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神域の男、鬼神、百年の一人の天才
誰もが羨むような名声を欲しいままにして裏社会を生きてきた男、赤木しげる。
人々から尊敬され、崇拝される存在の彼は帰宅してくると──とても甘えたになる。
「名前〜」
「おかえりなさい、赤木さん」
玄関まで迎えに行くと、彼はスーツに皺ができてしまうのにも構わず、私の名前を呼んでぎゅっと抱きつくので、私も彼を抱擁する。
こういう時の赤木さんは、大抵代打ちが終わり組の人達と少し過ごして帰ってきた時だ。
彼は私の肩に顔を押し付け、すぅっと深く息を吸うと、少し息を止めて私から出ている″癒し成分″なるものを体に染み込ませると、息を吐いた。
それから彼は何を言う訳でもなく私を抱きしめ続け、体温を共有する。
「赤木さん、もうすぐご飯できますから……そろそろ離れてくださいね」
「嫌だ、離れねえ」
「……もう、我儘言わないで」
そんな他愛のない会話をして、赤木さんを抱きしめ、背中を愛撫しながらリビングへと移動して、落ち着きやすいように座るも赤木さんの抱擁は収まるどころか強くなるばかり。
きっと、私がぬいぐるみだったら今頃くちゃくちゃになって、変な形になっているかもしれない。
縋るような、置いていかれたくないような──それでいて穏やかで、心の底から満たされている彼の抱擁に、私は母親にでもなった気分だ。子供にしては大きいけれど。
赤木さんがどうしてこうなるのか、その理由を私は尋ねたことがある。
この神様のような人はたくさんの人達から求められ、崇められ、尊敬され、慕われる事に大層疲れてしまうのだと言う。
かと言って彼らのその感情を無碍にはせず、外では神域の男として振る舞い、人々を引き付け魅了する。
そして家に帰ってきたら、ただ一人の人間として──赤木しげるとして、こうして私に甘えてくるのだ。
普段彼を崇拝し、尊敬する者がこの光景を見たら泡を吹いて倒れてしまうのではないかと考えると、少しだけ頬が緩む。
最初はそれは勿論、恐れ多かった。私のような、まだまだ不出来な人間が彼の拠り所になるだなんて。なれるとも思っていなかった。
それでも、彼が私を離さないものだから、私は彼を受け入れた。きっと私が彼を受け入れず、離れたのなら──跡形もなく消えてしまうような気がして。
一人の人間の──愛する人の拠り所になれて、この時間は私達だけのものだと思うと、何とも言えない優越感が心を擽る。
彼の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。サラサラとした白い髪に、伝わってくる体温が心地よくて、私も心が満ちて、いつも彼の我儘を受け入れてしまう。
「赤木さん」
「んー?」
「どうしようもない人だなぁって思って、呼んだだけです」
そう言うと、彼は嬉しそうに笑ってぐりぐりと首筋に顔を埋めてくる。大きな子供のようで、全く本当に──どうしようもない人だ。
「そんなにどうしようもねえか?」
「ええ、どうしようもないです。我儘だし、気まぐれだし、人を困らせるし、子供っぽいし」
「そうだな」
「自覚はあるんですね」
「まぁ、それなりに」
ベッと舌を出して笑う赤木さんのそういう所がどうしようもなく愛おしくて、私も彼をぎゅっと抱きしめる。
「全く……」
「クックックッ」
ご機嫌に歯を見せてニカッと笑うと、赤木さんは私を抱きしめたまま寝転がる。
「お前にこうして貰えるなら、俺はどうしようもない奴でいいさ」
彼が私の顔にかかった髪を退けながら、優しく言う。その無骨で皺のある手が私の頬に触れて、そっと撫でる。
「赤木さんだから、私は受け入れてるんですよ。別の人にはこんな事しません」
そんな事を言った後に、少し気恥しくなって私は彼から視線を逸らす。
これでは「私は貴方に一途です」と宣言したようなものだ。
「嬉しい事言ってくれるじゃねえか」
ちゅ、ちゅ、と彼は私の頬や唇に優しくキスを落とす。
そうしてご機嫌になり、私を解放する間際に優しく頭を撫でる。
「今日は風呂入って飯食ったら、お前にしようかね」
「っ〜〜〜!は、はいはいっ!もう!早くジャケット脱いでください、皺になっちゃいますから!」
赤木さんからジャケットを脱がせて、ハンガーにかけると、赤くなった顔を見られたくなくて台所へと戻る。
「名前」
後ろから声をかけられて、私は振り返ろうとするも、先に彼の腕がまた腰に巻きついて、体と体が密着する。
「……楽しみだな、今夜」
耳元でそれだけ呟くと、彼はパッと腕を離して、軽い足取りで風呂場へと向かった。
私は顔に溜まった熱をどうにかしたくて、でもどうしようもなくて、その場にしゃがみ込む。
赤木さんの我儘で、気まぐれで、意地悪で、人を困らせて、子供っぽい、そんなところの全部が好きなのだ。
