第5話
夢小説設定
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「……」
かすかな足の痛みを、咲良は気のせいだと振り切る。
「大丈夫。たいしたことない」
そう言い聞かせて試合に集中する。
だが
(いっ……!)
ボールを受け取り走ろうとした咲良だが、足の痛みのせいで動けなかった。
「しまっ」
その隙を狙って敵チームの男子にボールを取られてしまう。
一点。これで同点となってしまった。
「ごめん」
「いや、今のは仕方ないって」
「そうそう」
落ち込む咲良をクラスメイトは励ます。
(大丈夫。私は出来る)
今度はあまり前に出ないように、足をかばいつつ周りを見る。
そう何度もシュートが決まるわけではないと考えた咲良は出来るだけゴール近くの味方にパスだけをしようと考えた。
「如月さん!」
ボールを受け取る。しかし走り出した瞬間また足に痛みが広がった。
「……っ!」
痛みを堪えて走った。すぐさまボールを奪おうと敵の男子が向かってくる。
「如月さん! パス」
数メートル先にクラスメイトがいた。
すかさず咲良はそちらにボールを渡すと敵側の男子達はすぐに咲良から離れていった。
(後どれくらいで試合が終わるの……)
チラリとタイマーを見ると後一分弱。
これならなんとか持ち堪えることが出来そうだ。
――ビーーー!
鋭い笛の音が鳴り響いた。一体誰が笛を鳴らしたのかとコートにいる全員が辺りを見回す。
「交代だ。如月」
笛を鳴らしたのは土方だった。
「どうしてですか。私はまだいけます」
「いいから交代だ。如月の代わりは誰だ」
俺です。と事前に入れ替わりメンバーを決めてあったクラスメイトが手をあげる。
「保健室に連れて行く。試合は続けてくれ」
「な、なんで……私はどこも怪我なんてしていません」
「いいから、さっさと行くぞ」
そう言って土方は咲良を抱えて。抱えて?
「うえ? ちょ、先生……」
おおーという歓声が上がった。千鶴は口元を両手で覆って恥ずかしそうに見ている。
その抱え方は、いわゆるお姫様だっこと呼ばれている物で。
軽々と咲良を抱える土方を辺りはザワザワと騒ぎながら見ている。
「大人しく言う事を聞かなかった罰だ」
「罰って」
恥ずかしすぎて顔を上げることが出来ない。もうバレているがせめて見られないようにと顔をうつむかせる。
「山南さん。包帯と氷用意してくれ」
「おや。どうしました」
山南と呼ばれた保険医は土方と抱えられた咲良を見て少し驚く。
「随分と大胆ですね」
「……とにかく、捻挫してるから早くやってくれ」
やっと土方は咲良をベッドに降ろした。
それから山南は咲良の足を枕の上に置き、足首を包帯でテーピングをする。
それからたくさん氷の入った袋を足首の上で固定させた。
氷の冷たさが包帯越しからでも伝わってくる。
「冷たいでしょうけど、我慢してくださいね。十五分経ったら外して結構です」
その手際の良さに関心した。運動部の活動が盛んだから、こういった怪我の対応に慣れているのだろうか。
「ここには血気盛んな人達がたくさんいますからね。ここに誰も来ない日なんてそうありません」
咲良の心を読んだかのような返答に、思わずドキリとした。
「ったく、怪我してるならすぐに言え。悪化したらどうする」
「後一分で試合も終わるから、それまで我慢すれば良かったんです」
「馬鹿。それで次の試合も我慢する気か?」
図星で何も言えない。何も言わず俯いたままでいると、
「いいか。全部がおまえの思い通りになると思うなよ。あの時誰かが止めなきゃおまえの怪我はもっと酷い事になっていた」
「そ、そんなの分かっています」
「前に言っただろう。頑張らなくて良いときもあると」
――勝つときは勝つし、負けるときは負ける。一人で頑張ったってどうにもならないときはあるんだ。だからあまり頑張るな
放課後、土方が言っていた言葉を思い出した。
咲良は結果に囚われすぎて今回のようなことになってしまった。
(自業自得、か)
「……すみませんでした」
「謝罪はクラスメイトにしろ。……もう足は大丈夫か」
あれから十五分経ったので試しに氷を取ってみる。
きちんと丁寧にテーピングされているおかげか、さほど痛みはない。
「どうする。見学は絶対だがまだ試合は終わってないだろう」
「生徒会の仕事があるので行きます」
「風間君のような人が上だと、下は大変ですね」
「そうですね」
全くもってその通りだから、同意の言葉しか言えなかった。
今度は抱えこそしなかったがゆっくり歩く咲良の歩調に合わせて土方は歩いて行く。
やはり優しい人だと思った。少し強引ではあるが。
――全部がおまえの思い通りになると思うなよ
『あの人』みたいに、全ては自分の思うがままにいくと信じて疑わないあの人みたいにはなりたくなかった。
だがいつの間にか考え方が影響されていると気づき、腹立たしく思う。
「……本当、ムカつく」
かすかな足の痛みを、咲良は気のせいだと振り切る。
「大丈夫。たいしたことない」
そう言い聞かせて試合に集中する。
だが
(いっ……!)
