scene01:血の味
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『黒の騎士団に通達する』
「スザク?」
突然テレビやネット上に枢木スザクの姿が映った。黒の騎士団は占領したメディア地区を既に放棄しているので当然ながらブリタニア側が普通にマスメディア等の情報機関を利用できたわけである。
『ゼロは我々ブリタニアが捕縛し処刑した。ただちに戦闘行為を中止し、降伏せよ』
「なっ!?」
通常の戦闘状態ならば、こんな虚仮威しは通じない。だいたいゼロ自体が正体不明なのだから、聞いた人間はまず偽者だと言う可能性を考えるだろう。
だが、現在黒の騎士団はゼロが失踪した結果、敗走中である。
しかも、スザクが左手に持っていた物は……「割れたゼロの仮面」であった。
「コーネリアァァァ!!!!」
信也はこの映像を流した意味を悟った。この映像は降伏勧告などでは無く、コチラを混乱させて兵達の戦意を喪失させるのが狙いだ。結果、危うい状態でどうにか持ちこたえていた戦線がこれで確実に混乱あるいは崩壊する。ゼロの死が確実になった以上、民兵だけでなく黒の騎士団も逃げ散る事が予想される。
ただ攻勢に出るのではなく、相手の大将の死を通達し敵全体の動揺を誘い敵戦線を崩す。
定石と言えば定石だが、それを日本国最後の首相の息子枢木スザクに通達させると言うのは、相手方である黒の騎士団に与える心理効果は大きい。第一、痛烈なこれ以上無い皮肉だ。
もっとも信也はコーネリアが負傷し、前に出れない事実を知らないのでそう感じたが、実際はコーネリアが出れないので、代役をユーフェミアの騎士であるスザクに命令しただけであるが、敵軍である信也は知る術の無い話だ。
総大将を処刑したと言う事実は信也に軍事的な意味でも衝撃を与えたが、彼個人にとっても衝撃である。
(……ゼロを処刑した?)
言葉の意味や敵の戦略はすぐに理解できたが、精神的な意味での衝撃は一瞬遅れてやってきた。
(じゃあゼロが……ルルーシュが……殺されたのか? スザクの手で?)
状況を理解した途端、視界が歪み立ち眩みの様な状態となり戦略パネルに手を着いて何とか倒れるのだけは堪えた。……が、
(…………じゃあゼロの後を追っていったカレンは?)
顔から血の気が失せ、顔面が蒼白になった事が自分でもわかった。
(つまりカレンも殺さr……)
その結論を導き出そうとした瞬間、信也の頭は全ての思考を放棄して真っ白になり停止した。
完全に戦意喪失になり指示なんて出せない状態になった。
各方面から信也に指示を求める声が響いているが、信也は戦略パネルに手を着いた状態で身動き一つできなくなっている。
取り乱したディートハルトが何か喚いて信也に指示を求めているが、この場に如何なる時も客観的に物事を見れる冷めた人間がいれば彼は半狂乱で信也に当たり散らしている様にしか見えないだろう。
いずれにせよ、黒の騎士団は誰もが誰かに指示を求めるばかりで誰も自ら動けない。先程までなんとか纏まっていたのはゼロに代わり的確な指示を出してくれる人間が居たからであり、元々の統率者であるゼロがいなくなればバラバラになり烏合の衆へと成り下がる。所詮はルルーシュが作り上げた私兵でしかなかったのであるから統率者がいなくなれば当然と言えば当然。そして、先程まで曲がりなりにも代わりを務めていた人間は――。
「信也」
「…………」
神楽耶が呼び掛けるが信也は聞こえているのかいないのか俯いたままである。
「…………」
ファイナーは周りを見渡してからため息を一つ吐き信也に歩み寄る。
「信也様」
ファイナーが近くで呼びかけてみたが反応は無い。
「信也様!!」
