第4話
夢小説設定
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「監督が俺を呼んでる……これはもうプロポーズ」
「いいから行ってこい」
いづみに呼ばれた真澄はヘッドフォンを外しソファから勢いよく立ち上がる。
夕飯の用意をしていた綴は呆れたようにそれを見ていた。
真澄は綴を無視して玄関へと向かう。
「監督。人前でプロポーズとか大胆」
「違うから!」
「恥ずかしがるアンタも可愛い」
「違うって。ほら、真澄君のクラスメイトが忘れ物届けに来てくれたんだよ」
そう言うと、真澄は初めて自分といづみ以外に人がいることに気づく。
頭を抱える至と、呆気にとられている一人の少女。
どこかで見たことがあるような。確か前に放課後で少し話した記憶がある。
「……瀬奈って言ったっけ」
「え」
瀬奈。そう言っただけで彼女の表情はとても赤くなった。
「あ、ああ! うん、名前覚えてくれてたんだね! それで、これ忘れ物。明日提出だから」
サッとすぐに数学のワークを渡す。そういえば、授業中にそんなことを教師が言っていたような気もする。
「ほら、真澄君お礼」
「……どうも」
「ううん。じゃあ、私そろそろ帰るから……」
どこか元気をなくしたような瀬奈に、慌てて至はその腕を掴む。
「待って。もう暗いし送る」
「だ、大丈夫です」
「大丈夫じゃない。ごめん監督、この子送っていくから」
「は、はい」
至は決して瀬奈を掴む手を離すことなく、それでいて乱暴には扱わずに引っ張って行く。
外に出ると至の車があった。至は車のキーを取り出し鍵を開ける。
「乗って」
助手席側のドアを開けた。流石にここまでくると拒否なんてできない。
渋々と瀬奈は車に乗る。至も運転席側に乗り、運転をする。
沈黙が続いた。瀬奈も自分から話そうとしないし、至も運転に集中していた。
しばらく経った後、瀬奈がポツリポツリと呟き出す。
「……知ってたんですか」
「まぁね。隠すつもりはなかったけど」
「最初から絶対に負ける分かってたなら、絶対好きにならなかったのに……」
「それは分からないよ」
「なんでそんなことが言えるんですか……!」
ポタリ、ポタリ。
堪えていた涙が一つ二つとこぼれ落ちていく。
「いくら真澄が監督さんを好きでも、監督さんがどう思っているかまでは分からないからね。監督さんは真澄のアレを若気の至りだろうと考えているし」
だから諦める必要はないと。
(でも、あんなに真剣な表情であの人を見ていたのに)
振り向いて欲しいとは思っていない。だけど真澄のことを好きになることだけは許して欲しかった。
結果、それすら許して貰えない。
「俺はさ、瀬奈さんには諦めて欲しくないよ」
「どうしてそこまで世話を焼くんですか。至さんにとって私は劇団のファンという立ち位置にすぎないのに」
「俺が子供だったとき、いろんなことを諦めてたから」
それはどういう意味だろう。だがその時の至の切なげな表情を見て、瀬奈は聞くのをやめた。
時折そうだ。至は過去の話をするときにとても辛い顔をするのだ。
その過去について容易に聞くことができるほどの仲ではないと瀬奈は思っている。
「今からなんでも諦めちゃうとさ、俺みたいに大人になってもすぐ逃げようとする人間になるよ」
「でも、至さんは逃げなかったからこの劇団にいるんでしょう?」
「……そうだね。大人になってもやり直しはきくだろうけど、そうなるまでにだいぶ時間がかかった」
さて、私はどうしたいのだろうか。
もとより叶うはずのない恋ではあったけれど。
このまま諦めていつも通りの日々に戻るのか。
クラスメイトに良いように使われて、特に当たり障りのない日々を。
「着いたよ」
至は瀬奈の家の最寄り駅に着くと車を止めた。
「ありがとうございます」
「うん。今日はもう早く寝な」
車のドアを閉めると、至は軽く瀬奈に手を振り車を走らせる。
