第4話
夢小説設定
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「……困った」
そう。瀬奈は今本当に困っている。
今目の前にあるのは数学のワーク。今日出された課題で明日には提出しなければいけない。
これは瀬奈のワークではない。そう、この教室に誰か置き忘れてしまったのだ。
その相手は。
「……碓氷君か」
丁寧に碓氷真澄と書かれている。おかげで誰の持ち物なのかは分かったが、肝心なのはこの後だ。
(どうやって届けよう)
確か今はMANKAIカンパニーの寮で暮らしているらしい。
調べたら場所も分かるだろう。けど、
(絶対アンタ誰とか言われるしそもそも学校以外で会うのとか無理!)
だけどこれは明日には出さなくてはいけない。
ここは私情を抑えて渡すべきだろう。これはクラスメイトとしての役割だ。
……そう納得させて、意を決する。
「とりあえず、天鵞絨駅まで行こう」
MANKAI劇場に誰か関係者がいたらその人に渡すのもアリだ。どうか本人に会わなくて済みますようにと祈りながら電車に乗る。
MANKAI劇場に行くのはこれで二度目。そういえば今度も新しいメンバーで公演を行うらしい。
(観に行こうかな。どうしようかな、チケット取れたらいいけど)
そういえば、至と出会ってから一ヶ月以上経つ。
今まで瀬奈が出会ったことのない人。
身近に両親以外の大人に会ったことがないというのもあるだろう。
(廃課金ゲーマーだけど。なんか私が想像していた大人像と大きくかけ離れてるけど)
それでもたまにやっぱりこの人は大人だなと感じるときもある。
「最初、この劇団に入った理由が寮で生活したら浮いた金でゲームにつぎ込めるからだったんだよね。でも他の皆は思っていた以上に真剣に稽古をしていたから、中途半端な俺はさっさとやめた方がいいと思ってやめようとしていたんだ」
「でも、監督や皆に止められて。とりあえずロミジュリまではやろうってことになった」
「でも、まだ劇団に入ってますよね」
「そうそう。初めてなんだ。ゲームより面白いものがあるなんて。やめなくてよかった」
あれはいつ頃の会話だったか。だがあの言葉は紛れもなく本心だった。
彼が会社ではどのように振る舞っているかは知らない。瀬奈はいつもゲームをしている至の姿しか知らない。
「ここが劇場だけど……」
さて、寮はどこにあるのだろうか。
もう日も落ちた。早くしないと家に帰るのが遅くなる。
(誰か知ってる人がいればいいのにな)
「……瀬奈さん?」
「い、至さん?」
これは、偶然と言っていいのだろうか。
仕事帰りなのだろう、スーツを着た至が目の前にいる。
(偶然にしてはタイミングがよすぎないか)
「どうかした? 夏組の公演は二週間後だけど」
「あ、いや、違うんです。碓氷君が明日提出のワークを学校に忘れたみたいで」
「そう。じゃあ来る?」
何が? と聞く前に至は歩いて行く。
これはついてこいという意味だろう。慌てて瀬奈は後をついていく。
劇場から少し離れた場所に、寮はあった。
中々の大きさで思わず瀬奈は呆気にとられる。
「入って」
「あ、どうも。お邪魔します……」
少し緊張しながら寮に入る。
玄関にはたくさんの並べられた靴。バタン、とドアの閉まる音が響くと向かい先から誰かが出てきた。
「至さん、お帰りなさい!」
女性だった。髪の長い、恐らく至と同年代であろう人。
「監督さん? 今日帰るの遅いとか言ってなかった?」
「予定よりも早くなっちゃって……。それで、その子は?」
「あ、いや。真澄のクラスメイト。アイツ学校に課題忘れたらしくて、届けに来たって」
「え!? ありがとうございます。真澄君呼んでくるね」
「ま、待って……」
ください。と言う前にいづみは消えてしまった。
別に本人に会わなくていいから渡してくれればよかったのに。
それに至もどこか焦っているような。
(心の準備が……!)
