scene01:血の味
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指揮系統の混乱収拾と効率化、後詰め部隊による退路の堅守、主戦場で主力部隊が混戦状態から脱却。
これ等により黒の騎士団内では『何とか退却できるのではないか』と言う希望が生まれつつある――とは言え、そんなモノは危ういバランスの上に成り立っている淡い希望に過ぎない。むしろやっとスタート地点に立てそうと言う程度の情勢である。
前線部隊と退路確保部隊を作り簡易的な陣地を作り、その陣地を利用しながら主力部隊を徐々に後退させて主戦場であるトウキョウ租界から離脱する。まだまだ始まったばかりで先は長い。
それにどうしても解決する事ができない『指導者の不在』と言う大きな問題がある。
信也は基本的に能力が高いが、こんな大軍の全軍を指揮をするのは勿論生まれて初めての事なので、圧倒的に経験不足だ。
そして何よりも、裏方に徹していた信也にはゼロや藤堂のようなカリスマや知名度もないし、兵との信頼関係は皆無で末端の兵士からすれば誰なのかすらわからない。キョウト六家の盟主の威光と委任を大義名分として組織を即席で纏めはしたが、そんな物は付け焼き刃である。両手で水を掬った様に水は当然ながら隙間から零れ落ちる。
末端の連中からすれば敗勢の中でキョウト六家盟主の名の下に何処の誰かもわからない人間が采配を振い、黒の騎士団の幹部やレジスタンスや民兵の隊長に指示を出しているのだ。
「第四特総隊! そちらではない! 聞こえるか!」
『もう無理だって! やっぱりブリタニアには勝てないんだ!』
いくら指示が的確であっても民兵達は当然ながら不安になり徐々に逃げ散ってしまう。
「おい、待て! 勝手にバラバラに逃げ散っても……チッ! 通信が切りやがった!!」
民兵の部隊から少しずつ崩れだしている。信也が今までキョウトや黒の騎士団で裏方に徹して居た事が、完全に裏目に出てしまった。
『第一特総隊敗走寸前です!!』
「クソッ! 第一特総隊と第二特総隊は400メートル後退し、建物を盾にしつつ敵を防げ!」
まず暴徒と化していた民衆が逃げ出してすぐにいなくなり、次に大した訓練を受けていない練度の低いレジスタンス達がいつの間にやら消えていた。櫛の歯が抜ける様にして戦力が減って行く。
(まともな戦力は黒の騎士団やキョウトあるいは旧日本軍出身者と言った訓練を受けた連中ぐらいか……)
訓練を受けた連中は今のところ逃げ散らずに奮戦している。
(寝返った名誉ブリタニア人と一部のレジスタンス達が意外にも未だに踏みとどまっているのは嬉しい誤算ではあるが……これも時間の問題だろうな)
彼等とて黒の騎士団やゼロの為に死ぬ義理は無いのだ。旗色が悪くなれば逃げ出すだろう。それにゼロが失踪した理由を知れば黒の騎士団とて逃げ出すだろう。
そして、敵軍の指揮官であるギルフォードはその事を理解しているはずだ。となると、彼が打ってくるであろう次の一手も推測できるが、
「メディア地区に敵別働隊が向かっています」
やはり側面からの攻撃だった。
「そうか、参番隊の残存部隊は?」
「指定されたポイントへの布陣はほぼ完了しています」
「よし! 杉山さん、私の指示通りに命令を出してください。非常時ですので参番隊は間接的に私が指揮を執ります」
『わかった』
南とは違い杉山はあっさりと了承してくれた。人間関係も結構大切らしいと言う事を実感として学習した。何だかんだ言っても信也はまだまだ子供である。
「第七班、敵が所定の範囲に入れば一斉射だ。壁越しに撃ちまくれ」
IMFを外した無頼が壁越しの一斉射撃で敵のサザーランドの一隊を撃破。
「ポイントE―24の罠を始動させろ」