今度は少し語調を強めて肩を揺すってみたがやはり反応は無い。
「…………」
ファイナーから冷たい視線が信也に向けられた後、彼の口からはため息がこぼれる。
「信也ッ!!」
次の瞬間、ファイナーは力一杯信也を殴り飛ばした。
「ッ!?」
吹っ飛んで尻餅を着いたまま驚きで目を瞬かせている信也をファイナーは怒鳴り付ける。
「それでも真田信也か!!!」
「……え?」
「カレンさんの安否がわからない状態で、もう戦意喪失か?!」
「…………」
「仮に最悪の場合だったとして、彼女にこの様を何て説明するつもりだ?! まさか彼女を言い訳にして全てを投げ出すつもりか?」
「ッ!?」
「『貴女が心配で何もできませんでした』とでも説明するつもりか?」
「…………」
「フン、実にくだらん女々しい男だ。彼女の方が余程男らしい」
「ナッ!?」
「いや、待てよ。考えてみれば今更だな。お前がピーピー泣き言を言って彼女に助けて貰うってのがお前達の関係だったな」
「…………黙れ……」
「やはり無様に転んで恋人に助けを求めるのが貴様にはお似合いだ」
「黙れ!!」
「所詮、お前は彼女がいないと何もできない頭でっかちの―――」
「クソがぁぁーーーッッ!!!!!!」
ちょっと汚い雄叫びを揚げてファイナーの言葉を遮った信也は右腕を地面に叩き付けるように着いて立ち上がった。
「後でブッ飛ばしてやる!!」
誰に対して言ったのか不明だが怒鳴りつけた後に戦力パネルを睨み付けた。
そんなやり取りをしている間にも、戦場は混乱していた。ただでさえ動揺していた戦線は一気に崩れだした。そして、当然の如く敵は勢いだち更なら攻勢に出てきた。
「クッ、完全に崩れ始めたな」
崩壊が更に近づく、こんな敗勢では打つ手など無い。
(崩れるのはもう仕方がない。潰走でも構わない! 一人でも多く逃げさせることを考えよう。今、俺が考えるべきは敵が駄目押しの一手を、とどめを何処に打ってくるかを予測し出来る限りの対応をすることだ)
信也は戦略パネルを見て敵が狙い突いてきそうな急所を探す。
(敵軍はまず間違いなく《アイツ》を使いこちらの急所を突いてくるはずだ。一番に考えられるのは本陣だが、ゼロ不在であるから本陣ではなく狙うなら藤堂だろう。藤堂が居る前線には既に戦力が投入されているからそれはない。となると……)
戦略パネルを睨みつけ結論を出す
「ココだ!」
信也は陣を構築するように指示した《 Z-19》を指差す。
「南! 第一特務隊は迎撃の準備をしろ! 玉城! 第二特務隊は《Z-19》の陣に合流しろ!」
『あん? こんな状況でなんで後方を固めるんだよ!!』
『そんな場所より前線を!!』
何の説明もなく出される命令に玉城と南は文句を言うが、焦っている信也は苛立ち怒鳴り付ける。
「時間がないんだ! 黙って俺の言うことを聞け!! 負傷している扇副司令はさらに後方に下げろ!」
『なんだと!?』
「お前達と議論しているヒマはない!!」
指揮官としての信也は黒の騎士団員から信頼を得ていない。急に理解できない命令をされたからと言って即座に従うはずがなく理論建てて説明するべきなのだが、焦っている信也は南・玉城を無視して矢継ぎ早に指示を出す。
「杉山が率いる三番隊も南や玉城達と同じだ!」
『し、しかし……』
「藤堂将軍! 無理だと思いますが、なるべく早く後退してください! 潰走でも構わない!」
『ナニッ!? いくらなんでもそれは……』
『そんなムチャな指示に従えると思ってるの?!』
朝比奈の言葉にも信也は怒鳴り返す。
「いいから早くしろ! 死にたいのか!!」
『君が焦って血迷ってるだけじゃないの?』
「違う!! このままの速度で退却すると主戦場から主力部隊が全て離脱できなくなる!!」
