黒の騎士団に脅威は感じない。当然の評価であり、当然の判断である。だが、そこまで読んで罠を仕掛けられていた。
ブリタニア軍のナイトメアが突入すると反撃は全く無かった。
そして、陣の中まで入ると誰もいなかった。確認してわかったことだが、破損したナイトメアや死んだブリタニア兵を利用し、さも防衛体制が整っているように見せていただけだった。
「何だ、時間稼ぎか」
「苦し紛れの『空城の計』か」
「黒の騎士団もお終いだな」
ブリタニアの兵達は気が抜けヘラヘラとしながら一応罠がないか確認していく。
「何をしているのだ! こんな小手先だけの罠は捨て置き追撃するぞ! 敵はまだこの近くにいるはずだ!」
追撃戦は容易に手柄がたてられる。しかも敵は総崩れ状態、そんな命令をされたら兵達は我先に追撃を開始する。……しかし、そこに罠があった。
「陣中が空だと気付き、敵が追撃を再開したようです」
「ラクシャータ!!」
「はいはぁ~い♪ 捕まえた♪ っと」
ラクシャータがキセルで『ポチッとな!』とスイッチを押した。
「な、なんだ?!」
「動かない?」
陣のその近辺に隠してあったゲフィオンディスターバーが発動し、陣内へ突入していた部隊や急ぎ追撃する為に配置や順番も考えずに陣を出て追撃しようとしていた部隊連中がまとめて捕まった。
「小癪な! 敵の装置を破壊しろ!!」
陣外部の後方にいた指揮官がそう命令すると、ゲフィオンディスターバーの装置を破壊すべく陣外部にいたナイトメアが装置の破壊すべく接近し、アサルトライフルで装置を破壊していく。
当然ながらゲフィオンディスターバーは解除されたが、それを見たラクシャータが笑みを浮かべる。
「おバカな敵さんが沢山罠にかかったみたいよぉ~」
「では吹き飛んでもらおうか! サヨウナラだ!」
今度は信也がそう言いながらスイッチを押した。その瞬間、陣の中心部で強烈な白光が発生した。
「なっ、何だ!?」
「これは……まさか!!」
ブリタニア兵達は何が起こるかを理解した瞬間、或いは理解する以前に光に包まれた。
陣の中心部に仕掛けていたありったけの流体サクラダイトが爆発した。先程のG-1ベースの爆発とは比べ物にならない規模の大爆発であった。陣の中にいたブリタニア軍は消し飛び、周辺にいたブリタニア軍は爆風で吹き飛び、その更に外側にいたブリタニア軍は爆風やそれに供に飛来する破片等々でその大半が吹き飛ばされた。
「よし! 計算通り!」
「随分と派手に吹っ飛ばしちゃったのねぇ」
「サクラダイトなら日本に山の様にある。それに採掘を行っているのは桐原財閥だからな」
信也はそう言って不敵な笑みを浮かべた。
見え透いた策で敵を油断させた後に罠を発動、更に味方の救出へ敵が集まった事を確認した後に爆破で纏めて吹き飛ばす。敵が油断しているとは言え、引っ掛かるかどうかは半ば賭けであったが、「敵が勝勢故に油断している」と言う読みが当たった事に信也はとりあえず安堵した。
「よし! 敵もこれ以上の追撃はできない。今のうちに撤退するぞ!」
黒の騎士団の残党はトウキョウ租界より撤退すると、本拠地代わりの潜水艦に乗り込み出航する事に成功した。
潜水艦が出航した後、周りに敵の姿は無く、敵からの襲撃の可能性がほぼ無くなったとわかると、極度の緊張状態から解放されて気が緩んだのか、信也は足が縺れる様にしてバランスを崩した。
「お、おい!!」
すぐ横に居た内藤が咄嗟に肩を支えようとするが、それでも姿勢が保てそうになかったので、抱きつくようにして体を支えながら腰を下ろして壁に背を預ける様にして座らせた。
「お前、凄い熱じゃないか!?」
「……薬が切れた……のか、傷口が……な」
驚く内藤や卜部に息も絶え絶えの状態で信也はそう返したが、もう起き上がる事すら困難らしく首を力無く傾け、右腕は投げ出す様にしている。
「申し訳ありません、信也。途中から気付いてはいたのですが、代わりを頼める者がおらず貴方に甘えてしまいました」
申し訳なさそうに詫びる神楽耶に信也は力無く首を横に振る。
「構わない。そ、それより……確……たい事があるから神…………え、カレンとし…………安否も……したい。その後、富士………………るキョ……のじいちゃ…………流しろ」
信也はそう言い残すと、力尽きて右肩から床へと倒れた。その後は荒い呼吸を繰り返すだけでピクリとも動かなくなった。
