その後は綱吉達と別れて帰った。

「あ」

明日の嵐戦で、ベルフェゴールについて知っていることを獄寺に伝えようと思っていたのだ。

すっかり忘れてしまっていた。今から戻ろうにも随分前に別れてしまったから、もう家についているかもしれない。

「明日でいいか……」

学校には来るだろう。その時に伝えればいいだろうか。

「…………ニナ」

「！？」

不意に後ろから気配を感じた。だが気付いた時にはもう遅い。

「また会えて嬉しいよ」

片手で口を塞がれもう片方の手で体をキツく縛られる。

「ヴァ、ヴァル……！」

「ああ、ああ。おまえがいなくなってから、三ヶ月十五日八時間経った。本当に気が狂いそうだった」

とっくに狂ってるくせに。そう言いたかったが口を塞がれているので出来ない。

「どうしておまえがそっち側についているのか分からないが……今なら間に合う。ヴァリアーに戻れ」

ニナは思いっきり手のひらを噛んだ。

突然のことで驚いたヴァレンティーンの手の力が緩んだ。

だが緩んだといっても拘束から逃れられたわけではなかった。

「誰が戻るかクソ兄貴……！」

そう叫んだ瞬間、背筋がゾクッとした。

ヴァレンティーンの表情は恐ろしく無であり、目がスッと細くなる。

地雷を踏んだ。今までの経験でそう感じた。

「言葉遣いはちゃんとしろと何度も言っただろう？ ……駄目だな。一から教え直さないと」

「ヴッ……」

強く腹を殴られた。一瞬息が止まり、そのまま意識を失う。

「……今なら、まだ間に合うから」

　　　～

「あ」

家への帰路、綱吉は思い出したように呟いた。

「どうしました？」

「いや、ニナって元々ヴァリアーにいたんだし、明日の対戦相手のこと教えて貰えたら良かったなって」

「そーいやそうだな。アイツ、スクアーロのこともよく知ってたし」

「なんでおまえはアイツと仲良くしてんだよ！」

「だって俺の稽古に付き合って貰ってたしな。仲間なんだからいいだろ？」

「……ケッ。アイツに頼らなくても、俺はあんな前髪野郎には負けませんよ！」

そう豪語する獄寺だったが、内心穏やかではなかった。

（まだアレも完成してねぇし……何ちんたらしてんだ俺は！）

「では、俺は明日に備えて特訓してきます！　おやすみなさい、十代目！」

「う、うん。おやすみ獄寺君」

急ぎ足で駆けていく獄寺を、綱吉は少し不安そうに見つめる。

（ああ言っていたけど、やっぱりちょっとでもニナから聞いた方がいいよな……明日、学校に来たら聞いてみよう）

だが、明日が来てもニナが学校に来ることはなかった。