scene02:総司令代行
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カレンとC.C.が信也を紅蓮で抱えて合流すると、呆れた顔の神楽耶とラクシャータに迎えられた。
「あ~、やっぱり倒れちゃった?」
「すみません。本人がなかなか戻るって言わなくて」
「あの傷で動いたら、当然こうなりますね」
「コイツ自身もわかっていてやってる節があるから尚のこと質が悪いな」
「本当にそうよね。どーせ、気を張ってた我慢していたけど、カレンちゃんの無事を確認して緊張が緩んで一気に来たんでしょう」
「無理を頼んでおいてなんですが、こうなるの当然ですね」
「そうね。それにしても前から思ってたんだけどさぁ。このボーヤ、自分の事になると無頓着過ぎるんじゃなぁい?」
「やはり以前からそうなのか」
「ん。とーぜん」
「痛覚が麻痺してるんじゃないか?」
「それか、加減知らずのおバカちゃんじゃなぁい?」
「そう言う傾向はありますね。とりあえず今は」
「はいはい。医療班ってまだいる? とりあえず医務室に運んでぇ」
眠っている信也は担架で病室へと運ばれていった。
三人と合流した後にキョウトの残党とも合流して物資と逃走資金も補充した黒の騎士団・キョウトの一行は、海中に水没したガウェインを回収すべく神根島近海へと向かう。
その最中、幹部や主要メンバーが集まり話し合いを始める。ちなみに信也はぶっ倒れてまだ起きていないので不参加である。
「で、これから先どうするの~? 生死はともかく“ゼロがもういない”事だけは確定しちゃった訳だし」
寝転がったラクシャータが無気力に深刻な事を確認する。
「桐原公より伝言を頼まれた身としては“今はともかく落ち延びて再起を”との事なので神楽耶様には即座に中華連邦へ亡命しとていただきたいのですが」
「それはーー」
桐原の側近であった矢沢の言葉に神楽耶が答えようとするが、驚いた卜部がそれを遮る。
「ちょっと待ってくれ、藤堂中佐達を見捨てるのか?」
「卜部さん! 貴方はそれでいいかも知れませんが、総力的な兵力だけでなくエース級の機体を見てください! 貴方の月下以外は腕の壊れた紅蓮とパイロットの腕が壊れたカスタムサザーランドしかないのですよ!!」
ディートハルトの発言に、紅蓮のパイロットであるカレンと頭数にすら入れられなかった内藤の二人はかなりイラッとしたが、二人とも話しがこじれるので不満は口にしなかったようだ。
「私は卜部さんと同じ意見です。可能性があるなら仲間を救出しないと……」
「ゼロがいない現状で、ですか? 不可能です、あり得ない!!」
「今すぐには不可能でしょうが、卜部さんやカレンさんの気持ちはわかります。その言い方は如何な物かと思いますが?」
一々嫌味な事を言うディートハルトに神楽耶が釘を刺すが全く気にしている様子はない。
「そもそも、彼女達がゼロを守れていればこのような事態にはならなかったのでは?」
ディートハルトはカレンとC.C.を憎々しげに批難した為に、カレンは少し罪悪感を感じるがC.C.は呆れる。
「今それを言うのか」
「私はどう転んでも今より少しはマシになっていた。と言う疑いようのない事実を申し上げたまでの事でーー」
「ともかく!!」
ディートハルトの発言を同じブリタニア人ではあるファイナーが大きな声で遮る。
「キョウトとしては神楽耶様の身の安全を確保する事を優先します。黒の騎士団としてはどうされるのですか? 組織として方針を決めていただけないと、キョウトも判断ができないのでは? 日本に残って反抗を続けられるのか、共に亡命されるのか、そして、誰が率いられるのか」
ファイナーの問いにしばしの沈黙が流れる。
「確かにキョウトとしても戦闘を指揮する総司令がいないのはーー」
「神楽耶様が総司令ではダメなんですか? そうすればキョウトと黒の騎士団両方を包括的に指揮できます」
当然の事を何故しないのかと首を傾げる内藤の意見を神楽耶が制する。
