第1部 末路
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どのくらい時間が経ったのか、辺りはすでに薄暗くなっていた。疲れ切ったヘルガは足を止めるとその場でうずくまる。森の静寂が彼女の心に重くのしかかり、その孤独感は一層深まった。風が木々を揺らす音が、まるで彼女を嘲笑うかのように聞こえる。
ヘルガの心には絶望感が広がり、涙が頬を伝う。シャーリーを失った喪失感が彼女の胸を締め付ける。今まで頼りにしていたシャーリーがいないことが、どれだけ彼女にとって孤独なことかを痛感する。
「こんなことなら、いっそこのまま……」
そう思ったときだ。遠くの方で音が聞こえた気がした。耳を澄ませる。音はまだ鳴り続けている。それは、何かの鳴き声のようにも聞こえる。金属をこすり合わせたような不快な響きだ。
「なんだろう?」
ヘルガは気になり立ち上がると音のする方へ近づいていった。周囲の静寂と対照的に、その音は彼女の胸に不安と興味を掻き立てた。森の中で唯一の動く影を見つけることで、少しでも孤独感を紛らわせたかったのだ。
そこには、奇妙な生き物がいた。猿?いや、紫色のようなピンク色のような肌の色をしている。毛繕いをしていてとてもリラックスしているように見える。その生き物の存在が、ヘルガにとっては一時的な慰めとなった。鬼の一種であること確かだがヘルガでも見たことがないタイプであった。小さな帽子のようなものを被っているので、野生ではないだろうと推測した。
(周りに鬼がいる可能性があるわ。早く離れよう)
これ以上接近するのもよくないと思った彼女はゆっくりと後ずさりをして離れようとしたのだが、その時、その小さな鬼が動いたのだ。突然立ち上がった鬼に驚いて、ヘルガは再び木の後ろに隠れた。しかし、鬼はそれ以上動かずじっとしたままである。まるで何かを待つように前傾姿勢を取っているだけだ。すると今度は後ろから草を踏むような物音が聞こえてきたので振り返ると一匹の大きな鬼が歩いてきていた。
シルクハットを冠り、黒い外套を羽織っていた鬼だった。 ヘルガは農園の本部にいたが、今まで見かけたことの無い鬼だった。身なりから見て、農園の職員よりは上の貴族階級に属するだろうと、彼女は考える。
ヘルガの心臓は一層早く鼓動し、孤独感がさらに深まった。誰かに助けを求めたくても、周囲には誰もいない。冷や汗をかきながら、その場で動かず状況をうかがうヘルガ。目の前に立つ大きな鬼は、しばらくその場で周囲を見回していた。彼女は息を潜め、静かに後ずさりを続けた。
(どうにかして、ここから離れなければ……)
息を殺しつつ成り行きを見守るヘルガは、周囲の様子を注意深く観察する。ふと鬼に視線を戻すと、そこにその姿はなかった。一瞬目を離した隙に消えたのかと焦るが、違った。
上を向いたその瞬間、巨体が上から迫ってきていた。ヘルガは間一髪でそれを避けたものの、バランスを崩して倒れてしまう。全身に衝撃と痛みが走り、起き上がる間もなく再び迫る鬼に恐怖した彼女は、とっさにナイフを振るった。しかし、ナイフは弾かれ、鬼の腕が彼女の体を捕らえた。冷たく硬い感触が肌に伝わり、恐怖がさらに募る。必死に抵抗しようとするが、鬼の力は圧倒的だった。
「離して!」
叫びながら全力で鬼の腕を振りほどこうとするヘルガ。しかし、その握力は強く、彼女をしっかり捕らえて離さない。腕に食い込む痛みに悲鳴を上げそうになるも、必死にこらえる。
その時、シャーリーの言葉が心に蘇った。
『絶対に諦めないで、生き延びるんだ』
鬼の力が一瞬弱まった隙に、ヘルガは再びナイフを握り直し、鬼の腕に向かって全力で突き刺した。だが、ナイフは無情にも「パリン」と音を立てて真っ二つに割れてしまう。
それでもヘルガは諦めなかった。足元に転がっていた自前の槍を拾い上げ、鬼の爪を破損させ、何とか距離を取った。しかし、彼女の頭の中で警鐘が鳴り響く。この鬼は強い。本能がそう告げていた。
(この鬼を倒さなければ、逃げられない)
しかし、以前の戦いで負った怪我のため、右腕がほとんど使い物にならない。苦境の中、ヘルガは決死の覚悟で戦闘態勢に入った。
(勝つしかない!)