『えっ!?』
「白き騎士によって、ね」
「スザク?」
突然テレビやネット上に枢木スザクの姿が映った。黒の騎士団は占領したメディア地区を既に放棄しているので当然ながらブリタニア側が普通にマスメディア等の情報機関を利用できたわけである。
『ゼロは我々ブリタニアが捕縛し処刑した。ただちに戦闘行為を中止し、降伏せよ』
「なっ!?」
通常の戦闘状態ならば、こんな虚仮威しは通じない。だいたいゼロ自体が正体不明なのだから、聞いた人間はまず偽者だと言う可能性を考えるだろう。
だが、現在黒の騎士団はゼロが失踪した結果、敗走中である。
しかも、スザクが左手に持っていた物は……「割れたゼロの仮面」であった。
「コーネリアァァァ!!!!」
信也はこの映像を流した意味を悟った。この映像は降伏勧告などでは無く、コチラを混乱させて兵達の戦意を喪失させるのが狙いだ。結果、危うい状態でどうにか持ちこたえていた戦線がこれで確実に混乱あるいは崩壊する。ゼロの死が確実になった以上、民兵だけでなく黒の騎士団も逃げ散る事が予想される。
ただ攻勢に出るのではなく、相手の大将の死を通達し敵全体の動揺を誘い敵戦線を崩す。
定石と言えば定石だが、それを日本国最後の首相の息子枢木スザクに通達させると言うのは、相手方である黒の騎士団に与える心理効果は大きい。第一、痛烈なこれ以上無い皮肉だ。
もっとも信也はコーネリアが負傷し、前に出れない事実を知らないのでそう感じたが、実際はコーネリアが出れないので、代役をユーフェミアの騎士であるスザクに命令しただけであるが、敵軍である信也は知る術の無い話だ。
総大将を処刑したと言う事実は信也に軍事的な意味でも衝撃を与えたが、彼個人にとっても衝撃である。
(……ゼロを処刑した?)
言葉の意味や敵の戦略はすぐに理解できたが、精神的な意味での衝撃は一瞬遅れてやってきた。
(じゃあゼロが……ルルーシュが……殺されたのか? スザクの手で?)
状況を理解した途端、視界が歪み立ち眩みの様な状態となり戦略パネルに手を着いて何とか倒れるのだけは堪えた。……が、
(…………じゃあゼロの後を追っていったカレンは?)
顔から血の気が失せ、顔面が蒼白になった事が自分でもわかった。
(つまりカレンも殺さr……)
その結論を導き出そうとした瞬間、信也の頭は全ての思考を放棄して真っ白になり停止した。
完全に戦意喪失になり指示なんて出せない状態になった。
各方面から信也に指示を求める声が響いているが、信也は戦略パネルに手を着いた状態で身動き一つできなくなっている。
取り乱したディートハルトが何か喚いて信也に指示を求めているが、この場に如何なる時も客観的に物事を見れる冷めた人間がいれば彼は半狂乱で信也に当たり散らしている様にしか見えないだろう。
いずれにせよ、黒の騎士団は誰もが誰かに指示を求めるばかりで誰も自ら動けない。先程までなんとか纏まっていたのはゼロに代わり的確な指示を出してくれる人間が居たからであり、元々の統率者であるゼロがいなくなればバラバラになり烏合の衆へと成り下がる。所詮はルルーシュが作り上げた私兵でしかなかったのであるから統率者がいなくなれば当然と言えば当然。そして、先程まで曲がりなりにも代わりを務めていた人間は――。
「信也」
「…………」
神楽耶が呼び掛けるが信也は聞こえているのかいないのか俯いたままである。
「…………」
ファイナーは周りを見渡してからため息を一つ吐き信也に歩み寄る。
「信也様」
ファイナーが近くで呼びかけてみたが反応は無い。
「信也様!!」
今度は少し語調を強めて肩を揺すってみたがやはり反応は無い。
「…………」