「ん~? キョウトのボーヤ、今なんて言ったの? 『カレン』ちゃんの名前を言っていたのは聞こえたけど」
「『確認したい事があるから神根島に迎え、カレンとC.C.の安否も確認したい。その後、富士から逃げてくるキョウトのじいちゃん達と合流しろ』と仰っていました」
「神根島?」
何故、そのタイミングで神根島なのか、皆意味がわからず首を傾げた。
東京での決戦は大敗に終わり、王を欠いた黒の騎士団は行く当てすら無い新たな船出に漕ぎ出す事となった。
まずG-1ベースの自爆だが、あれだけでは追撃を振り切る事はできなかったようだ。まあ、冷静に考えれば退却する此方の煙幕兼攻撃である事にはすぐに気付くので仕方が無い。
次にランスロットの動きを確認する。どうやら租界内の主力部隊へ向かったらしく此方には来なかった。フロートとランドスピナーを破壊しているので、此方には来ないと予測していたがどうやら推論は当たったらしい。敵がどう判断したかは推測するしかないが、藤堂達が奮戦して敵を引き付けてくれているお陰かも知れない。
それにしてもキョウトは……いや、日本は枢木スザクと言う男とつくづく相性が悪いらしい。
「私の責任ですね…」
「え?」
「私が情にとらわれず、裏切り者を早期に始末していればこんな事には……」
確かに神楽耶の言う通りキョウトを(ある意味で)裏切ったスザクを始末しなかった結果、今こうして追い詰められているのだ。
もっと以前から考えれば、スザクを始末していればユーフェミアに騎士に任じられる事もなかったし、行政特区の話も無く虐殺も不完全な形での挙兵もなかっただろう。
「確かにスザクの件は失敗でしたが、それは私やうちのじいちゃんも同罪です」
「しかし……」
「神楽耶の判断は決して失策ではありませんでした。様々な事の巡り会わせの悪さが原因かと考えます」
富士での真実を知る信也からすれば、神楽耶の判断が一番正しかったと確信している。あのまま何もなく特区が成立していれば、ルルーシュやスザクが特区を軌道に乗せ、日本人の生活や経済の水準は向上していたであろう。そして、信也が反抗派率いて国外でブリタニアに対して激しい抵抗活動を続ければブリタニアが日本の底力を恐れ更なる融和的な政策をした事は間違いない。現状は最悪と言ってもいいぐらいの状況だが、こうなったのは歯車が少し狂った結果に過ぎな無い事を知る信也からすれば神楽耶を咎めるつもりは全くない。
「ところで……」
「はい?」
「こんな見え透いた手で大丈夫でしょうか?」
「気休めです」
「え?!」
信也は驚く神楽耶に悪戯っぽい笑みを浮かべたあとでディートハルトに声をかけた。
「デイートハルト、この見え透い策を相手はどう受け取る?」
「それは、この戦況です! こんなのは苦し紛れの策と……ッ!?」
何かに気付いたディートハルトの顔には驚きの後に納得の色が浮かぶ。
「気付いたか?」
「はい」
「問題ないだろ?」
「ええ、これならば上手くいくでしょう」
ディートハルトはそう言って納得し、他の作業の指揮を取りに行った。
「??」
「こんな時だからこそ引っ掛かるんですよ」
信也は意味ありげに神楽耶へ笑みを向けた。
後退した黒の騎士団残党に漸く追い付いたブリタニアの追撃部隊は残党が立て篭もる陣地を前にして異常に気付く。
「敵陣の様子が変だ」
「やけに静かだな」
黒の騎士団の陣は門は大きく開かれ、静まり返っている。一方、随所にナイトメアが配置されているだけでなく、陣の全体にレーダーを撹乱するチャフスモークがばらまかれている。
「降伏するのか?」
「しかし、オープンチャンネルで降伏声明は出ていない」
「では罠か?」
前線のナイトメアパイロット達が判断に困っていると指揮官が怒鳴り付ける。
「馬鹿者!! ゼロも藤堂もいない奴らに何が出来る! 見え透いた時間稼ぎだ! 突入して蹴散らせぇ!」
指揮官の命令でナイトメアが次々突入していく。
ゼロも藤堂もいない黒の騎士団に脅威は感じない。当然の評価であり、当然の判断である。だが、そこまで読んで罠を仕掛けられていた。
ブリタニア軍のナイトメアが突入すると反撃は全く無かった。
そして、陣の中まで入ると誰もいなかった。確認してわかったことだが、破損したナイトメアや死んだブリタニア兵を利用し、さも防衛体制が整っているように見せていただけだった。
「何だ、時間稼ぎか」
「苦し紛れの『空城の計』か」
「黒の騎士団もお終いだな」