ボールを受け取り走ろうとした咲良だが、足の痛みのせいで動けなかった。
「しまっ」
その隙を狙って敵チームの男子にボールを取られてしまう。
一点。これで同点となってしまった。
「ごめん」
「いや、今のは仕方ないって」
「そうそう」
落ち込む咲良をクラスメイトは励ます。
(大丈夫。私は出来る)
今度はあまり前に出ないように、足をかばいつつ周りを見る。
そう何度もシュートが決まるわけではないと考えた咲良は出来るだけゴール近くの味方にパスだけをしようと考えた。
「如月さん!」
ボールを受け取る。しかし走り出した瞬間また足に痛みが広がった。
「……っ!」
痛みを堪えて走った。すぐさまボールを奪おうと敵の男子が向かってくる。
「如月さん! パス」
数メートル先にクラスメイトがいた。
すかさず咲良はそちらにボールを渡すと敵側の男子達はすぐに咲良から離れていった。
(後どれくらいで試合が終わるの……)
チラリとタイマーを見ると後一分弱。
これならなんとか持ち堪えることが出来そうだ。
――ビーーー!
鋭い笛の音が鳴り響いた。一体誰が笛を鳴らしたのかとコートにいる全員が辺りを見回す。
「交代だ。如月」
笛を鳴らしたのは土方だった。
「どうしてですか。私はまだいけます」
「いいから交代だ。如月の代わりは誰だ」
俺です。と事前に入れ替わりメンバーを決めてあったクラスメイトが手をあげる。
「保健室に連れて行く。試合は続けてくれ」
「な、なんで……私はどこも怪我なんてしていません」
「いいから、さっさと行くぞ」
そう言って土方は咲良を抱えて。抱えて?
「うえ? ちょ、先生……」
おおーという歓声が上がった。千鶴は口元を両手で覆って恥ずかしそうに見ている。
その抱え方は、いわゆるお姫様だっこと呼ばれている物で。
軽々と咲良を抱える土方を辺りはザワザワと騒ぎながら見ている。
「大人しく言う事を聞かなかった罰だ」
「罰って」
恥ずかしすぎて顔を上げることが出来ない。もうバレているがせめて見られないようにと顔をうつむかせる。
「山南さん。包帯と氷用意してくれ」
「おや。どうしました」
山南と呼ばれた保険医は土方と抱えられた咲良を見て少し驚く。
「随分と大胆ですね」
「……とにかく、捻挫してるから早くやってくれ」
やっと土方は咲良をベッドに降ろした。
それから山南は咲良の足を枕の上に置き、足首を包帯でテーピングをする。
それからたくさん氷の入った袋を足首の上で固定させた。
氷の冷たさが包帯越しからでも伝わってくる。
「冷たいでしょうけど、我慢してくださいね。十五分経ったら外して結構です」
その手際の良さに関心した。運動部の活動が盛んだから、こういった怪我の対応に慣れているのだろうか。
「ここには血気盛んな人達がたくさんいますからね。ここに誰も来ない日なんてそうありません」
咲良の心を読んだかのような返答に、思わずドキリとした。
「ったく、怪我してるならすぐに言え。悪化したらどうする」
「後一分で試合も終わるから、それまで我慢すれば良かったんです」
「馬鹿。それで次の試合も我慢する気か?」
図星で何も言えない。何も言わず俯いたままでいると、
「いいか。全部がおまえの思い通りになると思うなよ。あの時誰かが止めなきゃおまえの怪我はもっと酷い事になっていた」
「そ、そんなの分かっています」
「前に言っただろう。頑張らなくて良いときもあると」
――勝つときは勝つし、負けるときは負ける。一人で頑張ったってどうにもならないときはあるんだ。だからあまり頑張るな
放課後、土方が言っていた言葉を思い出した。
咲良は結果に囚われすぎて今回のようなことになってしまった。
(自業自得、か)
「……すみませんでした」
「謝罪はクラスメイトにしろ。……もう足は大丈夫か」
あれから十五分経ったので試しに氷を取ってみる。
きちんと丁寧にテーピングされているおかげか、さほど痛みはない。
「どうする。見学は絶対だがまだ試合は終わってないだろう」
「生徒会の仕事があるので行きます」
「風間君のような人が上だと、下は大変ですね」
「そうですね」
全くもってその通りだから、同意の言葉しか言えなかった。
今度は抱えこそしなかったがゆっくり歩く咲良の歩調に合わせて土方は歩いて行く。
やはり優しい人だと思った。少し強引ではあるが。
――全部がおまえの思い通りになると思うなよ
『あの人』みたいに、全ては自分の思うがままにいくと信じて疑わないあの人みたいにはなりたくなかった。
だがいつの間にか考え方が影響されていると気づき、腹立たしく思う。
「……本当、ムカつく」