ファイナーから冷たい視線が信也に向けられた後、彼の口からはため息がこぼれる。
「信也ッ!!」
次の瞬間、ファイナーは力一杯信也を殴り飛ばした。
「ッ!?」
吹っ飛んで尻餅を着いたまま驚きで目を瞬かせている信也をファイナーは怒鳴り付ける。
「それでも真田信也か!!!」
「……え?」
「カレンさんの安否がわからない状態で、もう戦意喪失か?!」
「…………」
「仮に最悪の場合だったとして、彼女にこの様を何て説明するつもりだ?! まさか彼女を言い訳にして全てを投げ出すつもりか?」
「ッ!?」
「『貴女が心配で何もできませんでした』とでも説明するつもりか?」
「…………」
「フン、実にくだらん女々しい男だ。彼女の方が余程男らしい」
「ナッ!?」
「いや、待てよ。考えてみれば今更だな。お前がピーピー泣き言を言って彼女に助けて貰うってのがお前達の関係だったな」
「…………黙れ……」
「やはり無様に転んで恋人に助けを求めるのが貴様にはお似合いだ」
「黙れ!!」
「所詮、お前は彼女がいないと何もできない頭でっかちの―――」
「クソがぁぁーーーッッ!!!!!!」
ちょっと汚い雄叫びを揚げてファイナーの言葉を遮った信也は右腕を地面に叩き付けるように着いて立ち上がった。
「後でブッ飛ばしてやる!!」
誰に対して言ったのか不明だが怒鳴りつけた後に戦力パネルを睨み付けた。
そんなやり取りをしている間にも、戦場は混乱していた。ただでさえ動揺していた戦線は一気に崩れだした。そして、当然の如く敵は勢いだち更なら攻勢に出てきた。
「クッ、完全に崩れ始めたな」
崩壊が更に近づく、こんな敗勢では打つ手など無い。
(崩れるのはもう仕方がない。潰走でも構わない! 一人でも多く逃げさせることを考えよう。今、俺が考えるべきは敵が駄目押しの一手を、とどめを何処に打ってくるかを予測し出来る限りの対応をすることだ)
信也は戦略パネルを見て敵が狙い突いてきそうな急所を探す。
(敵軍はまず間違いなく《アイツ》を使いこちらの急所を突いてくるはずだ。一番に考えられるのは本陣だが、ゼロ不在であるから本陣ではなく狙うなら藤堂だろう。藤堂が居る前線には既に戦力が投入されているからそれはない。となると……)
戦略パネルを睨みつけ結論を出す
「ココだ!」
信也は陣を構築するように指示した《 Z-19》を指差す。
「南! 第一特務隊は迎撃の準備をしろ! 玉城! 第二特務隊は《Z-19》の陣に合流しろ!」
『あん? こんな状況でなんで後方を固めるんだよ!!』
『そんな場所より前線を!!』
何の説明もなく出される命令に玉城と南は文句を言うが、焦っている信也は苛立ち怒鳴り付ける。
「時間がないんだ! 黙って俺の言うことを聞け!! 負傷している扇副司令はさらに後方に下げろ!」
『なんだと!?』
「お前達と議論しているヒマはない!!」
指揮官としての信也は黒の騎士団員から信頼を得ていない。急に理解できない命令をされたからと言って即座に従うはずがなく理論建てて説明するべきなのだが、焦っている信也は南・玉城を無視して矢継ぎ早に指示を出す。
「杉山が率いる三番隊も南や玉城達と同じだ!」
『し、しかし……』
「藤堂将軍! 無理だと思いますが、なるべく早く後退してください! 潰走でも構わない!」
『ナニッ!? いくらなんでもそれは……』
『そんなムチャな指示に従えると思ってるの?!』
朝比奈の言葉にも信也は怒鳴り返す。
「いいから早くしろ! 死にたいのか!!」
『君が焦って血迷ってるだけじゃないの?』
「違う!! このままの速度で退却すると主戦場から主力部隊が全て離脱できなくなる!!」
『えっ!?』
「白き騎士によって、ね」