「皆さんが納得されるのであればそれも一つの方法ではありますが、私では前線に出て戦闘指揮を行う事が難しいです。それでは皆さんの、特に黒の騎士団の方々からの賛同は得られません」
「なるほど」
「キョウト側である我々が出しゃばるのは慎むべきかと」
「そうは言ってもねぇ〜。どうなの、参謀?」
「私が何か言ったとして、皆さんが私に従いますか?」
「一々嫌味を言わないと気が済まないのですか?」
「事実を申し上げたまでの事です」
「黙れ!! ブリタニア人!! 話しが進まないだろ」
イライラしているファイナーと一々陰湿なディートハルトが口論を始めたので矢沢が人種で一括りにして黙らせた。険悪な雰囲気で場の空気が最悪となった。神楽耶が頭を抱え、ラクシャータが呆れ、カレンがどうしたものかと困惑していると、C.C.がため息をついた。
「要は“神楽耶を旗頭に担ぐ”のは全員が了承しているから、黒の騎士団の総司令を決めればいいのだろ?」
「ですからその重責が担える人物がいないと言ってーー」
「私は真田信也を総司令に推挙する」
C.C.がディートハルトの発言を遮って述べた言葉に皆が驚く。
「しかし彼はキョウトの人間だろ?」
「だが、この中ではカレンの次に黒の騎士団の古株でもあるのだろ?」
「え? あっ、言われてみれば確かにーー」
卜部の疑問にC.C.は即答し、カレンもすっかり忘れていた様だ。確かに加入時期だけで言えば黒の騎士団に参加したのは扇グループを除けば最古参の部類でありナリタ戦にも参戦している。勿論、実態はキョウトの人間だが所属の長さで言えば十分に古参である。
「それにキョウトでは軍事責任者なのだろ」
「それは事実です。彼には軍事総裁をお願いしています」
「キョウトで軍事の責任者、黒の騎士団では古株で客将待遇。能力も申し分ない。これ以上の適任はいないだろ?」
C.C.の意見に一同悩む。言われてみれば他に適任がいないような気もするのだが、信也では問題もある。
「でも大丈夫かしらねぇ」
「ん?」
「保護者はいない。怪我が酷くて身動きが取れない。手足となる部下も殆どがインド軍区。黒の騎士団は壊滅状態。あのボーヤに任せて本当に大丈夫?」
「ラクシャータさんの言う通りですよ。信也はメンタルが弱いし、軍を指揮した事だって……」
「メンタルはともかく、軍事指揮は問題ないんじゃないか?」
「でも彼には経験が……」
「え? おい、ちょっと待て」
「彼は経験もなくトウキョウで全軍を指揮してあれだけの事をやってのけたのか?」
「「?」」
トウキョウにいなかったカレンとC.C.には卜部やディートハルトの驚きが理解できない。
「厳密に言うと、“あれ程の大軍を指揮したのは初めて”です。今までは大隊(500-600人程)規模すらなかったのでは?」
「後方・諜報部隊まで入れれば大隊規模の人数ならギリギリあるのではと言った感じです」
「諜報や隠密行動ばかりでしたからね」
「結局、キョウトの軍は総動員で戦闘する機会はなかったですからね」
神楽耶と内藤のやり取りを聞いて黒の騎士団側の皆が驚くがC.C.の推挙は確かに正しいと認識したが、
「キョウトのボーヤが優秀なのは知ってたし、今一番最適なのは理解したけど、怪我で動けないんだから無理じゃなぁい?」
「そうですよ。私は反対です!!」
怪我を理由にラクシャータとカレンは反対する。
「だが、他に適任がいないのだ仕方あるまい」
「心配ではありますが、キョウトと黒の騎士団の両方が納得できるという点では妥当ではないでしょうか?」
「それに、ゼロがいない黒の騎士団からキョウト側に命令されても納得できかねます」
C.C.の妥協案だという意見に今まで黙っていたキョウト諜報部の池田が同意し、桐原の側近矢沢も賛同する。
「傷さえなければ同意なのですが……」
「それに眠っているアイツには桐原さんの事をまだ伝えてないわけだし」
言葉を濁すファイナーに内藤は微妙な表情で杞憂を述べて同意する。
「まずは方針だけ決めさせて療養させる。総司令にしたからといってすぐに戦闘させなければいいだろ」
「彼の性格上難しくないか?」
「大丈夫だ」
