桜の下で 前編
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突然ひょいと携帯電話が耳から離されて、後ろを見ると倫子が変わりに耳に当てていた。
いつの間に背後にいたのかと、りんは目を丸くして驚く。
倫「蔵ノ介くんセンスがいいから助かったわ。良く行くの?」
『(く、蔵ノ介くんって…私も呼んだことないのにっ)』
語尾にハートマークを付けるように話す母に呆然としていると、突然ウィンクをされた。
手に持っていた紙袋を差し出して、゙開けて見でとジェスチャーする。
りんは不思議に思いながら覗き、そっと取り出してみれば……
それは、真っ白のふんわりしたワンピース。
袖はキュッとなるデザインで、控え目にレースが付いていて…可愛らしいデザインだった。
倫「それね、蔵ノ介くんが選んでくれたの」
『ふぇ、白石さんが?だ、誰に…?』
倫「りんに決まってるじゃないの」
「他に誰がいるのよ」と苦笑する倫子に、りんは何故自分にと混乱する一方。
『何で急に…?』
倫「だってーりんってこういう服あんまり着てくれないから。
蔵ノ介くんが選んでくれたのなら、喜んで着てくれるかなと思って」
それを聞き、驚きながらももう一度洋服に目を向ける。
『(こ、こんな可愛いの私に似合うのかな…)』
少し恥ずかしくて。
だけど、それより嬉しくて。
『…嬉しい…』
ぎゅっと抱きしめるように、腕の中に包み込んだ。
倫「ふふ、蔵ノ介くん聞いた?りんすっごい喜んでるみたい」
『!!』
まだ通話中だったことを今更ながら思い出し、りんは慌て始める。
「はい、」と華やかに微笑む母から携帯を渡され、軽やかな足取りで部屋から出ていってしまった。
…その後どんな会話をしたのかは、覚えていない。
だけど、電話の向こうの彼は嬉しそうに微笑んでる気がした。
翌日、りんとリョーマは皆との待ち合わせ場所に向かっていた。
四天宝寺の皆は白石が駅まで迎えに行き、それから合流することになっている。
良く晴れた青空。
空気もぽかぽかしていて、絶好のお花見日和だった。
『晴れて良かったねーお兄ちゃん!』
リョ「…ふぁ、うん」
リョーマはまだ眠いのか欠伸を繰り返している。
(注※もう昼間です)
だが隣で歩くりんを見ては、眠気なんか覚めてしまった。
首には何個も大きな水筒をぶら下げ、おまけに重そうなランチボックスを両手で抱え込んでいて。
小さい体には無理があるだろう大荷物に、思わず瞬きを繰り返してしまう。
リョ「…何でそんなに荷物多いの?」
『え?だって四天宝寺の皆さんもいるし、桃城先輩もいるから…』
『ちょっとはりきり過ぎちゃったかな?』とニッコリ笑うりんは、何でもないように見えた。
そうこうしている間にも、待ち合わせ場所の駅に着く。
菊「こっちこっち~」
手を振る菊丸に気付き、近付いて行く二人。
既に皆集合していた。
不「やあ、二人共」
河「久しぶりだなぁ。元気だった?」
『はいっお久しぶりです!』
たまに練習を見に来てくれるのだが、やはり高校生になるとなれば忙しいのか、皆と顔を合わせる機会も少なくなっていた。
大「越前も久しぶりだな。アメリカはどうだった?」
リョ「はい、色々勉強になったっス」
桃「とか言って金髪美女と遊んでたんじゃねーの?」
『!き、金髪美女……』
桃城の言葉に衝撃を受けるりん。
その人物像を想像したら悲しくなり、だんだんと顔を伏せてゆく。
リョ「金髪美男子ならいたけど」
桃「なーんだ、つまんね…ってりん!?」
『うう…』
ショックで落ち込んでしまったりんは、既に泣きそうだった。
近寄ろうとするリョーマより先に、すっとりんの手から大きなランチボックスが消えた。
振り向けば、静かに自分を見据える手塚の姿。
『あ、ありがとうございますっ』
手「…いや、」
『手塚部長、明後日にドイツへ行くんですよね。お見送り行きますね』
手「ああ、ありがとう」
ほわほわと、周りに花が飛んでるような雰囲気になる。
泣きそうだったりんもすっかり笑っていて、その切り替えしの早さに皆は驚いていた。
不「あの二人って仲良いよね」
リョ「………」
リョーマは途端に機嫌が悪くなり、深く眉を寄せる。
桃「(…やっぱ変わってねぇか)」
リョーマに金髪美女なんてほど遠いと、桃城はその姿を見ながら思ったのだった。