そう自分に言い聞かせ、一気に距離を詰めるヘルガ。渾身の力を込めて槍を突き出すも、鬼は軽々とそれをかわし、彼女の懐に入り込む。そして、鋭い動きで首を掴み上げた。
「がっ……あ……」
息が詰まり、声にならない呻き声をあげる。必死に足で鬼を蹴り飛ばそうとするが、足は届かない。意識が遠のきかけた瞬間、鬼は突然手を放し、彼女を地面に落とした。そして再び首を掴み上げると、そのまま木に叩きつけた。
「うっ……ゲホッ!」
背中を強打し、あまりの痛みにその場に崩れ落ちるヘルガ。
鬼はゆっくりと彼女に近づき、威圧感を漂わせながら目の前で止まった。思わず後ずさりするヘルガ。すると、鬼はしゃがみ込み、彼女の顔に手を伸ばす。そして、じっとその目を覗き込んだ。鬼の瞳がヘルガを捉え、逃がさない。
恐怖に駆られたヘルガは思い切りその手を振り払うが、鬼はニヤリと不気味な笑みを浮かべ、再び彼女を捕まえようとした。しかし、その動きに反応し、彼女は必死に鬼の手から逃れる。
(殺されるかもしれない。でも、ここで死ぬわけにはいかない!
まだ、私は死ねない……!!
シャーリーと交わした大切な約束を叶えるためにも!!!)
心の中には、生きる希望が芽生え始めていた。
逃げると見せかけ、鬼の背後に回り込み、背後から奇襲を仕掛けた。彼女の一撃は鬼の後頭部に命中したはずだった。しかしその攻撃は、寸前のところで避けられてしまい、攻撃は空を切る。
「……」
鬼は黙って彼女の方を向く。ヘルガはすぐさま距離を取り構えた。鬼は彼女の方へ近づき、拳を振り上げる。
しかし、それはフェイントであった。
男は、後ろに回り込むと後ろ手に彼女を捕らえ、そのままヘルガを持ち上げた。鬼の力は強く、身じろぎすらできなかった。
「本当に人間なのだな」
鬼が口を開いた。その言葉は、どこか楽しげだった。ヘルガは、その言葉を聞き、ゾッとした。その目の奥に、仄暗い光を見たからだ。鬼はヘルガの瞳をじっと見つめる。まるで品定めをされているようだった。
なんとか逃れようと試みるが、無駄に終わる。鬼は、しばらく観察した後、再び歩き始めた。
不安に押しつぶされそうになりながらも必死に耐え続けた。
鬼の歩みは止まらない。ヘルガを捕らえたまま、どんどん進んでゆく。彼女の顔は真っ青になっていた。
ヘルガの心には絶望感が広がり、涙が頬を伝う。シャーリーを失った喪失感が彼女の胸を締め付ける。今まで頼りにしていたシャーリーがいないことが、どれだけ彼女にとって孤独なことかを痛感する。
「こんなことなら、いっそこのまま……」
そう思ったときだ。遠くの方で音が聞こえた気がした。耳を澄ませる。音はまだ鳴り続けている。それは、何かの鳴き声のようにも聞こえる。金属をこすり合わせたような不快な響きだ。
「なんだろう?」
ヘルガは気になり立ち上がると音のする方へ近づいていった。周囲の静寂と対照的に、その音は彼女の胸に不安と興味を掻き立てた。森の中で唯一の動く影を見つけることで、少しでも孤独感を紛らわせたかったのだ。
そこには、奇妙な生き物がいた。猿?いや、紫色のようなピンク色のような肌の色をしている。毛繕いをしていてとてもリラックスしているように見える。その生き物の存在が、ヘルガにとっては一時的な慰めとなった。鬼の一種であること確かだがヘルガでも見たことがないタイプであった。小さな帽子のようなものを被っているので、野生ではないだろうと推測した。
(周りに鬼がいる可能性があるわ。早く離れよう)
これ以上接近するのもよくないと思った彼女はゆっくりと後ずさりをして離れようとしたのだが、その時、その小さな鬼が動いたのだ。突然立ち上がった鬼に驚いて、ヘルガは再び木の後ろに隠れた。しかし、鬼はそれ以上動かずじっとしたままである。まるで何かを待つように前傾姿勢を取っているだけだ。すると今度は後ろから草を踏むような物音が聞こえてきたので振り返ると一匹の大きな鬼が歩いてきていた。
シルクハットを冠り、黒い外套を羽織っていた鬼だった。 ヘルガは農園の本部にいたが、今まで見かけたことの無い鬼だった。身なりから見て、農園の職員よりは上の貴族階級に属するだろうと、彼女は考える。
