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プロローグ

 「ただいまー」

陽もだいぶ傾いてきた頃。同伴していた美月の親に、自家用車で送られてきた歩夢は、家の戸をがらあっ、と開けた。

「おかえりなさい。『いずも』どうだった?」

出迎えたのは、妹の桜だった。どうやら母は、買い物か何かに行っているようだ。

「すごいでかくて、最初見たときは壁かと思った。なんかエレベーターがあるんだけどさ、それもどうやって動かすんだ!ってぐらい大きかったんだよ」

思ったことを素直に言った。

「そりゃすごいね。でも興奮してるとこ悪いけど、明日から神社で調べものするんじゃないの?」

この妹らしからぬ態度。なんで急に話を変えるんだ、という文句は言わずにしまっておいた。こういうのは慣れている。

「うんまあそうだけど」

「私今言ったこと全部興味ないし。ただ兄ちゃんをからかっただけだよ」

そういたずらっぽく桜が言うと、タッタッタ、っと足音をたてて、彼女は逃げるように自室へ走っていった。

「……そのうちわかってくれればいいんだけどな」

一人残された歩夢はそう呟くと、リュックサックを背負い直してから階段を上がり、自室へと向かった。

 自衛隊を調べるはよいが、どう調べようか。ふとグループでの会話を思い出した。インターネットなら、時間がそれほどかからないのでいいかもしれない。図書館で調べるのは、時間がないので見送り。美月に資料を借りることはできるか?必要があれば、予備自衛官である父にも話を聞こう。とりあえず早めに終わらせたいので神社調べと同時進行にしようか。学習机の前に座ると、途端に勉強モードになる。大体が計画できたところで、ノートパソコンを開き、検索エンジンに繋げた。

 ちょうどそのとき、大粒の雫が窓ガラスを叩く音が聞こえた。
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