海の家
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あれから数分後…
見事に海の家は訪れる客で賑わっていた。
「わ、あの子超可愛くね?」
「何何、海の家?」
日に焼けた若い男達は一ヶ所を中心に集まっている。
引き寄せる人物は勿論、美少女りんのように思えるが、
赤毛にピンク色のリボンを付け、ミニスカートの上にレースがいっぱい付いたエプロンを着るのは………
丸「………………」
そう、女装をした丸井ブン太だった。
仁「ブン子ちゃん、もっと笑いんしゃい」
赤「そうっスよブン子先輩!笑顔、笑顔!」
後ろでコソコソと覗きつつも、仁王と赤也は小声でブン子ちゃん(仮名)にアドバイスを送る。
が、当の本人は顔を赤くしながらわなわなと震えていた。
丸「(出来る…わけねぇだろうぃぃ…!!)」
無理矢理働かされ、更には女装までされ。
一体自分は何をしてるのかと羞恥心で丸井の顔は真っ赤に染まっていた。
だが、店の席に座りこちらを静かに見つめている幸村に気付き、ひきつっていた丸井の顔が更に強張る。
ぐっと唇を噛み、何処かやけくそになりながらニッコリと自分史上最高の笑顔で微笑んだ。
一方、店の中では…
「ラムネ3つ下さーい」
『はい、ただいま…っ』
りんが女性客の前に立った瞬間、キャアと歓声の声が上がる。
黒髪短髪のウィッグを被り、ズボンを履くりんは……男の格好をしていた。
だが顔は女の子のように可愛らしく、美少年という言葉がぴったりだ。
「ね、ね、竜馬(仮名)くんはかき氷何味が好き?」
『わ…お、俺は苺が好きです』
精一杯男らしく振る舞う。
兄リョーマを手本にしながら、りんはバレないかと内心ドキドキしていた。
『甘いものが、大好きなので///』
「「「………ッッ」」」
照れたように微笑むりんに、客は一斉に「苺下さい!!」と叫んだ。
柳「…天然系か」
幸「ふふ、りんちゃんは男になっても可愛いね」
その光景を見ながら、企画者でもある2人は満足そうに頷いていた。
桑「近くに店があって良かったな」
柳生「そうですね。裁縫道具もお借り出来ましたし」
レースやリボンは、全てお手製。
手先の器用なジャッカルと、紳士のたしなみだといい淡々とこなす柳生によって作られていた。
丸「あ゙~疲れた!」
店の影で胡座を掻いて座る丸井。
折角の可愛らしい服装も、今の体勢で台無しだ。
丸「スカートって何かこう…落ち着かねぇ」
仁「ブンちゃん、見えとる」
スカートの中を団扇で仰ぐ姿を見ながら、仁王は思わず溜め息を吐いた。
『先輩…!』
たたた…と小走りで近付いて来たりんに、2人は目を見開いた。
『丸井先輩大丈夫ですか?熱中症とかじゃ…』
丸「いや、平気」
座り込む丸井を見て、心配そうに顔を覗くりん。
無意識なのか、そのままの距離で『良かった』と微笑んだ。
丸「(か、可愛い!)」
りんの男版、というよりショートヘアのりんを見るのは初めてだったので、丸井の顔は赤くなっていく。
しゅううと音がしそうな程真っ赤になり俯いてしまった丸井に、『先輩!?』とあわあわ慌てるりん。
『や、やっぱり外暑いですもんねっ今度は私が外にいるので、先輩は中でお休みになってて下さい!』
仁「(…原因は自分じゃって)」
仁王は兎に角、まだ顔を覗き込むりんの手を引いて離れさせた。
ついでに、じっとその顔を見つめる。
『??あの、』
仁「………越前に少し似てるのぅ」
顎に手を添えながらぽつりと零れた言葉に、りんは顔を輝かせた。
『ほ、本当ですか!?』
仁「んー雰囲気というか…」
丸「な!りんの方がずっと可愛いに決まってんだろぃ…!」
丸井は思わず立ち上がり叫ぶ。
しん…と静まり返った場に、え?と自分自身が目を丸くしていたが。
やがてハッと気付くと、再びカァァァと顔が赤く染まっていった。
丸「いや、違う…っ違くはねぇけど、その、なんつーか…」
1人焦る丸井を見て、仁王はニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
伝線するかのようにりんも頬を赤く染め、ゆっくりと丸井の傍まで歩み寄っていく。
『あ、ありがとうございます…///』
丸「っ!」
『でも、丸井先輩の方がずっとずっと可愛いですよっ』
そう言われた瞬間、丸井の動きがピタリと止まった。
丸「…俺、可愛い?」
『はい!とっても可愛いです』
りんは女の子の格好をした丸井に対して言ったつもりだった。
だがそれを聞いた丸井は、段々と眉間に皺を寄せていく。
『…せんぱ「ほれ3人共、休憩にするよ」
店の中から梅が出て来て、ほらほらと押され強制的に促される。
怒らせてしまったのだろうか…
りんは先程見せた丸井の表情を思い出したら、ズキンと胸が痛んだ。
やがて夕方になり、お客も随分と引けた。
店の外で梅が1人たたずんでいると、カタンと誰かが隣に立つ気配がした為、顔の向きを変えた。
梅「…なんじゃ、お前さんかい」
幸「何してるのかなと思いまして」
ニッコリ笑う幸村を見てから、再び海に視線を送る。
梅「…この景色は変わらんよ、ずっと」
梅につられるように幸村も前に視線を送る。
夕日の光が反射して、青い海はキラキラとオレンジ色に輝いて見えた。
1枚の絵のよう…とその景色に目を奪われていると、梅がゆっくり口を開けた。
梅「お前さんはな…あの人にそっくりじゃ」
幸「あの人?」
梅「私がまだ若い頃、ここに良く来ていたんじゃ」
梅は何処か目を細めて、思い出すように語る。
梅「私が初めて作った焼きそばを食べたのも、あの人でな。本当に毎日のように来ていたんじゃ」
幸「…その人は今?」
静かに尋ねると、梅はフッと口元を緩めた。