道を直進するサザーランドの頭上へコンクリート片を落下させる。そのコンクリート片に紛れる様にして投擲されたケイオス爆雷でサザーランドを二機撃破し、一機を中破。
「岡機はハーケンを左方向30度に発射。撃破後、100メートル先の交差点を左折し、離脱しろ。全速力でな」
スラッシュハーケンで敵機を撃破、敵機の銃撃が襲うがすぐに離脱し、回避した。
「工作隊、三番を作動させろ」
仕掛けられたサクラダイトが爆発し、倒壊したビルが敵軍に襲いかかる様に倒れ下敷きにした。
「よし! 三方から囲んで撃ち取れ!」
ビルより逃れた前方のナイトメア部隊に三方より攻撃を仕掛けてこれも撃破した。
「ポイント14の歩兵隊は敵歩兵部隊を挟撃し掃討しろ。30秒後だ」
『了解』
租界の地下より回り込もうとしていた敵歩兵部隊を左右から挟撃して蜂の巣にして討ち取った。本来であれば同士討ちになる危険があるので十字砲火で銃弾を浴びせた方が良いのだが、時間と空間ならびに戦力の制約があるので強行した。
「11ストリートの無頼二機は後退しろ」
『わかりました』
二機を敵のサザーランドが追尾してくる。
「やはり釣られて出てきたな。よし、例のポイントへ敵ナイトメアを誘い込み網に掛かり次第、半円の陣形で包囲し一斉射撃で仕留めろ」
『承知』
誘い込まれた敵機は伏せていた無頼と重火器を持った歩兵によって撃ち取った。
「よし、メディア地区は今のうちに戦線を300メートル程後退させろ。歩兵部隊から順次な」
メディア地区にいる参番隊の残存部隊を中心とする部隊は善戦して敵軍の侵攻を十分に遅らせ、徐々に後退できてはいる。だが、本陣の信也から出される指示に完全に依存している。
藤堂から通信が入った。
『全体の状況はどうなっている!』
「第一特総隊は敗走、それと共に第二特総隊は後退させて迎撃。このままの位置に主力部隊が居ては右翼に次いで左翼の腹背も剥き出しの状態になります! なるべく早く後退を」
『わかっている! だが敵に背を向け一気に後退するわけにも、いかないだろうが!』
主戦場は相変わらず敵の激しい猛攻にさらされており、慌てているのか藤堂の声はまるで怒鳴っている様だ。それに対して内心では結構焦っている信也も怒鳴り返す様な声音で返した。
「それもわかっています! しかし、民兵の崩壊が想像以上の早さです! このままでは主力部隊が孤立します! なんとかポイントF-5まで後退してください!」
そこに千葉が割って入ってきた。
『後退してどうなるんだ!!』
「エナジーフィラーと弾薬があります! あと味方に迎撃の準備をさせています!」
藤堂が補給以外の対策をたずねてきた。
『敵主力部隊を更に突き放す策はないのか?』
「チャークスモークと爆薬も準備させています! ただ租界内ではどうしても敵を突き放すのは難しいかと……」
『わかった』
とりあえず祖界の外まで退却しないとどうにもならない。無茶な指示だが従うしかないと藤堂は判断したようだ。
さてさて民兵は練度が低くゼロがいなくなったらあっさり戦線は崩れ、退却を始めると逃走する者が相次ぎ、気が付けばこちらの戦力は主力部隊であった黒の騎士団と一部のレジスタンス、後は寝返った名誉ブリタニア人だけとなっているのでどうしても布陣に穴が出きる。
「四番隊の歩兵部隊! 例の場所に爆薬を設置し敵が来たら爆破し道を塞げ!」
指示通りに爆破が行われビルが倒れ、下にいた五機のサザーランドを踏み潰して道を塞いだ。
「陣の構築はどうなっている?」
『もう少し待ってください。なんとか間に合わせます』
ナイトメアも、人も、忙しなく動き、大慌てで陣地を構築している。完璧には無理だが敵が来るまでには間に合いそうだ。
「東部軍区のブリタニア軍はどう展開している? ここに一番早く着きそうな部隊は?!」
