浪速のバカンス
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大阪。とある駅の前で、青年が改札口を見つめていた。
彼が待っているのは…1人の女の子。
自然と腕時計に目がいき、何度も時間を確認してしまう。
金「りんまだなん??」
紅「そうやなぁ、もう着いてもええ頃何やけど」
青年、白石の後ろからヒョコッと顔を覗かせた金太郎と紅葉。
心の声を代弁された気がして、白石の眉がぴくっと吊り上がった。
白「……何で自分らおるんかな?」
そもそも、元は1人で迎えに行くはずだった。
紅「ええやん。りんちゃん家に泊まるんやし」
金「独り占めはズルいでー!白石!!」
白「…………」
そう、りんは2泊3日で紅葉の家に泊まることとなっていた。
お互い部活もなく久しぶりのオフだったので、夏休みを利用してりんが大阪に遊びに来ることになった。
白石の家に泊まっても良いのだが…そこはきちんとしたいので、すぐ近所にある紅葉の家となったのだ。
金「あ、りんや~!」
金太郎の声で一斉に振り返ると…
そこには、今まさに改札口を出ようとしているりんの姿が。
顔を上げて白石に気付いたのか、ふわっと微笑む。
りんの足が速まるのと同時に、白石も駆け出した。
両手を広げて抱きしめる体勢に入った時、
金「りん~!!」
『きゃ…!』
白石の脇を高速で通り過ぎた金太郎は、ガバァとりんに抱き付いた。
『金ちゃん…来てくれたんだ』
金「当たり前やん!!」
「会いたかったでー!」とピョンピョン飛び跳ねる金太郎。
りんは少し恥じらいながら笑い、ギュッと抱きしめ返した。
白「……………」
最初のハグ→言いたい言葉を全て先に越された白石のオーラは、黒いものと変化してゆく。
しかし、無邪気にはしゃいでいる金太郎は全く気付かない。
紅「……金ちゃん、そろそろ離れよーか」
そんな白石の様子を呆れつつも見ていた紅葉は、金太郎の両肩を掴み自分の元へと引き寄せた。
ブーブー文句を言う金太郎にりんは思わず小さく笑っていると…手に持っていた荷物の重みが、ふと消えた。
顔を上げれば、ニッコリ笑う白石で。
白「大変やったやろ?」
『いえ!そんなことは…』
「お疲れさん」と微笑みながら頭を撫でられる。
さり気なく荷物を持ってくれたことにお礼を言うと、また柔らかい笑顔を向けられた。
白「ん?」
無意識のうちにぼおっと見惚れてしまっていたらしく、白石に首を傾げられてりんは初めて我に返った。
『あ、えと…///新幹線の中で、ずっと白石さんのこと考えてたから……今目の前にいることが、何だか嘘みたいで』
正直に言い過ぎたと、りんの頬はりんごのように真っ赤に染まる。
顔を俯かせていると、ドサッと持ってくれていた荷物が下に落ちた。
りんが顔を上げるや否や、真っ正面からギュウッと抱きしめられて……
『!!?あの///』
慌てるりんだが、更にギューッと強く力が込められる。
ドックンドックンと、鼓動が忙しなく鳴りだす。
白「……う……で…ん」
『へ…』
白「………りんちゃんを、……充電」
背中越しに囁かれた白石の声に、カァァと顔が熱を帯びていく。
りんも怖ず怖ずだが、気持ちに応えようと自身の腕を伸ばした。
紅「充電禁止!!」
『!はわわ…っ』
ビシーッと2人の間にチョップを咬ます紅葉。
紅「公衆の面前で何咬ましとんねん!」
白「……金ちゃんもしてたやん」
紅「拗ねるなー!!」
不機嫌に眉を寄せる白石に、ハァと大きな溜め息を吐く紅葉。
りんは駅周辺を慌てて見渡し…自分がしていた行動に対して、改めて顔を真っ赤に染め俯いたのだった。
金太郎と白石と一旦別れたりんは、紅葉に家の中を案内されていた。
紅「ここがバスルームに、あっちがトイレ。狭いけど適当に寛いでってええからな」
『はい!ありがとうございます!』
部屋は紅葉と一緒と言うことで、荷物を置くとりんは丸いテーブルの前に正座して座った。
その時、部屋の襖がトントンとノックされた。
「ジュース持って来たで~」
紅「お、オトン気ぃ利くやん」
オレンジジュースを片手に姿を見せたのは、紅葉の父親。
体格も良くがっしりとしているが、顔形は整っていて、改めて見ると紅葉が父親似なのがわかった。
さっきは店の方が忙しそうだったので、挨拶が遅れてしまっていた。
『初めまして、越前りんです。今日からお世話になりますっ』
慌てて立ち上がると、りんはペコリと頭を下げた。
「何の何の。狭いとこやけど寛いでってなぁ」
紅「それさっきうちが言うたから」
「おーそうか!」
「こりゃ失敬」と頭を掻いて笑う父に、呆れつつも笑う紅葉。
2人を見て、仲が良いんだな…とりんも頬を緩ませた。
『あの、腰の具合はどうですか?』
「え?あーもうこの通りピンピンしとるで!!」
自身の腰をバンッと叩く姿に、ほっとするりん。
合宿先で紅葉から腰を痛めていると聞き、心配していたのだ。
紅葉父は顎に手を添えながら、りんをじーっと見つめる。
『?あの、』
「話には聞いてたんけど…ホンマにお人形が座っとるみたいやな」
小さいってこと!?とガーンと1人ショックを受けるりん。
そんなりんをお構い無しに、どんどん話を進めていく紅葉父。
「いやー蔵ノ介くんも良い彼女捉まえたもんやなぁ。よっしゃ、将来結婚して家の店を継ぎ「黙れやオトン」
紅「ほら、もう行かな店混んでまうで」
「む~何やねん」
まだ不服そうな顔をしながらも、紅葉にぐいぐい押され紅葉父は部屋を出て行った。
パタンと襖を閉めると、紅葉は疲れたように溜め息を吐く。
紅「堪忍な、煩くて」
『いえ!可愛いお父さんですね』
紅「そうか?」
楽しそうに笑うりんに紅葉は首を傾げる。
やっと落ち着いたように思えたが……
再びバタバタと階段を駆け上がって来る足音が響き、勢い良く襖が開いた。