浪速のバカンス
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友「私も含めてやから……13等分?」
『うん。多分こう切れば…』
友「あ、そっか!」
海の家で包丁を借りて、その横でスイカを切るりんと友香里。
そのスイカはみずみずしくて、とても美味しそうだ。
思わず頬を緩めるりんの隣では、友香里が何やら深刻そうな顔をしていた。
『?友香里ちゃん?』
友「どうしたら、素直になれるんやろ……」
何の、と聞かなくても、すぐにわかった。
友「まぁうちみたいなのが意気なり素直になっても、気味悪いだけやねんけどな。
りんちゃんみたいに可愛いかったら、」
何処か投げ遣りに言う友香里。
りんは動作を止め、友香里の目を見つめた。
『そんなこと…ないよ』
きっと、大事なのは。
『好きって気持ちが大事なんだよ。私が翔太くんなら、きっと、すごく嬉しい…』
『あと、友香里ちゃんは可愛いよ!』と元気いっぱいに力説するりん。
友香里は少し目を丸くさせて、
友「……ありがとう」
照れたように笑った。
一生懸命なエールが伝わったと、同時にりんも笑顔になる。
…と、その時。
翔「俺運んどく。先輩らまだかってうるさいねん」
友「『!!』」
急に現れた張本人の姿に、2人はびくーっと体が跳ねた。
そんな様子に首を傾げただけで、翔太はスイカの乗った皿を持ち早足で去って行こうとする。
『ゆ、友香里ちゃん…!』
友「…………ッ」
りんは咄嗟に名を呼び、友香里は拳をキュッと握り締めた。
友「…しょ、翔太!」
思いっきり叫べば、足を止めて振り向かれる。
翔「何?」
友「あ、あんな」
ドキドキと、りんも自分のことのように緊張していた。
友「こ、この水着どうや…?」
翔「?どうって…」
友「か、かわええ、やろ!」
何故か前提になる口調。
翔太はびっくりしたような顔をして、真っ赤になる友香里を見つめる。
暫くして、ふいっと視線を逸らした。
翔「……まぁ」
その顔は微かに赤くて。
友「ほ、ほんまに…?」
翔「おん」
「あん時はごめん」と、付け足すように呟く。
友香里は瞬きを繰り返し、目の前の男を凝視した。
友「…もう、ええっちゅーねん」
友香里が口元を緩めると、翔太は頭を掻きながら小さく笑った。
一歩近付いて来た為、りんも一緒になってドキリとする。
翔「ほんますごいな、パットって…」
友「…な!」
染々と言われ、一瞬にして天から地へと突き落とされた気がした。
友「ア、アホ翔太!」
翔「いてっ」
ボカッと思いっきり力を込めて頭を叩く友香里。
先程の甘い雰囲気は何処へやら、いつもの喧嘩口調に戻ってしまった。
『(……良かった、)』
友香里も翔太も、気持ちはきっと同じ。
片想いが、いつか両想いだと気付くことを祈って。
『素直に……か…』
友香里は頑張って一歩進んだ。
けれど…自分はどうなのだろうか。
りんは服の裾をギュッと握った。
金「なぁなぁ、もう帰るん?まだいようやぁ」
千「金ちゃん、また来年こよな」
名残惜しそうに何回も振り返って、海を見つめる金太郎の頭をよしよしと宥める千歳。
あっという間に陽は沈み、お開きとなった。
りんも私服に着替えて、やっと羞恥心から抜け出せたと秘かに安堵していた。
昼間と違って涼しい風。
心地好くて、差し込む夕陽に思わず目を細めると…視界の先に彼が映った。
歩く皆の中、足を止めて海を眺めている。
どうしようもなく溢れ出す、愛しい想い。
この気持ちが、恋と言うのなら……
今すぐに、伝えたい。
りんはだっと砂浜を蹴って走りだした。
無我夢中で走り、たった1人を瞳に映して。
そのまま広い背中に抱き付くと、その拍子に白石の体は前に押し出された。
白「りんちゃん…?」
名前を呼ばれて、コクンとゆっくり頷く。
我ながら何て大胆なことをしてるのだろうかと、りんは顔を真っ赤に染めた。
白「……どないしたん」
白石の声音が優しくて、胸の辺りが熱くなる。
トクントクンという鼓動は、彼に聞こえてるのだろうか。
腰に回されたりんの手を、白石はそっと優しく取った。
りんは腕を解き、そんな白石に首を傾げれば…くるっと振り向く。
『しら「ほんま、何やねん……」
夕陽が反射して良くわからないけれど、白石の顔は赤く染まっていた。
口元に手を当てて横を向く姿を見ていたら、りんの顔も負けじと真っ赤に染まる。
『あの、ご、ごめんなさい……///』
数秒間の大胆さは何処へやら、すっかり小さくなって俯いてしまった。
紅「…もう帰るでー…お2人さん」
友「りんちゃんって大胆やなぁ…負けたわ」
『ふぇ!』
じーっと観察するような視線を感じ、振り向けば。
全員が揃ってこちらを見ていた。
小「んも~アツアツなんやからぁ☆」
ユ「おどれら、イチャイチャしよって……」
金「健~見えへんよ~」
金太郎の目に自身の手を添え、小さく苦笑する小石川。
カァァと沸騰しそうな程顔を真っ赤に染めるりんの手に、白石の手がそっと触れた。
驚いて顔を上げれば、柔らかく微笑まれて………
友「りんちゃん…!?」
りんはくらりと気絶したのだった。
『き、今日はありがとうございました。楽しかったです』
白石の家の前でペコリと頭を下げるりん。
さっきまでのことが忘れられず、意識してしまって目が合わせられていない。
白「うん、また明日な」
そんなりんを気にすることもなく、白石はニッコリ笑って小さな頭を撫でる。
ドキンとしながらも、何とか『おやすみなさい』と言えたりんは立ち去ろうとするのだが、
ガシッと友香里に腕を掴まれた。
友「今日な、両親とも親戚の家行ってていないねん」
『へ?』
初耳だと目を見開く。
友「やからな、折角やし…」
友香里はニヤッと笑い、りんの背を力強く押した。
同様に白石も紅葉に押され、2人が家の中へ入るとドアを勢い良く閉められた。
ガチャリと、外側から鍵を掛けられる。
紅「堪忍な蔵ノ介。鍵はさっき奪っといた」
白「はぁ!?」
友「くーちゃん、優しくするんやで~」
『ぇえ!ゆ、友香里ちゃん!?』
反論の声も虚しく、2人の気配は徐々に遠ざかってゆく。
ポカンと開いた口が塞がらず、暫く呆然とする。
白「やられた、なぁ」
白石の声で、頭が真っ白になった。
神様。
これ以上ドキドキしたら、心臓が壊れてしまいます。