「今のところエリア11内に援軍を出す余裕ある基地は無いようで、目立った動きはありません」
ファイナーの言葉に信也は少しだけ安堵した。
指示を出して善戦はさせているが、味方は既に敗北して退却している状態なのだから、全体的に見れば当然だが敵であるブリタニア軍の優勢は揺るがない。
さらに敵方の指揮官であるギルフォードは今一つ攻めきれていない戦況に納得はしていない様だが、熱くなったり焦ってはいない様で、正面の主力部隊と交戦している部隊は一気呵成に勢いよく攻め掛かってくるだけでなく、側面にあたる部隊達を罠を警戒しつつも慎重に、しかし、着実に進ませんて、こちらの主力部隊を包囲する様にせまって来ている。
(不味いな。なんとか持ちこたえているが、何かの弾みで主力部隊が崩れたら完全に崩壊だな)
ジワリ、ジワリ、と完全なる崩壊の時が近付いているのを感じ、信也は背中に嫌な汗を感じていた。
そこに漸くディートハルトとラクシャータがG-1に到着した。
「状況は?!」
「言うまでもないだろ?」
「あ~……やっぱり?」
「ええ」
引き攣った笑みを浮かべる信也に、顔に悲壮感が漂っているディートハルト、さすがにマジな顔になって頬を歪めたラクシャータ、気丈に振る舞っているが泣きそうな神楽耶、淡々と指示を出しているがかなり焦っているファイナー。局地的な善戦で希望を抱き始めている末端の兵達とは異なり幹部達の表情には悲壮感が漂っている。
「とりあえずポイントF-5に陣を構築したので、一旦主力部隊をここまで後退させ、租界外縁部のポイントZ-19まで繰り引きで退却させ戦場から離脱させるつもりですが……」
「現状ではギリギリ持ちこたえているが、何処か違う所から圧力が加われば、総崩れ潰走となりかねない?」
「そう言う事です」
かなり危険な状態だが、撤退の判断が早かったのでギリギリ戦線を維持できている。それが局地的な善戦や信也の采配でも覆す事ができない黒の騎士団の現状である。
これ等により黒の騎士団内では『何とか退却できるのではないか』と言う希望が生まれつつある――とは言え、そんなモノは危ういバランスの上に成り立っている淡い希望に過ぎない。むしろやっとスタート地点に立てそうと言う程度の情勢である。
前線部隊と退路確保部隊を作り簡易的な陣地を作り、その陣地を利用しながら主力部隊を徐々に後退させて主戦場であるトウキョウ租界から離脱する。まだまだ始まったばかりで先は長い。
それにどうしても解決する事ができない『指導者の不在』と言う大きな問題がある。
信也は基本的に能力が高いが、こんな大軍の全軍を指揮をするのは勿論生まれて初めての事なので、圧倒的に経験不足だ。
そして何よりも、裏方に徹していた信也にはゼロや藤堂のようなカリスマや知名度もないし、兵との信頼関係は皆無で末端の兵士からすれば誰なのかすらわからない。キョウト六家の盟主の威光と委任を大義名分として組織を即席で纏めはしたが、そんな物は付け焼き刃である。両手で水を掬った様に水は当然ながら隙間から零れ落ちる。
末端の連中からすれば敗勢の中でキョウト六家盟主の名の下に何処の誰かもわからない人間が采配を振い、黒の騎士団の幹部やレジスタンスや民兵の隊長に指示を出しているのだ。
「第四特総隊! そちらではない! 聞こえるか!」
『もう無理だって! やっぱりブリタニアには勝てないんだ!』
いくら指示が的確であっても民兵達は当然ながら不安になり徐々に逃げ散ってしまう。
「おい、待て! 勝手にバラバラに逃げ散っても……チッ! 通信が切りやがった!!」
民兵の部隊から少しずつ崩れだしている。信也が今までキョウトや黒の騎士団で裏方に徹して居た事が、完全に裏目に出てしまった。
