血に濡れた日々。助けてくれと泣き叫ぶ声。傍らで泣く子供。

一体、何のためにこの仕事をしていたのか。何のために戦っているのか。何のために生きているのか。

分からない。もう、疲れた。これが潮時なのではないだろうか。

(……逃げよう)


「Leben Sie wohl.(さようなら)」

たった一言の書き置きを残して、少女は去った。

出て行ったのはいいけれど、この先どうしようか。

しばらく暮らせるだけの金はある。足りなくなったら適当に稼げばいい。

だがこれからずっとこの生活を送っていくのかと考えれば、いささか退屈だ。

見つからずに、どこか自然のある所へ暮らせればいい。だけど退屈はする。

さて、どうしたものか。

逃げ出してから3ヶ月経った頃、一つの情報が流れ込んできた。

――日本に逃走した六道骸が捕まった――

復讐者の牢獄から六道骸と仲間が逃走したという事は知っていた。

しかし、六道骸を倒したというのが、なんと日本にいる次期ボンゴレ10代目候補だった。

十四歳の、自分と同じ歳で。

「サワダツナヨシ……」

次第に沢田綱吉への興味が湧いてくる。

(日本か。行ったことはないな。この機会に行くのもいいかもしれない)

そう思うや否や、少女は偽造パスポートと少しの荷物を早急に用意した。

この場所も、そろそろ隠れるのに限界は来ていた。同盟ファミリーにも迷惑をかけるわけにはいかない。

正直、この家の家主もあの人と同じくらい過保護だから勝手に消えたらそれはもう大慌てになるだろう。

「……まあ、いいか」