Happy Birthday
「本当にやるとは思わなかった。」
そう溢す男の長い白髪が揺れる。男は珍しく目を見開いて驚いていた。……正直、俺自身、誰かの誕生日を祝ったことはない。
家族だろうが
友人だろうが
他人の生まれた日に興味を持ったことなどない。
だが、
そんな己自身も他人すらも興味のない俺の誕生日を、祝った……言ってしまえば人間の文化に興味皆無だと思ったこの堕天使に、俺だけいい思いをさせてもらうのはなんだか尺だった。
......うん、言い訳だ。
俺が祝いたいから、祝った。
それを聞いて、アザゼルは白髪を揺らして苦笑する。
「てっきり手作りしてくれんのかと」
「はっ倒しますよ。こちとら万年人手不足でブラック企業と化してんですから」
裏を返せばその多忙さの中、
態々堕天使の為の仮初の誕生日の為に
態々おいしいケーキを探しに行って
態々豪華なトッピングをしてくれたことになる。
とか思って、アザゼルはニヤニヤ笑いながらケーキを切り分ける。
「しっかし、いきなり電気消えたからびっくりしたわ。」
「分かってるくせにさっさと火消してくれないからイラっとはしましたけど。」
「悪かったって。あんまり懐......嬉しかったから。」
「......なんですか?」
ふと、違和感を感じて春明はアザゼルの顔を見て......ゾッとする。
「......ちょ、折角綺麗なホールケーキ買ったんですから……!」
いつの間にか、切り分けていたはずのケーキを鷲掴みにして、男は興奮した笑みを浮かべていた。
「いいじゃん。どうせなら何処の誕生日にもない祝い方しようぜ。」
この人の独占欲はどこか捻くれている、とよく思う。
まあ、恋人には若干盲目的なとこのある綾瀬春明は、結局はこの
「ね?脱げよ。」
「......西洋ってこんなことしかしないんですか?」
「......東西の問題じゃねぇと思うけど」
結局、何のために無駄に金を積み上げてトッピングしてもらったのかわからないケーキはぐちゃぐちゃになり、そんな事は気にも止めず、アザゼルは意気揚々とケーキだったものを春明の素肌に塗りたくる。
春明は恥と悔しさにアザゼルを睨みつけていたが、誕生日の男は全く意に返さず笑うだけだ。
「まあいいから喰われてろ」
「ンッ……」
案の定、自制の効かなくなったアザゼルに好き放題舐められ犯され、あっという間に今日は過ぎた。
……まあ、当然その後やり返したからっていうのはまた別の話。
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