『第一特総隊敗走寸前です!!』
「クソッ! 第一特総隊と第二特総隊は400メートル後退し、建物を盾にしつつ敵を防げ!」
まず暴徒と化していた民衆が逃げ出してすぐにいなくなり、次に大した訓練を受けていない練度の低いレジスタンス達がいつの間にやら消えていた。櫛の歯が抜ける様にして戦力が減って行く。
(まともな戦力は黒の騎士団やキョウトあるいは旧日本軍出身者と言った訓練を受けた連中ぐらいか……)
訓練を受けた連中は今のところ逃げ散らずに奮戦している。
(寝返った名誉ブリタニア人と一部のレジスタンス達が意外にも未だに踏みとどまっているのは嬉しい誤算ではあるが……これも時間の問題だろうな)
彼等とて黒の騎士団やゼロの為に死ぬ義理は無いのだ。旗色が悪くなれば逃げ出すだろう。それにゼロが失踪した理由を知れば黒の騎士団とて逃げ出すだろう。
そして、敵軍の指揮官であるギルフォードはその事を理解しているはずだ。となると、彼が打ってくるであろう次の一手も推測できるが、
「メディア地区に敵別働隊が向かっています」
やはり側面からの攻撃だった。
「そうか、参番隊の残存部隊は?」
「指定されたポイントへの布陣はほぼ完了しています」
「よし! 杉山さん、私の指示通りに命令を出してください。非常時ですので参番隊は間接的に私が指揮を執ります」
『わかった』
南とは違い杉山はあっさりと了承してくれた。人間関係も結構大切らしいと言う事を実感として学習した。何だかんだ言っても信也はまだまだ子供である。
「第七班、敵が所定の範囲に入れば一斉射だ。壁越しに撃ちまくれ」
IMFを外した無頼が壁越しの一斉射撃で敵のサザーランドの一隊を撃破。
「ポイントE―24の罠を始動させろ」
道を直進するサザーランドの頭上へコンクリート片を落下させる。そのコンクリート片に紛れる様にして投擲されたケイオス爆雷でサザーランドを二機撃破し、一機を中破。
「岡機はハーケンを左方向30度に発射。撃破後、100メートル先の交差点を左折し、離脱しろ。全速力でな」
スラッシュハーケンで敵機を撃破、敵機の銃撃が襲うがすぐに離脱し、回避した。
「工作隊、三番を作動させろ」
仕掛けられたサクラダイトが爆発し、倒壊したビルが敵軍に襲いかかる様に倒れ下敷きにした。
「よし! 三方から囲んで撃ち取れ!」
ビルより逃れた前方のナイトメア部隊に三方より攻撃を仕掛けてこれも撃破した。
「ポイント14の歩兵隊は敵歩兵部隊を挟撃し掃討しろ。30秒後だ」
『了解』
租界の地下より回り込もうとしていた敵歩兵部隊を左右から挟撃して蜂の巣にして討ち取った。本来であれば同士討ちになる危険があるので十字砲火で銃弾を浴びせた方が良いのだが、時間と空間ならびに戦力の制約があるので強行した。
「11ストリートの無頼二機は後退しろ」
『わかりました』
二機を敵のサザーランドが追尾してくる。
「やはり釣られて出てきたな。よし、例のポイントへ敵ナイトメアを誘い込み網に掛かり次第、半円の陣形で包囲し一斉射撃で仕留めろ」
『承知』
誘い込まれた敵機は伏せていた無頼と重火器を持った歩兵によって撃ち取った。
「よし、メディア地区は今のうちに戦線を300メートル程後退させろ。歩兵部隊から順次な」
メディア地区にいる参番隊の残存部隊を中心とする部隊は善戦して敵軍の侵攻を十分に遅らせ、徐々に後退できてはいる。だが、本陣の信也から出される指示に完全に依存している。
藤堂から通信が入った。
『全体の状況はどうなっている!』
「第一特総隊は敗走、それと共に第二特総隊は後退させて迎撃。このままの位置に主力部隊が居ては右翼に次いで左翼の腹背も剥き出しの状態になります! なるべく早く後退を」
『わかっている! だが敵に背を向け一気に後退するわけにも、いかないだろうが!』
