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Happy Birthday


「……反応うっす。」

「え、いや……なんですか。コレ。」

「いや、だから、テメェ今日……誕生日……だろうが……」

歯切れの悪い言い方で、アザゼルは斜め下に視線を逸らす。
春明は、未だに目の前に差し出されたソレがなにか判らずにいた。

「嗚呼……誕生日ケーキですか……」

「テメェお前この野郎。俺がテメェの為に態々1から作ってやったんだぞ。」

声を荒げるアザゼルの長い揉み上げが揺れる。
どうも春明の反応が予想の他薄かった事に苛ついてるらしい。

「すいません。26年間、誰にも祝われたことなかったんで。」

「……流石に親は祝ってくれんじゃん?」

「あーー……居なかったようなもんですから……父も母も。」

「あー……わりぃ。そうだったな。」

「気にしないでください。過去は過去ですから。」

まあ、聞かれるまで忘れてましたけど。存在すら。

「んーー、甘ッ。これ全部頂いていいですか?」

「お、おう……。」

いつの間に手を出したのか、素手でがっつく姿に圧倒されてしまった。春明を見てこそこそ微笑んでいる女グループは度々見かけたが、これを見たら顔を引き攣らせて無理矢理微笑むだろうな。

「アザゼルさん。アレやってくれません?」

「っ!!」

言いながら春明は自らの口を指す。思わず想像したのか、アザゼルは顔を赤らめて瞳を彷徨わせる。その間も、春明はいつもの爽やかスマイルで見つめている。

「あ、……あーん」

「あーん。」

仕方なく、適当に鷲掴みにしたケーキをぎこちなく口へ運ぶ。
眩しいぐらい嬉しそうな顔で咀嚼する春明。

「ん、おいし……」

「!?おい、離せっ!」

「いつもより照れますね」

アザゼルの指についたケーキを舐めながら、春明は笑う。
不意打ちに慌てて手を引っ込めようとするも、強く握り締めたまま離さない。

「そういえば、アザゼルさん誕生日は?」

「ある訳ねぇだろてかいつまで舐めてんだ。」

流石にもう残っていないだろうにまだ離さない。どころか段々キスっぽくなってきた。 

「じゃあ、俺が作ります。」

「はぁ?俺ぁ人間の真似する気はねぇじゃんよ」

未だに離す兆しのない春明に困惑しつつ、突っぱねるように言う。相変わらず人嫌いの激しいアザゼルに、少し苛立ちを覚えた春明は舐めていた中指を力任せに噛み付く。

思いっきり歯を立てられて、思わず肩が跳ねる。

「春明……」

「7月10日」

何か言いたげなアザゼルに有無を言わさず、春明は告げる。

「俺キリスト教徒じゃないんでよく分からないですけど、旧暦を直して贖罪の日です。」

「お前それは断食する日だぞ。」

「貴方の誕生日ですよ。」

春明は頑なだった。困惑するアザゼルの指にもう一度噛み跡をしっかり残して、滲む血を舐める。

「……分かったから噛むな。犬かお前は。」

「アザゼルさんほどじゃないです。それに俺は噛むより挿れたいんで。ケーキよりも、貴方を味わいたい……。」

「お前ホント直球だな。……まあ、いいけど。」

言うなり、アザゼルはさっさと寝室へ向かう。
欲情に頬を染めながら、食べかけのケーキを持ってアザゼルの後を追い掛ける。



「いやそれは置いて来いよ……」



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