愛結び
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リョ「本当に帰るの?」
ク「親父うるせぇし、朝には戻ってねーと」
別荘の前で、リョーマとクリスは向かい合っていた。
リョ「今度りんに何か飲ませたら…「はいはい、悪かったって」
次に何を言われるのかわかっているので、クリスは言葉を制する。
ク「媚薬っつっても、弱い奴なんだけどな。でりんは?」
リョ「…白石さんの部屋。くっついて離れないから」
「効果絶大だな」と笑うクリスを、リョーマは睨み付けた。
アメリカンジョークとでも言ったなら、殴ってやろうと拳に力を入れる。
ク「りんのことは頼んだ。
俺は傍にいてやれないから」
そう言った時の瞳が、切なげに見えた。
彼の淡い気持ちは、リョーマも昔から良く知っているから…何も言えない。
「じゃあな」と背中を向けたクリス。
リョ「クリス……その背中の刺青、かっこいいじゃん」
ふと、足を止める。
顔だけ振り返ると、リョーマはニッと笑っていた。
クリスの脳内に、一番楽しかったあの頃の記憶が蘇る。
家柄とか、見た目とか。
関係なく接してくれた…親友。
ふっと口元を緩めた。
ク「だろ?俺も気に入ってる」
夏の夜は、風が心地好い。
窓から風に乗って、微かな潮の香りが鼻を掠めた。
りんはゆっくりと瞼を上げる。
『(……ここは?)』
見慣れない部屋の小さなソファーに、自分は寝ていたみたいだ。
頭を混乱させていると、ふと左手に何かを握っていることに気付いた。
それは白のYシャツで、何処か見覚えがあった。
『…白石さんの…』
りんは慌てて立ち上がり窓を開けた。
暗くて良く見えないが、浜辺の方に人の影がある。
大きな声で名前を呼ぶと、その人は振り向いた。
りんに気付くと、ふわっと笑ったのがわかった。
ドキンとなる胸を押さえて、その顔を見つめていると…こっちと言うように、手招きをされる。
コクンと頷き、走りだした。
乱れた息を調えながら、一歩ずつ近寄っていく。
白石は腰を下ろし海を眺めていて、話し掛けるのに躊躇ってしまう。
スゥと大きく息を吸った時、急に振り向いた彼と目が合ったので、りんの心臓はドキーンと固まった。
白「はは、シャツ持ってこんでええのに」
『ふぇ!…あ、』
自分の手元には、先程まで握っていた洋服。
余程慌てていたんだと恥ずかしくなり、りんの顔は真っ赤に染まった。
そんなりんに白石はふはっと笑い、ぽんぽんと自分の隣を叩く。
りんは素直に頷いて、その場所へ静かに座った。
『あの…このシャツは…?』
白「あー…ちょっとな、堪えられんくて…」
『?』
白石は、自分の服を握り離れようとしなかったりんを思い出す。
そんな事実を知りもしないりんは、言いにくそうな白石を見つめ首を傾げた。
白「…って、覚えてへんの?」
『?何をですか?』
白「…………」
大暴走していた自分のことは、すべて覚えていないらしい。
白石は何処か遠い目をして海を眺めた。
『…あの、白石さん』
りんは、そっと隣を見上げるようにして言う。
『財前さんと、2人きりになって…ごめんなさい』
白石がもし、誰か他の女の子と2人きりになったとしたら…
自分は間違いなく、嫉妬する。
彼もきっと、同じ気持ちなんだ。
白石は腕を伸ばして、りんの頭を優しく撫でた。
白「俺もごめんな。あんなこと聞いて…」
『あ、そのことなんですけど……えと、』
白「わかっとる。りんちゃんは俺のことが大好きなんやな」
『!!///』
告白する前に告白された気がして、カァァと顔を真っ赤に染めるりん。
『は…い』と小さな声で、でも確実に頷くと、白石はそれはそれは嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔に、りんはどうしようもなく胸が締め付けられて。
『(…ずるい)』
気持ちがばれてるなんて、そんなに顔に出やすいのかな…と自身の頬に両手を添えた。
が、その手はすぐに白石に掴まれてしまった。
驚いて顔を上げると、真剣な瞳を向けられて。
白「…財前に、どこ触られた?」
『ぇ、えと、』
手を握る力は優しいのに、口調には強い力が込められている。
『手を…』
そう言えば、両手を握られる力が強くなった。
白「後は…?」
『えと…多分頬を撫でられて、』
記憶を思い出しながら言うりんの頬に、白石の手が移動する。
まるで割れ物を扱うみたいに優しく撫でられて、ドキドキと鼓動が忙しく鳴りだした。
その指は、りんの唇をなぞる。
白「…ここは?」
ドクンと、鼓動が鳴る。
りんは俯きながら、ふるふると首を横に振った。
そっと顔を上げると、白石の瞳には確かに自分が映っていて。
その瞳に見惚れている間にも、傾けた白石の顔が近付いて来る。
思わずギュッと強く目を閉じるが、
白「…アカンな」
目を開けると、白石は困ったように笑っていた。
白「俺な、りんちゃんに初めてあった時…真っ白な子やと思ったんや」
『…真っ白?』
首を傾げるりんと、幼い頃の彼女の姿を重ねる。
白「純粋で真っ直ぐで……今でも、それは変わらんから」
あの時芽生えた小さな想いが、どんどん大きくなって。
今の方が、ずっと好きで。
白「緊張すんねん……」
りんは驚いて白石を見つめた。
そんなの、自分だけだと思っていたのに。
砂浜に視線を落とす白石の顔が微かに赤い気がして、りんはくすりと笑った。
『白石さんも私のこと美化してます。真っ白じゃないのに…』
顔を上げた瞬間、りんはふわりと微笑んだ。
『もう…白石さんの色に、染まってますから』
一瞬だけ白石の目は見開かれた。
だけどすぐに、りんの大好きな笑顔になる。
白「…まだ甘いで」
りんの頬に手を添えて、白石はすっと目を細めた。
白「もっと、染めたる」
ドキンと鼓動が鳴ったのは、何回目だろうか。
『(ほ、本当に、緊張してるのかな……)』
絶対絶対、自分だけだと思う。
夜空に輝く満面の星空の下で、2人は見つめ合う。
砂浜に映る大きな影と小さな影が、そっと重なった。