主戦場は相変わらず敵の激しい猛攻にさらされており、慌てているのか藤堂の声はまるで怒鳴っている様だ。それに対して内心では結構焦っている信也も怒鳴り返す様な声音で返した。
「それもわかっています! しかし、民兵の崩壊が想像以上の早さです! このままでは主力部隊が孤立します! なんとかポイントF-5まで後退してください!」
そこに千葉が割って入ってきた。
『後退してどうなるんだ!!』
「エナジーフィラーと弾薬があります! あと味方に迎撃の準備をさせています!」
藤堂が補給以外の対策をたずねてきた。
『敵主力部隊を更に突き放す策はないのか?』
「チャークスモークと爆薬も準備させています! ただ租界内ではどうしても敵を突き放すのは難しいかと……」
『わかった』
とりあえず祖界の外まで退却しないとどうにもならない。無茶な指示だが従うしかないと藤堂は判断したようだ。
さてさて民兵は練度が低くゼロがいなくなったらあっさり戦線は崩れ、退却を始めると逃走する者が相次ぎ、気が付けばこちらの戦力は主力部隊であった黒の騎士団と一部のレジスタンス、後は寝返った名誉ブリタニア人だけとなっているのでどうしても布陣に穴が出きる。
「四番隊の歩兵部隊! 例の場所に爆薬を設置し敵が来たら爆破し道を塞げ!」
指示通りに爆破が行われビルが倒れ、下にいた五機のサザーランドを踏み潰して道を塞いだ。
「陣の構築はどうなっている?」
『もう少し待ってください。なんとか間に合わせます』
ナイトメアも、人も、忙しなく動き、大慌てで陣地を構築している。完璧には無理だが敵が来るまでには間に合いそうだ。
「東部軍区のブリタニア軍はどう展開している? ここに一番早く着きそうな部隊は?!」
「今のところエリア11内に援軍を出す余裕ある基地は無いようで、目立った動きはありません」
ファイナーの言葉に信也は少しだけ安堵した。
指示を出して善戦はさせているが、味方は既に敗北して退却している状態なのだから、全体的に見れば当然だが敵であるブリタニア軍の優勢は揺るがない。
さらに敵方の指揮官であるギルフォードは今一つ攻めきれていない戦況に納得はしていない様だが、熱くなったり焦ってはいない様で、正面の主力部隊と交戦している部隊は一気呵成に勢いよく攻め掛かってくるだけでなく、側面にあたる部隊達を罠を警戒しつつも慎重に、しかし、着実に進ませんて、こちらの主力部隊を包囲する様にせまって来ている。
(不味いな。なんとか持ちこたえているが、何かの弾みで主力部隊が崩れたら完全に崩壊だな)
ジワリ、ジワリ、と完全なる崩壊の時が近付いているのを感じ、信也は背中に嫌な汗を感じていた。
そこに漸くディートハルトとラクシャータがG-1に到着した。
「状況は?!」
「言うまでもないだろ?」
「あ~……やっぱり?」
「ええ」
引き攣った笑みを浮かべる信也に、顔に悲壮感が漂っているディートハルト、さすがにマジな顔になって頬を歪めたラクシャータ、気丈に振る舞っているが泣きそうな神楽耶、淡々と指示を出しているがかなり焦っているファイナー。局地的な善戦で希望を抱き始めている末端の兵達とは異なり幹部達の表情には悲壮感が漂っている。
「とりあえずポイントF-5に陣を構築したので、一旦主力部隊をここまで後退させ、租界外縁部のポイントZ-19まで繰り引きで退却させ戦場から離脱させるつもりですが……」
「現状ではギリギリ持ちこたえているが、何処か違う所から圧力が加われば、総崩れ潰走となりかねない?」
「そう言う事です」
かなり危険な状態だが、撤退の判断が早かったのでギリギリ戦線を維持できている。それが局地的な善戦や信也の采配でも覆す事ができない黒の騎士団の現状である。