ヘルガの心臓は一層早く鼓動し、孤独感がさらに深まった。誰かに助けを求めたくても、周囲には誰もいない。冷や汗をかきながら、その場で動かず状況をうかがうヘルガ。目の前に立つ大きな鬼は、しばらくその場で周囲を見回していた。彼女は息を潜め、静かに後ずさりを続けた。
(どうにかして、ここから離れなければ……)
息を殺しつつ成り行きを見守るヘルガは、周囲の様子を注意深く観察する。ふと鬼に視線を戻すと、そこにその姿はなかった。一瞬目を離した隙に消えたのかと焦るが、違った。
上を向いたその瞬間、巨体が上から迫ってきていた。ヘルガは間一髪でそれを避けたものの、バランスを崩して倒れてしまう。全身に衝撃と痛みが走り、起き上がる間もなく再び迫る鬼に恐怖した彼女は、とっさにナイフを振るった。しかし、ナイフは弾かれ、鬼の腕が彼女の体を捕らえた。冷たく硬い感触が肌に伝わり、恐怖がさらに募る。必死に抵抗しようとするが、鬼の力は圧倒的だった。
「離して!」
叫びながら全力で鬼の腕を振りほどこうとするヘルガ。しかし、その握力は強く、彼女をしっかり捕らえて離さない。腕に食い込む痛みに悲鳴を上げそうになるも、必死にこらえる。
その時、シャーリーの言葉が心に蘇った。
『絶対に諦めないで、生き延びるんだ』
鬼の力が一瞬弱まった隙に、ヘルガは再びナイフを握り直し、鬼の腕に向かって全力で突き刺した。だが、ナイフは無情にも「パリン」と音を立てて真っ二つに割れてしまう。
それでもヘルガは諦めなかった。足元に転がっていた自前の槍を拾い上げ、鬼の爪を破損させ、何とか距離を取った。しかし、彼女の頭の中で警鐘が鳴り響く。この鬼は強い。本能がそう告げていた。
(この鬼を倒さなければ、逃げられない)
しかし、以前の戦いで負った怪我のため、右腕がほとんど使い物にならない。苦境の中、ヘルガは決死の覚悟で戦闘態勢に入った。
(勝つしかない!)
そう自分に言い聞かせ、一気に距離を詰めるヘルガ。渾身の力を込めて槍を突き出すも、鬼は軽々とそれをかわし、彼女の懐に入り込む。そして、鋭い動きで首を掴み上げた。
「がっ……あ……」
息が詰まり、声にならない呻き声をあげる。必死に足で鬼を蹴り飛ばそうとするが、足は届かない。意識が遠のきかけた瞬間、鬼は突然手を放し、彼女を地面に落とした。そして再び首を掴み上げると、そのまま木に叩きつけた。
「うっ……ゲホッ!」
背中を強打し、あまりの痛みにその場に崩れ落ちるヘルガ。
鬼はゆっくりと彼女に近づき、威圧感を漂わせながら目の前で止まった。思わず後ずさりするヘルガ。すると、鬼はしゃがみ込み、彼女の顔に手を伸ばす。そして、じっとその目を覗き込んだ。鬼の瞳がヘルガを捉え、逃がさない。
恐怖に駆られたヘルガは思い切りその手を振り払うが、鬼はニヤリと不気味な笑みを浮かべ、再び彼女を捕まえようとした。しかし、その動きに反応し、彼女は必死に鬼の手から逃れる。
(殺されるかもしれない。でも、ここで死ぬわけにはいかない!
まだ、私は死ねない……!!
シャーリーと交わした大切な約束を叶えるためにも!!!)
心の中には、生きる希望が芽生え始めていた。
逃げると見せかけ、鬼の背後に回り込み、背後から奇襲を仕掛けた。彼女の一撃は鬼の後頭部に命中したはずだった。しかしその攻撃は、寸前のところで避けられてしまい、攻撃は空を切る。
「……」
鬼は黙って彼女の方を向く。ヘルガはすぐさま距離を取り構えた。鬼は彼女の方へ近づき、拳を振り上げる。
しかし、それはフェイントであった。
男は、後ろに回り込むと後ろ手に彼女を捕らえ、そのままヘルガを持ち上げた。鬼の力は強く、身じろぎすらできなかった。
「本当に人間なのだな」
鬼が口を開いた。その言葉は、どこか楽しげだった。ヘルガは、その言葉を聞き、ゾッとした。その目の奥に、仄暗い光を見たからだ。鬼はヘルガの瞳をじっと見つめる。まるで品定めをされているようだった。
なんとか逃れようと試みるが、無駄に終わる。鬼は、しばらく観察した後、再び歩き始めた。
不安に押しつぶされそうになりながらも必死に耐え続けた。
鬼の歩みは止まらない。ヘルガを捕らえたまま、どんどん進んでゆく。彼女の顔は真っ青になっていた。