(……帰ろう)
「いいから行ってこい」
いづみに呼ばれた真澄はヘッドフォンを外しソファから勢いよく立ち上がる。
夕飯の用意をしていた綴は呆れたようにそれを見ていた。
真澄は綴を無視して玄関へと向かう。
「監督。人前でプロポーズとか大胆」
「違うから!」
「恥ずかしがるアンタも可愛い」
「違うって。ほら、真澄君のクラスメイトが忘れ物届けに来てくれたんだよ」
そう言うと、真澄は初めて自分といづみ以外に人がいることに気づく。
頭を抱える至と、呆気にとられている一人の少女。
どこかで見たことがあるような。確か前に放課後で少し話した記憶がある。
「……瀬奈って言ったっけ」
「え」
瀬奈。そう言っただけで彼女の表情はとても赤くなった。
「あ、ああ! うん、名前覚えてくれてたんだね! それで、これ忘れ物。明日提出だから」
サッとすぐに数学のワークを渡す。そういえば、授業中にそんなことを教師が言っていたような気もする。
「ほら、真澄君お礼」
「……どうも」
「ううん。じゃあ、私そろそろ帰るから……」
どこか元気をなくしたような瀬奈に、慌てて至はその腕を掴む。
「待って。もう暗いし送る」
「だ、大丈夫です」
「大丈夫じゃない。ごめん監督、この子送っていくから」
「は、はい」
至は決して瀬奈を掴む手を離すことなく、それでいて乱暴には扱わずに引っ張って行く。
外に出ると至の車があった。至は車のキーを取り出し鍵を開ける。
「乗って」
助手席側のドアを開けた。流石にここまでくると拒否なんてできない。
渋々と瀬奈は車に乗る。至も運転席側に乗り、運転をする。
沈黙が続いた。瀬奈も自分から話そうとしないし、至も運転に集中していた。
しばらく経った後、瀬奈がポツリポツリと呟き出す。
「……知ってたんですか」
「まぁね。隠すつもりはなかったけど」
「最初から絶対に負ける分かってたなら、絶対好きにならなかったのに……」
「それは分からないよ」
「なんでそんなことが言えるんですか……!」
ポタリ、ポタリ。
堪えていた涙が一つ二つとこぼれ落ちていく。
「いくら真澄が監督さんを好きでも、監督さんがどう思っているかまでは分からないからね。監督さんは真澄のアレを若気の至りだろうと考えているし」
だから諦める必要はないと。
(でも、あんなに真剣な表情であの人を見ていたのに)
振り向いて欲しいとは思っていない。だけど真澄のことを好きになることだけは許して欲しかった。
結果、それすら許して貰えない。
「俺はさ、瀬奈さんには諦めて欲しくないよ」
「どうしてそこまで世話を焼くんですか。至さんにとって私は劇団のファンという立ち位置にすぎないのに」
「俺が子供だったとき、いろんなことを諦めてたから」
それはどういう意味だろう。だがその時の至の切なげな表情を見て、瀬奈は聞くのをやめた。
時折そうだ。至は過去の話をするときにとても辛い顔をするのだ。
その過去について容易に聞くことができるほどの仲ではないと瀬奈は思っている。
「今からなんでも諦めちゃうとさ、俺みたいに大人になってもすぐ逃げようとする人間になるよ」
「でも、至さんは逃げなかったからこの劇団にいるんでしょう?」
「……そうだね。大人になってもやり直しはきくだろうけど、そうなるまでにだいぶ時間がかかった」
さて、私はどうしたいのだろうか。
もとより叶うはずのない恋ではあったけれど。
このまま諦めていつも通りの日々に戻るのか。
クラスメイトに良いように使われて、特に当たり障りのない日々を。
「着いたよ」
至は瀬奈の家の最寄り駅に着くと車を止めた。
「ありがとうございます」
「うん。今日はもう早く寝な」
車のドアを閉めると、至は軽く瀬奈に手を振り車を走らせる。
(……帰ろう)
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