「その心は?」
「カレンの泣き落としがある」
「なるほど」
「勝手に泣き落としをする事を決定事項にしないで!」
「まあ、神楽耶が療養を命令し、ラクシャータがアイツに協力しなければいい。ナイトメアの起動キーも私が取り上げておく。これならさすがに大丈夫であろう?」
「ああ~確かにねぇ」
「まあ、療養を優先するのであれば……」
黒の騎士団側の人間は能力と歴の長さで賛成或いは妥協し、信也に近いキョウト側の人間は抑も賛成であった上に療養優先するとの条件附で了承した。残る反対者はカレンだけとなった。
「で、でも彼はーー」
「なんだ? 一番古参のお前が総司令になるか?」
「そ、それは……」
「私はそれでも構わないと思うが、その場合、アイツはお前を守る為に動く、絶対に療養しないぞ」
「うっ」
「療養させる事を条件と致しますので、了承していただけませんか?」
「……わかりました」
C.C.から二重に脅され、神楽耶に説得されてはカレンも意見を引っ込めざる得なくなった。
「それでは、ここにいる皆の総意として彼が目覚めたら総司令への就任を依頼する事とします。ただし、戦闘行為や前線に出るのは怪我の治療が終わってからと致します。これで異論はございませんか?」
神楽耶の言葉に皆がうなずいたり無言で同意する。ただし、卜部が疑問を口にする。
「しかし、彼自身が辞退するんじゃないか?」
「断るようなら私が説得する」
「え? C.C.が?」
「ああ、別に神楽耶から命令してもいいが、説得するなら私に任せろ。」
「……」
「そう身構えるな。何もしない」
信也を守ろうと警戒心全開なカレンにC.C.を笑う。
「で、この後のことは信也が起きてから決めるのか?」
「その方が無難じゃなーい?」
誰を指揮官にするかは本人不在の欠席裁判で決まったので矢沢が手を上げて主張する。
「では今のうちに確認していただきたい事があります」
「ええ? そろそろガウェインをサルヴェージする準備したいからパスしちゃダメぇ?」
「ラクシャータ博士にも関係がある事ですのでしばらくお付き合い下さい」
「えーーー………」
「皆さんの中からブリタニアよりテロリストとして指名手配された方がおられます」
そう言うと矢沢は手配書をスクリーンに映した。黒の騎士団ではディートハルト、ラクシャータ、カレン、卜部等、キョウトでは神楽耶、矢沢等が指名手配されていた。カレンは首を傾げて思わず尋ねる。
「これだけですか?」
「はい。今のところは今回の反乱で指名手配されたのはこのメンバーです。あとはユーフェミアはブリタニア側が“皇籍抹消の上で処刑した”と公式発表をしております」
「完全に嘘じゃないですか」
「あくまでユーフェミア個人が起した行動であり“国家としての遺志ではない”と内外に知らしめて混乱を鎮圧する為の政治的発表でしょう」
「世間が信じるかどうかではなく国家としての立場を明確にする必要があるでしょうから当然ですね」
「はい」
「それにしても、キョウトの方々が少なくないですか?」
「六家の方々は“神楽耶様を除き捕まる或いは捕まっている”でしょうから、残りは神楽耶様や“情報と金を持ち逃げした”私ぐらいですね」
「それもそうですわね」
矢沢と神楽耶は何のこともないように述べているが知らない人間からすれば驚きであり疑問だが、彼はそれらを無視し続ける。
「それから、もう一つ見てもらいたい物がありまして」
「もう一つ?」
「個人的に注目しているのは此方です」
「え? 行方不明者リスト?」
「ええ、これほどの規模の反乱、当然ながら生死不明の行方不明者が大量にいます。まあ、ブリタニア側にとっての、ですが。それはともかく、とりあえずみてください」
皆が促されるままにリストを見るが、
「え?」
「え? あれ?!」
リストのかなり最初の方をみてすぐに異常に気づく。
「これ、なんでだと思いますか?」
「さあねえ、けど、これでいい療養先が見つかったじゃな~い」
皆がラクシャータの言葉に「え?」っとなんの事だと驚くが、提案を聞いて更に驚く。
「ね? グッドアイデアじゃない」