ブリタニアの兵達は気が抜けヘラヘラとしながら一応罠がないか確認していく。
「何をしているのだ! こんな小手先だけの罠は捨て置き追撃するぞ! 敵はまだこの近くにいるはずだ!」
追撃戦は容易に手柄がたてられる。しかも敵は総崩れ状態、そんな命令をされたら兵達は我先に追撃を開始する。……しかし、そこに罠があった。
「陣中が空だと気付き、敵が追撃を再開したようです」
「ラクシャータ!!」
「はいはぁ~い♪ 捕まえた♪ っと」
ラクシャータがキセルで『ポチッとな!』とスイッチを押した。
「な、なんだ?!」
「動かない?」
陣のその近辺に隠してあったゲフィオンディスターバーが発動し、陣内へ突入していた部隊や急ぎ追撃する為に配置や順番も考えずに陣を出て追撃しようとしていた部隊連中がまとめて捕まった。
「小癪な! 敵の装置を破壊しろ!!」
陣外部の後方にいた指揮官がそう命令すると、ゲフィオンディスターバーの装置を破壊すべく陣外部にいたナイトメアが装置の破壊すべく接近し、アサルトライフルで装置を破壊していく。
当然ながらゲフィオンディスターバーは解除されたが、それを見たラクシャータが笑みを浮かべる。
「おバカな敵さんが沢山罠にかかったみたいよぉ~」
「では吹き飛んでもらおうか! サヨウナラだ!」
今度は信也がそう言いながらスイッチを押した。その瞬間、陣の中心部で強烈な白光が発生した。
「なっ、何だ!?」
「これは……まさか!!」
ブリタニア兵達は何が起こるかを理解した瞬間、或いは理解する以前に光に包まれた。
陣の中心部に仕掛けていたありったけの流体サクラダイトが爆発した。先程のG-1ベースの爆発とは比べ物にならない規模の大爆発であった。陣の中にいたブリタニア軍は消し飛び、周辺にいたブリタニア軍は爆風で吹き飛び、その更に外側にいたブリタニア軍は爆風やそれに供に飛来する破片等々でその大半が吹き飛ばされた。
「よし! 計算通り!」
「随分と派手に吹っ飛ばしちゃったのねぇ」
「サクラダイトなら日本に山の様にある。それに採掘を行っているのは桐原財閥だからな」
信也はそう言って不敵な笑みを浮かべた。
見え透いた策で敵を油断させた後に罠を発動、更に味方の救出へ敵が集まった事を確認した後に爆破で纏めて吹き飛ばす。敵が油断しているとは言え、引っ掛かるかどうかは半ば賭けであったが、「敵が勝勢故に油断している」と言う読みが当たった事に信也はとりあえず安堵した。
「よし! 敵もこれ以上の追撃はできない。今のうちに撤退するぞ!」
黒の騎士団の残党はトウキョウ租界より撤退すると、本拠地代わりの潜水艦に乗り込み出航する事に成功した。
潜水艦が出航した後、周りに敵の姿は無く、敵からの襲撃の可能性がほぼ無くなったとわかると、極度の緊張状態から解放されて気が緩んだのか、信也は足が縺れる様にしてバランスを崩した。
「お、おい!!」
すぐ横に居た内藤が咄嗟に肩を支えようとするが、それでも姿勢が保てそうになかったので、抱きつくようにして体を支えながら腰を下ろして壁に背を預ける様にして座らせた。
「お前、凄い熱じゃないか!?」
「……薬が切れた……のか、傷口が……な」
驚く内藤や卜部に息も絶え絶えの状態で信也はそう返したが、もう起き上がる事すら困難らしく首を力無く傾け、右腕は投げ出す様にしている。
「申し訳ありません、信也。途中から気付いてはいたのですが、代わりを頼める者がおらず貴方に甘えてしまいました」
申し訳なさそうに詫びる神楽耶に信也は力無く首を横に振る。
「構わない。そ、それより……確……たい事があるから神…………え、カレンとし…………安否も……したい。その後、富士………………るキョ……のじいちゃ…………流しろ」
信也はそう言い残すと、力尽きて右肩から床へと倒れた。その後は荒い呼吸を繰り返すだけでピクリとも動かなくなった。
「ん~? キョウトのボーヤ、今なんて言ったの? 『カレン』ちゃんの名前を言っていたのは聞こえたけど」
「『確認したい事があるから神根島に迎え、カレンとC.C.の安否も確認したい。その後、富士から逃げてくるキョウトのじいちゃん達と合流しろ』と仰っていました」
「神根島?」
何故、そのタイミングで神根島なのか、皆意味がわからず首を傾げた。
東京での決戦は大敗に終わり、王を欠いた黒の騎士団は行く当てすら無い新たな船出に漕ぎ出す事となった。