そう。瀬奈は今本当に困っている。
今目の前にあるのは数学のワーク。今日出された課題で明日には提出しなければいけない。
これは瀬奈のワークではない。そう、この教室に誰か置き忘れてしまったのだ。
その相手は。
「……碓氷君か」
丁寧に碓氷真澄と書かれている。おかげで誰の持ち物なのかは分かったが、肝心なのはこの後だ。
(どうやって届けよう)
確か今はMANKAIカンパニーの寮で暮らしているらしい。
調べたら場所も分かるだろう。けど、
(絶対アンタ誰とか言われるしそもそも学校以外で会うのとか無理!)
だけどこれは明日には出さなくてはいけない。
ここは私情を抑えて渡すべきだろう。これはクラスメイトとしての役割だ。
……そう納得させて、意を決する。
「とりあえず、天鵞絨駅まで行こう」
MANKAI劇場に誰か関係者がいたらその人に渡すのもアリだ。どうか本人に会わなくて済みますようにと祈りながら電車に乗る。
MANKAI劇場に行くのはこれで二度目。そういえば今度も新しいメンバーで公演を行うらしい。
(観に行こうかな。どうしようかな、チケット取れたらいいけど)
そういえば、至と出会ってから一ヶ月以上経つ。
今まで瀬奈が出会ったことのない人。
身近に両親以外の大人に会ったことがないというのもあるだろう。
(廃課金ゲーマーだけど。なんか私が想像していた大人像と大きくかけ離れてるけど)
それでもたまにやっぱりこの人は大人だなと感じるときもある。
「最初、この劇団に入った理由が寮で生活したら浮いた金でゲームにつぎ込めるからだったんだよね。でも他の皆は思っていた以上に真剣に稽古をしていたから、中途半端な俺はさっさとやめた方がいいと思ってやめようとしていたんだ」
「でも、監督や皆に止められて。とりあえずロミジュリまではやろうってことになった」
「でも、まだ劇団に入ってますよね」
「そうそう。初めてなんだ。ゲームより面白いものがあるなんて。やめなくてよかった」
あれはいつ頃の会話だったか。だがあの言葉は紛れもなく本心だった。
彼が会社ではどのように振る舞っているかは知らない。瀬奈はいつもゲームをしている至の姿しか知らない。
「ここが劇場だけど……」
さて、寮はどこにあるのだろうか。
もう日も落ちた。早くしないと家に帰るのが遅くなる。
(誰か知ってる人がいればいいのにな)
「……瀬奈さん?」
「い、至さん?」
これは、偶然と言っていいのだろうか。
仕事帰りなのだろう、スーツを着た至が目の前にいる。
(偶然にしてはタイミングがよすぎないか)
「どうかした? 夏組の公演は二週間後だけど」
「あ、いや、違うんです。碓氷君が明日提出のワークを学校に忘れたみたいで」
「そう。じゃあ来る?」
何が? と聞く前に至は歩いて行く。
これはついてこいという意味だろう。慌てて瀬奈は後をついていく。
劇場から少し離れた場所に、寮はあった。
中々の大きさで思わず瀬奈は呆気にとられる。
「入って」
「あ、どうも。お邪魔します……」
少し緊張しながら寮に入る。
玄関にはたくさんの並べられた靴。バタン、とドアの閉まる音が響くと向かい先から誰かが出てきた。
「至さん、お帰りなさい!」
女性だった。髪の長い、恐らく至と同年代であろう人。
「監督さん? 今日帰るの遅いとか言ってなかった?」
「予定よりも早くなっちゃって……。それで、その子は?」
「あ、いや。真澄のクラスメイト。アイツ学校に課題忘れたらしくて、届けに来たって」
「え!? ありがとうございます。真澄君呼んでくるね」
「ま、待って……」
ください。と言う前にいづみは消えてしまった。
別に本人に会わなくていいから渡してくれればよかったのに。
それに至もどこか焦っているような。
(心の準備が……!)