「ラ、ラクシャータさん、本気ですか?」
「とーぜん!!」
ラクシャータはカレンにキセルを向けて不敵に笑った。
「あ~、やっぱり倒れちゃった?」
「すみません。本人がなかなか戻るって言わなくて」
「あの傷で動いたら、当然こうなりますね」
「コイツ自身もわかっていてやってる節があるから尚のこと質が悪いな」
「本当にそうよね。どーせ、気を張ってた我慢していたけど、カレンちゃんの無事を確認して緊張が緩んで一気に来たんでしょう」
「無理を頼んでおいてなんですが、こうなるの当然ですね」
「そうね。それにしても前から思ってたんだけどさぁ。このボーヤ、自分の事になると無頓着過ぎるんじゃなぁい?」
「やはり以前からそうなのか」
「ん。とーぜん」
「痛覚が麻痺してるんじゃないか?」
「それか、加減知らずのおバカちゃんじゃなぁい?」
「そう言う傾向はありますね。とりあえず今は」
「はいはい。医療班ってまだいる? とりあえず医務室に運んでぇ」
眠っている信也は担架で病室へと運ばれていった。
三人と合流した後にキョウトの残党とも合流して物資と逃走資金も補充した黒の騎士団・キョウトの一行は、海中に水没したガウェインを回収すべく神根島近海へと向かう。
その最中、幹部や主要メンバーが集まり話し合いを始める。ちなみに信也はぶっ倒れてまだ起きていないので不参加である。
「で、これから先どうするの~? 生死はともかく“ゼロがもういない”事だけは確定しちゃった訳だし」
寝転がったラクシャータが無気力に深刻な事を確認する。
「桐原公より伝言を頼まれた身としては“今はともかく落ち延びて再起を”との事なので神楽耶様には即座に中華連邦へ亡命しとていただきたいのですが」
「それはーー」
桐原の側近であった矢沢の言葉に神楽耶が答えようとするが、驚いた卜部がそれを遮る。
「ちょっと待ってくれ、藤堂中佐達を見捨てるのか?」
「卜部さん! 貴方はそれでいいかも知れませんが、総力的な兵力だけでなくエース級の機体を見てください! 貴方の月下以外は腕の壊れた紅蓮とパイロットの腕が壊れたカスタムサザーランドしかないのですよ!!」
ディートハルトの発言に、紅蓮のパイロットであるカレンと頭数にすら入れられなかった内藤の二人はかなりイラッとしたが、二人とも話しがこじれるので不満は口にしなかったようだ。
「私は卜部さんと同じ意見です。可能性があるなら仲間を救出しないと……」
「ゼロがいない現状で、ですか? 不可能です、あり得ない!!」
「今すぐには不可能でしょうが、卜部さんやカレンさんの気持ちはわかります。その言い方は如何な物かと思いますが?」
一々嫌味な事を言うディートハルトに神楽耶が釘を刺すが全く気にしている様子はない。
「そもそも、彼女達がゼロを守れていればこのような事態にはならなかったのでは?」
ディートハルトはカレンとC.C.を憎々しげに批難した為に、カレンは少し罪悪感を感じるがC.C.は呆れる。
「今それを言うのか」
「私はどう転んでも今より少しはマシになっていた。と言う疑いようのない事実を申し上げたまでの事でーー」
「ともかく!!」
ディートハルトの発言を同じブリタニア人ではあるファイナーが大きな声で遮る。
「キョウトとしては神楽耶様の身の安全を確保する事を優先します。黒の騎士団としてはどうされるのですか? 組織として方針を決めていただけないと、キョウトも判断ができないのでは? 日本に残って反抗を続けられるのか、共に亡命されるのか、そして、誰が率いられるのか」
ファイナーの問いにしばしの沈黙が流れる。
「確かにキョウトとしても戦闘を指揮する総司令がいないのはーー」
「神楽耶様が総司令ではダメなんですか? そうすればキョウトと黒の騎士団両方を包括的に指揮できます」
当然の事を何故しないのかと首を傾げる内藤の意見を神楽耶が制する。
「皆さんが納得されるのであればそれも一つの方法ではありますが、私では前線に出て戦闘指揮を行う事が難しいです。それでは皆さんの、特に黒の騎士団の方々からの賛同は得られません」
