青春花火
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リョーマは今、まるで不愉快なものを見るように眉を寄せて、目の前の光景を見据えていた。
リョ「…………」
風呂から上がって部屋の扉を開けた直後、真っ先に視界に飛び込んで来た者がそうさせる原因で。
ベッドに大の字で寝そべりスヤスヤと眠る人物を、仮にも先輩ではあるが、思わず蹴り飛ばしたくなる。
桃「…んー………んん!?おお、寝ちまったのか」
リョ「…そうみたいっスね」
上半身だけ起こし、背伸びをしつつ大きな欠伸をする桃城。
桃「お前のベッド気持ちいいなぁ。俺こっちで寝るな」
リョ「はぁ!?」
桃「何だよ、仮にもお客様なんだぞ」
何がお客様だ。
今日の夕方から連絡もなしに家に出現し、ちゃっかり夕食まで食べ、それで当たり前のようにベッドまで奪おうと言うのか。
リョーマは深く溜め息を吐くと渋々と予備の布団を敷き、桃城に背を向けて腰を下ろした。
机の上の携帯電話を手に取りメールを確認してみれば、
リョ「……………」
桃「どうした?」
何とも微妙な顔を見せるリョーマに、桃城は首を捻る。
リョ「大丈夫って言う時は、基本大丈夫じゃないんスよ」
桃「は?」
独り言のように呟きながら、リョーマは布団を被る。
桃城は小さく肩を落とし、自分も同じようにふかふかベッドに寝そべった。
桃「今日は俺がりんの代わりだ。どっからでも甘えてこい」
リョーマは背中越しに聞こえる声に、思わず目を見開いた。
桃城がこうしている理由がわかったから。
リョ「桃先輩」
桃「ん、」
リョ「……おやすみなさい」
桃「おう」
目を瞑る直前、隣にカルピンが座った。
〈私は大丈夫だよ。
今日も皆と海に行って、すごく楽しかったの。
お兄ちゃん、桃城先輩と仲良くね。寝坊しないように、目覚ましはちゃんと掛けるんだよ!
おやすみなさい。〉
『(送信完了…)』
りんは携帯をパタンと閉じた。
視線を前に送り、流れるテレビの映像をぼんやりと眺める。
「愛してる。お前の全てが欲しい」
「優しく…してね」
「ああ…」
『…………』
椅子に寄り掛かっていた体勢を変え、思わずじっと見入ってしまう。
ドキドキと、役者の男女に意識を集中させていれば…
白「風呂空いたで。ごめんな、待たせてもーて」
『は、はははい…!』
後ろから顔を覗かせた白石にびくっと体を浮かせ、慌てて別のチャンネルに変えた。
振り向けば、ドキンと心臓が跳ね上がる。
風呂上がりだからか、白石の髪は勿論濡れていた。
タオルで無造作に拭く姿は何処か幼くて、新鮮で…
りんは思わずじっと見つめてしまっていた。
白「あ、俺この人好きやわ」
そんなりんの気持ちを全く理解していない白石は、流れていたお笑い番組に食い付く。
『……お風呂、行って来ます…』
楽しそうな白石の笑い声を背中に受けながら、りんは静かに歩きだした。
『ふぅ……』
広い浴槽に遠慮がちに座り込んだ矢先、自然と零れた溜め息。
突然の事態に、まだ頭が着いていけていなかった。
何の因果か、紅葉と友香里によってこの家に閉じ込められたのだ。
とは言え内側から鍵を開ければいいものの……この家は内側からも鍵を刺さないと、開かないようになっている。
その鍵もなくなっていて、ちゃっかりスペアキーまでもがなくて、2人して肩を落としたのだった。
りんの鞄は玄関に置いてくれたらしいので、着替え等の心配はいらないが……
問題は、朝まで2人きりということ。
『……恥ずかしい』
自分ばかり意識している気がして、白石との差を感じりんは顔を浴槽に沈めた。
一方の白石は、自室で習慣でもあるヨガのポーズを取っていた。
白「…………」
静かに精神を集中させていると、コンコンと小さく部屋をノックする音がした。
返事をすれば遠慮がちに扉が開かれ、
『あの、白石さん…お風呂ありがとうございました』
集中させていた精神は、突如乱入してきた女の子によって崩された。
髪を下ろして、頬は血色の良い桃色。
初めて見るりんの寝巻姿に、白石は一瞬だけ固まった。
『?えと、』
白「あ、ああ…どう致しまして」
ハッとして気まずそうに顔を逸らす白石に、りんは首を傾げる。
白「りんちゃん、友香里の部屋使い」
『あ、はいっ』
今晩の寝床の話になれば、実は気になっていたりんは慌てて返事をした。
隣にある友香里の部屋を開けようと手を掛ける…が。
『あ、開かない…です』
白「ええっ」
まさかと白石はドアノブを捻ってみるが、鍵が掛けられてるのかビクともしない。
サー…と、無意識に顔が青ざめてゆく。
白「…俺リビングでええから、りんちゃんは俺の部屋で寝や」
『!そんな、』
只でさえ急に泊めて貰っているのに、これ以上迷惑は掛けられない。
『私がリビングで寝ます』
白「アカンて。今夜結構冷えるし…風邪引いてまうで?」
『白石さんも同じですっそれに白石さんのお部屋ですし、』
白「でもなぁ…」
一歩も譲ろうとしないりんに、白石は困ったように額に手を添える。
と、ふと何かを思い付いたのか口角を少しだけ吊り上げた。
白「じゃあ一緒に寝よか」
ニッコリ微笑む白石を見て、キョトンと目を丸くするりん。
一緒に寝る=添い寝だと当然のように頭が解釈して…
『お、お願いします…っ』
白「……え、」
頭を下げるりん。予想外の返答に白石は大きく目を見開いた。
白「…りんちゃん、意味わかって言っとる?」
『意味…ですか?』
白「…………」
小首を可愛らしくも傾げるりんは、どうやら無自覚らしい。
暫し沈黙の後、当然、白石はりんの腕を掴んだ。
『しら…』と名前を呼び終わるより先に、白石の部屋の中に押し入れられる。
優しくも強い力で、トンッと肩を押された。