「ニナ=クラルヴァインだ。祖母が日本人なので日本語には多少心得がある。これからよろしく」

艶めく黒髪のセミショートに、晴天の澄んだ空の様な青い眼。

右目のつりあがった目尻の下には黒子が一つあり、神秘的な雰囲気を纏っているかのようだ。

(綺麗だな……)

クラス全員がそう思った。

日本人離れした容姿に誰もが見惚れる。

「後ろの空いてる席に座ってくれ」

ニナは綱吉から2つほど後ろの席まで歩く。綱吉の横を通り過ぎた時に、少しいい香りがした。

(なんというか、同じ中学生には見えない)

朝のHRが終わる早速ニナの周りに人が群がる。

「ニナさん、良かったら学校の案内しようか？」

「あ、ずるい！ 私も誘おうと思ったのに！」

「ニナさん、彼氏いますか！？」

「カレシはいないな。今まで誰かと付き合うような機会がなかった」

その言葉にクラスの男子が湧き上がった。

「一気に人気者だな。ニナさん」

「クラスの奴らが浮かれすぎなんだよ」

「獄寺が転校してきた時もこんぐらいはしゃいでたって。なぁツナ」

「そ、そうだね」

「少しいいか？」

と、三人で話していた時にニナが声をかけてきた。

「よければ、校舎の案内をしてくれないか？」

ニナの目は真っ直ぐ綱吉を見ている。

「え、ええええ！？ 俺が！？」

一気に周囲の目が綱吉に注がれる。

「なんでダメツナが？」

「悔しい……」

「ニナさんとどういう関係なのよ」

(て、敵意が……！)

「駄目かな？」

「駄目に決まってんだろ。十代目に何するつもりだ」

綱吉とニナの間に獄寺が割って入る。

獄寺はキッとニナを睨みつけるが、
ニナは全く怯えた様子も見せない。

少し困った様子で綱吉を見る。

「ジュウダイメって言うのは、君の名前？」

「え、いや！ 違うよ！ 俺は沢田綱吉。十代目って言うのは……あだ名、みたいなものっていうか、アハハ……」

「……そうか。よろしくツナヨシ。そこの二人は？」

「俺は山本武な。ツナの友達だ」

「てめえに語る名前はねぇ」

「ご、獄寺君！ クラスメイトなんだから、自己紹介しないと！」

「十代目がそう仰るなら……。獄寺隼人。いずれ十代目の右腕になる存在だ。この方に手ぇ出したらタダじゃおかねぇからな」

「よろしく。タケシ、ハヤト。ところで、そのジュウダイメというのは何だ？」

「この方はな、いずれボンゴレファミリーの跡を……」

「ちょ、ストップストップ！ 何言ってんの！」

「あ、ちなみに俺もツナの右腕候補な」

「なんだとテメェ！」

「……ふふっ。日本ではマフィアの真似をする遊びが流行っているのか」

(こ、この人もマフィアごっこだって思ってる！)

「だがあまりやりすぎると、本物のマフィアが襲ってくるかもしれないぞ？」

「そ、そうだね。気をつけるよ。ア、アハハハ……」