「なるほど」
「キョウト側である我々が出しゃばるのは慎むべきかと」
「そうは言ってもねぇ〜。どうなの、参謀?」
「私が何か言ったとして、皆さんが私に従いますか?」
「一々嫌味を言わないと気が済まないのですか?」
「事実を申し上げたまでの事です」
「黙れ!! ブリタニア人!! 話しが進まないだろ」
イライラしているファイナーと一々陰湿なディートハルトが口論を始めたので矢沢が人種で一括りにして黙らせた。険悪な雰囲気で場の空気が最悪となった。神楽耶が頭を抱え、ラクシャータが呆れ、カレンがどうしたものかと困惑していると、C.C.がため息をついた。
「要は“神楽耶を旗頭に担ぐ”のは全員が了承しているから、黒の騎士団の総司令を決めればいいのだろ?」
「ですからその重責が担える人物がいないと言ってーー」
「私は真田信也を総司令に推挙する」
C.C.がディートハルトの発言を遮って述べた言葉に皆が驚く。
「しかし彼はキョウトの人間だろ?」
「だが、この中ではカレンの次に黒の騎士団の古株でもあるのだろ?」
「え? あっ、言われてみれば確かにーー」
卜部の疑問にC.C.は即答し、カレンもすっかり忘れていた様だ。確かに加入時期だけで言えば黒の騎士団に参加したのは扇グループを除けば最古参の部類でありナリタ戦にも参戦している。勿論、実態はキョウトの人間だが所属の長さで言えば十分に古参である。
「それにキョウトでは軍事責任者なのだろ」
「それは事実です。彼には軍事総裁をお願いしています」
「キョウトで軍事の責任者、黒の騎士団では古株で客将待遇。能力も申し分ない。これ以上の適任はいないだろ?」
C.C.の意見に一同悩む。言われてみれば他に適任がいないような気もするのだが、信也では問題もある。
「でも大丈夫かしらねぇ」
「ん?」
「保護者はいない。怪我が酷くて身動きが取れない。手足となる部下も殆どがインド軍区。黒の騎士団は壊滅状態。あのボーヤに任せて本当に大丈夫?」
「ラクシャータさんの言う通りですよ。信也はメンタルが弱いし、軍を指揮した事だって……」
「メンタルはともかく、軍事指揮は問題ないんじゃないか?」
「でも彼には経験が……」
「え? おい、ちょっと待て」
「彼は経験もなくトウキョウで全軍を指揮してあれだけの事をやってのけたのか?」
「「?」」
トウキョウにいなかったカレンとC.C.には卜部やディートハルトの驚きが理解できない。
「厳密に言うと、“あれ程の大軍を指揮したのは初めて”です。今までは大隊(500-600人程)規模すらなかったのでは?」
「後方・諜報部隊まで入れれば大隊規模の人数ならギリギリあるのではと言った感じです」
「諜報や隠密行動ばかりでしたからね」
「結局、キョウトの軍は総動員で戦闘する機会はなかったですからね」
神楽耶と内藤のやり取りを聞いて黒の騎士団側の皆が驚くがC.C.の推挙は確かに正しいと認識したが、
「キョウトのボーヤが優秀なのは知ってたし、今一番最適なのは理解したけど、怪我で動けないんだから無理じゃなぁい?」
「そうですよ。私は反対です!!」
怪我を理由にラクシャータとカレンは反対する。
「だが、他に適任がいないのだ仕方あるまい」
「心配ではありますが、キョウトと黒の騎士団の両方が納得できるという点では妥当ではないでしょうか?」
「それに、ゼロがいない黒の騎士団からキョウト側に命令されても納得できかねます」
C.C.の妥協案だという意見に今まで黙っていたキョウト諜報部の池田が同意し、桐原の側近矢沢も賛同する。
「傷さえなければ同意なのですが……」
「それに眠っているアイツには桐原さんの事をまだ伝えてないわけだし」
言葉を濁すファイナーに内藤は微妙な表情で杞憂を述べて同意する。
「まずは方針だけ決めさせて療養させる。総司令にしたからといってすぐに戦闘させなければいいだろ」
「彼の性格上難しくないか?」
「大丈夫だ」
「その心は?」
「カレンの泣き落としがある」
「なるほど」
「勝手に泣き落としをする事を決定事項にしないで!」
