青春花火
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*りんside*
健「りんちゃん?どうかしたん?」
『あ、いえ……!』
小石川さんに目の前でヒラヒラと手を振られて、ハッと気付いた。
謙「取るのもスピードスターやっちゅー話や!!」
小「謙也くん、金魚逃げてまうわ…」
金魚すくいに挑戦中の謙也さんを見ながらも、内心何処か落ち着かない。
(酷かったかな…)
逃げるように白石さんの前から走り去った時、後ろから名前を呼んだ声が少し寂しそうだった。
でも、私ばっかりドキドキして、慌てて、バカみたい。
さっきも勘違いしちゃったし……
…か、勘違いって何の!?
1人あたふたと慌てていれば、隣から「ど、どないした?」と小石川さんの心配そうな声が聞こえた。
思えば…いつも白石さんにはたくさんドキドキさせられてる気がする。
自然と溜め息が零れ、同時に自分の浴衣を見渡してみる。
今日の為に、今年買って貰った白地に金魚柄の浴衣を着てきた。
紅葉さんにお気に入りの赤い帯も付けて貰って、髪も綺麗にしたつもりだ。
白石さんに可愛いって、言って貰いたくて。
でも、お面に負けるなんて……
ユ「そういや白石は?いーひんけど」
『え、ええと…』
キョロキョロと頭を動かすユウジさんに何て言ったら良いのかわからず、ただ俯く。
そんな私の様子から察したのか、ユウジさんは小さく肩を竦めた。
ユ「喧嘩か?ったくホンマ飽きひんな」
『ち、違います…!』
ユ「まぁどうでもええけど。巻き込まんといてな」
素っ気なく言い放つユウジさんに、しゅんと落ち込んでしまった。
そうだよね、迷惑に決まってるよ……
ユ「そな暗い顔すんなや」
『…え』
ユ「浴衣も…な、何や、似合うてるし…」
そっぽを向いて、ゴニョゴニョと呟くユウジさん。
…もしかして、励ましてくれてる、のかな?
『ありがとうございます…ユウジさん』
嬉しくて自然と微笑んでしまう私は、ユウジさんを見つめながら頭を下げた。
「な、何がや!?」思いっきり顔を逸らされても、何だか嬉しい。
ユ「小春の方が何倍もかわええからな!」
『はい!小春さん可愛いです!!』
ユ「~…っ」
小「あら~りんちゃんの方がずっとかわええやないの」
金魚の入った袋を持って、小春さんは傍まで駆け寄って来る。
やっぱり可愛いな、と浴衣姿を見ながら思っていると、隣でユウジさんが咳払いをしていた。
謙「おお、今何処?へ、鯛焼き?」
謙也さんは携帯電話を耳に当てて、目を見開いたりして身振り手振りを繰り返す。
小「光ちゃん来てるって?」
謙「おん。でも人がいすぎてな、ここ見えないみたいなんや。鯛焼き屋の目の前におるみたいなんやけど」
顔を動かすと、もうすぐ花火が始まるからかさっきよりも人混みになっていて、先が見えない。
『あの、私行きましょうか?』
謙「え?」
『鯛焼き屋なら、さっきお面買ったところの傍なんです。だから、』
「ええの?」と聞き返す謙也さんにコクンと頷く。
私は記憶を辿るようにして、駆け足で人混みに紛れ込んでいった。
*財前side*
(…欝陶しい)
騒々と喧しい人混みも、チラチラ感じる視線も。
携帯を向けてくる女達を出来れば気のせいやと思いたい。
…浴衣何か着てくるんやなかったわ。
せやけど、美容師な兄貴が煩くて強引に着替えさせられた。
薄手の黒の浴衣。慣れない帯で閉めたせいか何処か息苦しい。
この人混みをどう切り抜けようか考えとると、ふと名前を呼ばれた気がした。
そこをじっと見とると、人混みの中でぴょんぴょん跳ねとる奴が視界に映る。
『……財前…さんっ!』
人に肩がぶつかり睨まれる度、慌てて謝っとるりん。
一生懸命に人混みを掻き分け、俺の元へ小走りでやって来た。
『良かったぁ、ちゃんと会えて』
そう言って、安心したように笑う。
堪え切れなくなった俺は、口元に手を当て吹き出してしまった。
『??え、え?』
財「……いや、なんちゅーか…ホンマに小さいな」
ちょこまかして尻尾振っとるみたいで、犬やん。
薄く笑う俺を不思議そうに見ていたりんは、暫くしてムゥと頬を膨らませた。
『す、好きで小さい訳じゃないです…っ』
財「絶対迷子になるサイズやろ」
『なりません!財前さんだって同じじゃないですか』
財「俺ははぐれてへんし」
あ、ちょっと涙目んなった。
跡部さんやったか、前にチワワだとか何とか言っとったけど…ホンマにそやな。
好きな奴程、苛めたくなるのは俺の悪い癖。
自覚はしとるつもりやけど性格やからしょうがない。
視線を下に向けりんを見れば、膨れていた顔がいつの間にか変わっとって。
吸い込まれるように一点を見つめていて、首を捻りつつその先を追う。
財「(……綿飴?)」
食べたいのかと尋ねると、『いえ…!』と慌てて手を横に振られた。
こいつの性格を知っとる俺は、人が退けた好きに店に一直線に向かう。
混乱するりんを余所に1つと言い放ち、それを受け取った。
財「……ん、」
『!お、お金…っ』
財「いらん」
まだ納得せぇへんみたいやから、無理矢理口に押し込んだろかとS心が湧く。
そんな俺と綿飴を交互に見ていたりんは、怖ず怖ずと手を伸ばした。
『…ありがとうございます、頂きます///』
少し躊躇いながらもふわふわしたそれを口に運び、美味しいと幸せそうに笑った。
…つくづく、俺と正反対やなと思う。
ありがとうとか、ごめんなさいとか、真っ直ぐに素直に言える。
気付かぬ内にじっと見てしまっとると、腰の位置から携帯のバイブが鳴った。
それを開けば宛名は謙也さんで、今何処や?とかりんちゃんに会えた?とか過保護丸出しのメール。
財「…戻ろか」
『はい、こっちですよっ』
このままじゃ電話して来そうやし…
人混みの中、只でさえ小さいコイツを見失わないよう後からついていく。
フサフサした(名前知らんけど)赤い帯は目印になる。
とその時、りんの腕が突如引っ張られた。
一緒になってその人物を見れば、良く知るうざいくらい整った顔の男。
財「………部長」