海の家
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丸「…何で俺らがこんなこと………」
かき氷に苺シロップをかけながら、丸井は溜め息混じりに呟いた。
隣で氷をすすっていた仁王も同意するように頷く。
赤「先輩達エプロン似合ってますよ!」
丸&仁「「あ゙?」」
赤「…何でもないっス」
低い声音が重なり、無意識に一歩後退りする赤也。
笑って返せる雰囲気ではなく、2人の機嫌は最悪で。
そこへ、パタパタと軽やかな足音が近付いて来た。
『お疲れ様ですっ』
目の前まで来ると、りんは手に持っていた水のグラスを2人の前に置いた。
『今日すごく暑いので、水分補給はちゃんと取って下さいね!』
丸「おー…さんきゅ」
『えと、それから…』
仁「?」
モジモジと恥ずかしそうなりんに丸井と仁王は揃って首を傾げる。
微かに赤い顔をじっと見つめていれば、やがて口が開いた。
『それから…来てくれてありがとうございます。皆さんと一緒に働けて、嬉しい、です…///』
それだけ言うと、くるっと背を向けて営業に戻って行ってしまった。
丸&仁「「…………」」
まさに言い逃げ。
そんな風に言われてしまえば、やる気も上がる訳で。
仁王はやれやれと小さく息を吐いた。
仁「(仕方ないのぅ)
…ブーンちゃん。顔真っ赤じゃよ」
丸「んな゙!う、うるせぇ…!///」
苺シロップと同じくらい顔を真っ赤に染める丸井少年。
その光景を見ていた赤也は自分の扱いと比べながら、やはりりんに勝る者はいないと改めて実感していた。
『(あれ…?)』
忙しく働いていたりんだったが、お昼過ぎになればふと客足が途絶えてしまった。
本来なら稼ぎ時の時間であるが…
『ど、どうしたんでしょうか…』
赤「一気に来なくなったな」
赤也と共に首を傾げていると、「すみませーん」と客の声が響いた。
まだ残ってくれている僅かな客に感謝しつつ、2人が向かえば、
幸「かき氷5つ頂戴」
赤「ぶ、ぶちょー!?」
『幸村さん…!』
ニッコリ笑う幸村。そこには見知っている顔が並んでいた。
柳「赤也、ちゃんと働いているようだな」
桑「ああ、安心した」
柳生「りんさん、お久しぶりです」
どうやら全員集合らしい。
ってことは…と赤也は視線をめぐらせ、奥の席に座る人物に気付いた瞬間、体がビクンと跳ね上がった。
真「…………」
赤「さ、真田副部長…これはですね、えぇと」
じっとエプロン姿の自分を凝視する真田。
「中学生がバイト何ぞに励むとは何事だ赤也!たるんどる!」
と説教されるに違いない…と赤也は目を固く閉じた。
真「部活のない日を利用しての社会勉強か。…お前も随分と成長したな」
赤「へ?」
そう言ってうんうんと1人頷く。
まさか誉められるとは想像もしていなかった為、赤也は暫く瞬きを繰り返していた。
『皆さん、来て下さったんですか?』
幸「うん。赤也がりんちゃんと出掛けるって聞いてね」
赤「へ?俺言ってないっスよ?」
疑問に思う赤也に、フッと口元を緩める幸村。
赤「ま、まさか黒魔「言うな…」
冷や汗を流す赤也の肩に、ジャッカルは小さく首を振りながら手を乗せる。
幸「(抜け駆けかい?赤也。それを俺が許すとでも?)」
赤「(…すいませんでした)」
幸村は穏やかに微笑んではいるが、背後にはゴゴゴ…と黒い何かが降臨しかけていた。
だが2人の意志疎通を全く理解していないりんは、『かき氷何味がいいですか?』と平和に接客をしている様子。
丸「あれ!幸村くん?つーか皆どうしたんだよぃ」
仁「全員集合じゃな」
騒ぎに気付いた2人がやって来て、その場は更に賑やかさを増していった。
柳生「仁王くんそんな姿で…いや、感動しました」
桑「柳生…なにも泣かなくても」
仁王が働く姿を見て涙腺が緩んだのか、眼鏡を外す柳生。
まるで子離れした母親のようだ。
梅「コォラ若人ども!何をくっちゃべっとるんだい!?」
赤&丸「「げ…!!」」
あの年で何故そこまで速く走れる、と言いたくなる程のスピードで掛けてくる梅。
慌てて謝るりんをすり抜け、その他3人に責めよった時。
近くに座る幸村を見た瞬間、動きがピタリと止まった。
梅「……と、歳造さ…」
幸「え?」
梅「あ、いや…人違いじゃった」
皆に不思議そうに見られていることから、梅はコホンと咳払いした。
赤「でもさ梅ばあちゃん。客誰もいねぇよ?」
その言葉に梅は周りを見渡し、空席を見ながら「…またか」と呟いた。
丸「またって?」
梅「あれじゃよ、」
くいっと顎で指した方へと視線をたどれば、窓からコンビニエンスストアが見えた。
梅「あれが出来てからは売り上げも下がる一方でのぉ。海の家なんてもう時代遅れらしいわい」
『…っそんなこと、』
梅「今は何でもお手頃が受けるんじゃ…ここももう閉めようかと思ってね」
何処か懐かしむように話す梅の言葉に、いち速く反応したのは赤也だった。
だが「潮時じゃ」と言われ、唇を噛み締めて押し黙る。
何処か重い空気になりつつあった時、顎に手を添え何かを考えていた柳が口を開けた。
柳「梅さん、ここに来る客は女性が多いですか?」
梅「そうでもないよ。最近は男性も多いねぇ」
再び考える素振りを見せる柳。
ふと、丸井とりんに目を向け意味深な笑みを浮かべた。
丸「?何だよぃ」
柳「…1つ、俺に考えがある」
『え?』
赤「マジっスか柳先輩!」
それを聞いた皆は期待に満ちた表情で、柳の話に耳を傾けた。