「まあ、神楽耶が療養を命令し、ラクシャータがアイツに協力しなければいい。ナイトメアの起動キーも私が取り上げておく。これならさすがに大丈夫であろう?」
「ああ~確かにねぇ」
「まあ、療養を優先するのであれば……」
黒の騎士団側の人間は能力と歴の長さで賛成或いは妥協し、信也に近いキョウト側の人間は抑も賛成であった上に療養優先するとの条件附で了承した。残る反対者はカレンだけとなった。
「で、でも彼はーー」
「なんだ? 一番古参のお前が総司令になるか?」
「そ、それは……」
「私はそれでも構わないと思うが、その場合、アイツはお前を守る為に動く、絶対に療養しないぞ」
「うっ」
「療養させる事を条件と致しますので、了承していただけませんか?」
「……わかりました」
C.C.から二重に脅され、神楽耶に説得されてはカレンも意見を引っ込めざる得なくなった。
「それでは、ここにいる皆の総意として彼が目覚めたら総司令への就任を依頼する事とします。ただし、戦闘行為や前線に出るのは怪我の治療が終わってからと致します。これで異論はございませんか?」
神楽耶の言葉に皆がうなずいたり無言で同意する。ただし、卜部が疑問を口にする。
「しかし、彼自身が辞退するんじゃないか?」
「断るようなら私が説得する」
「え? C.C.が?」
「ああ、別に神楽耶から命令してもいいが、説得するなら私に任せろ。」
「……」
「そう身構えるな。何もしない」
信也を守ろうと警戒心全開なカレンにC.C.を笑う。
「で、この後のことは信也が起きてから決めるのか?」
「その方が無難じゃなーい?」
誰を指揮官にするかは本人不在の欠席裁判で決まったので矢沢が手を上げて主張する。
「では今のうちに確認していただきたい事があります」
「ええ? そろそろガウェインをサルヴェージする準備したいからパスしちゃダメぇ?」
「ラクシャータ博士にも関係がある事ですのでしばらくお付き合い下さい」
「えーーー………」
「皆さんの中からブリタニアよりテロリストとして指名手配された方がおられます」
そう言うと矢沢は手配書をスクリーンに映した。黒の騎士団ではディートハルト、ラクシャータ、カレン、卜部等、キョウトでは神楽耶、矢沢等が指名手配されていた。カレンは首を傾げて思わず尋ねる。
「これだけですか?」
「はい。今のところは今回の反乱で指名手配されたのはこのメンバーです。あとはユーフェミアはブリタニア側が“皇籍抹消の上で処刑した”と公式発表をしております」
「完全に嘘じゃないですか」
「あくまでユーフェミア個人が起した行動であり“国家としての遺志ではない”と内外に知らしめて混乱を鎮圧する為の政治的発表でしょう」
「世間が信じるかどうかではなく国家としての立場を明確にする必要があるでしょうから当然ですね」
「はい」
「それにしても、キョウトの方々が少なくないですか?」
「六家の方々は“神楽耶様を除き捕まる或いは捕まっている”でしょうから、残りは神楽耶様や“情報と金を持ち逃げした”私ぐらいですね」
「それもそうですわね」
矢沢と神楽耶は何のこともないように述べているが知らない人間からすれば驚きであり疑問だが、彼はそれらを無視し続ける。
「それから、もう一つ見てもらいたい物がありまして」
「もう一つ?」
「個人的に注目しているのは此方です」
「え? 行方不明者リスト?」
「ええ、これほどの規模の反乱、当然ながら生死不明の行方不明者が大量にいます。まあ、ブリタニア側にとっての、ですが。それはともかく、とりあえずみてください」
皆が促されるままにリストを見るが、
「え?」
「え? あれ?!」
リストのかなり最初の方をみてすぐに異常に気づく。
「これ、なんでだと思いますか?」
「さあねえ、けど、これでいい療養先が見つかったじゃな~い」
皆がラクシャータの言葉に「え?」っとなんの事だと驚くが、提案を聞いて更に驚く。
「ね? グッドアイデアじゃない」
「ラ、ラクシャータさん、本気ですか?」
「とーぜん!!」
ラクシャータはカレンにキセルを向けて不敵に笑った。