ああ、私もきっと──どうしようもないんだろう。
誰もが羨むような名声を欲しいままにして裏社会を生きてきた男、赤木しげる。
人々から尊敬され、崇拝される存在の彼は帰宅してくると──とても甘えたになる。
「名前〜」
「おかえりなさい、赤木さん」
玄関まで迎えに行くと、彼はスーツに皺ができてしまうのにも構わず、私の名前を呼んでぎゅっと抱きつくので、私も彼を抱擁する。
こういう時の赤木さんは、大抵代打ちが終わり組の人達と少し過ごして帰ってきた時だ。
彼は私の肩に顔を押し付け、すぅっと深く息を吸うと、少し息を止めて私から出ている″癒し成分″なるものを体に染み込ませると、息を吐いた。
それから彼は何を言う訳でもなく私を抱きしめ続け、体温を共有する。
「赤木さん、もうすぐご飯できますから……そろそろ離れてくださいね」
「嫌だ、離れねえ」
「……もう、我儘言わないで」
そんな他愛のない会話をして、赤木さんを抱きしめ、背中を愛撫しながらリビングへと移動して、落ち着きやすいように座るも赤木さんの抱擁は収まるどころか強くなるばかり。
きっと、私がぬいぐるみだったら今頃くちゃくちゃになって、変な形になっているかもしれない。
縋るような、置いていかれたくないような──それでいて穏やかで、心の底から満たされている彼の抱擁に、私は母親にでもなった気分だ。子供にしては大きいけれど。
赤木さんがどうしてこうなるのか、その理由を私は尋ねたことがある。
この神様のような人はたくさんの人達から求められ、崇められ、尊敬され、慕われる事に大層疲れてしまうのだと言う。
かと言って彼らのその感情を無碍にはせず、外では神域の男として振る舞い、人々を引き付け魅了する。
そして家に帰ってきたら、ただ一人の人間として──赤木しげるとして、こうして私に甘えてくるのだ。
普段彼を崇拝し、尊敬する者がこの光景を見たら泡を吹いて倒れてしまうのではないかと考えると、少しだけ頬が緩む。
最初はそれは勿論、恐れ多かった。私のような、まだまだ不出来な人間が彼の拠り所になるだなんて。なれるとも思っていなかった。
それでも、彼が私を離さないものだから、私は彼を受け入れた。きっと私が彼を受け入れず、離れたのなら──跡形もなく消えてしまうような気がして。
一人の人間の──愛する人の拠り所になれて、この時間は私達だけのものだと思うと、何とも言えない優越感が心を擽る。
彼の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。サラサラとした白い髪に、伝わってくる体温が心地よくて、私も心が満ちて、いつも彼の我儘を受け入れてしまう。
「赤木さん」
「んー?」
「どうしようもない人だなぁって思って、呼んだだけです」
そう言うと、彼は嬉しそうに笑ってぐりぐりと首筋に顔を埋めてくる。大きな子供のようで、全く本当に──どうしようもない人だ。
「そんなにどうしようもねえか?」
「ええ、どうしようもないです。我儘だし、気まぐれだし、人を困らせるし、子供っぽいし」
「そうだな」
「自覚はあるんですね」
「まぁ、それなりに」
ベッと舌を出して笑う赤木さんのそういう所がどうしようもなく愛おしくて、私も彼をぎゅっと抱きしめる。
「全く……」
「クックックッ」
ご機嫌に歯を見せてニカッと笑うと、赤木さんは私を抱きしめたまま寝転がる。
「お前にこうして貰えるなら、俺はどうしようもない奴でいいさ」
彼が私の顔にかかった髪を退けながら、優しく言う。その無骨で皺のある手が私の頬に触れて、そっと撫でる。
「赤木さんだから、私は受け入れてるんですよ。別の人にはこんな事しません」
そんな事を言った後に、少し気恥しくなって私は彼から視線を逸らす。
これでは「私は貴方に一途です」と宣言したようなものだ。
「嬉しい事言ってくれるじゃねえか」
ちゅ、ちゅ、と彼は私の頬や唇に優しくキスを落とす。
そうしてご機嫌になり、私を解放する間際に優しく頭を撫でる。
「今日は風呂入って飯食ったら、お前にしようかね」
「っ〜〜〜!は、はいはいっ!もう!早くジャケット脱いでください、皺になっちゃいますから!」
赤木さんからジャケットを脱がせて、ハンガーにかけると、赤くなった顔を見られたくなくて台所へと戻る。
「名前」
後ろから声をかけられて、私は振り返ろうとするも、先に彼の腕がまた腰に巻きついて、体と体が密着する。
「……楽しみだな、今夜」
耳元でそれだけ呟くと、彼はパッと腕を離して、軽い足取りで風呂場へと向かった。
私は顔に溜まった熱をどうにかしたくて、でもどうしようもなくて、その場にしゃがみ込む。
赤木さんの我儘で、気まぐれで、意地悪で、人を困らせて、子供っぽい、そんなところの全部が好きなのだ。
ああ、私もきっと──どうしようもないんだろう。