無人島
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真っ直ぐな瞳を向けられて、りんは顔を縦に振った。
白「…何かされへんかった?」
何か…?と、りんはその時のことを思い出していく。
『財前さん、上着を貸してくれて…』
白「それで?」
何処か低い声音に、ドクンと鼓動が鳴った。
『そ、それで…』
本当のことを言った方が良いのかと、言葉に詰まる。
けれど、白石の瞳には逆らえない。
『練習を、してくれたんです』
白「練習?何の、」
『雰囲気作りの…』
白石の眉がだんだん寄せられていく。
『私が白石さんと、キ、キキス…を、まだしてないって言ったら……』
俯いて、言葉を絞るように言うりん。
白「……何やそれ」
聞いたこともないような低い声に、びくんと体が揺れた。
『でも手を握られたくらいで、大したことじゃ…』
白「手?大したことやん!」
大きな声に体が跳ね上がった。
彼の怒りに満ちた表情は…確かに自分に向けられている。
白「自分…隙ありすぎんとちゃう?」
ハァと呆れたように溜め息を吐かれ、りんはぐっと唇を噛んだ。
白「警戒しなすぎゆーか…男を美化しすぎや」
更に溜め息を吐く白石にりんは、
『確かに…私はぼーっとしてるかもしれないけど、白石さんは勘違いしてます』
りんも口調に刺が出始める。
ギュッと自分の服の裾を掴んだ。
『財前さんはいつもからかってくるけど、優しい人です。だから…財前さんは悪くない』
白石はきっと、自分と財前の仲を誤解している。
ヘタレな自分に同情して、教えてくれただけで。
そんな風に勘違いしたら…彼に失礼だ。
白「…財前財前って」
急に声音が弱々しくなったので、りんは顔を上げた。
白石の瞳には動揺する自分の姿が映っていて。
『しら…』
りんが手を伸ばすより先に立ち上がった為、その手に触れられなかった。
白石は背中を向けたまま、足を止める。
白「…りんちゃんは、誰が好きなん?」
その言葉だけを残し、白石は振り向かず去って行った。
『誰って…』
そんなの、
『決まって…』
決まってるのに。
堪えていた雫が、
握り締めていた手の平に落ちた。
金「あ、白石ー何処行ってたん?」
皆がコートに集まる中、真っ先にその存在に気付いたのが金太郎だった。
健「…どうかしたんか?」
白石の表情を伺うようにして、小石川は問い掛ける。
「いや…」と力なく微笑み、白石はコートを見渡した。
白「…財前はおらんの?」
小「光?」
謙「財前なら、さっきボール拾いに浜辺の方行ったで」
「金ちゃん飛ばしすぎや」と謙也が軽く頭を叩けば、金太郎は「堪忍~」と両手を合わせた。
恐らく、金太郎が持ち前の必殺技を咬まし、財前がとばっちりを受けたのだろう。
白「ちょお抜けるから、後は頼んだで」
健「あ、ああ…」
小石川の肩にぽんっと手を乗せて、白石は浜辺の方へ歩きだした。
ユ「何や…様子可笑しくあらへん?」
小「…外野はおとなしゅうしとった方がええわね」
金「??何の話や?」
染々と呟く2人と白石を交互に目で追い、金太郎は首を傾げた。
波打ち際に立ち、青い海を眺めていた財前は、背後に人の気配を感じ振り向いた。
財「…部長」
立ち尽くし、自分を真っ直ぐに見据える白石の姿。
財前は心の隅で、来るだろうとは予想していた。
白「金ちゃんのボールあったん?」
財「はい、砂だらけっスわ」
そのボールを見せると、白石は「ほんまや」と苦笑する。
財「…ちゃうやろ」
白石の顔を見て、財前は低く呟いた。
財「言いたいこと、あるんやないですか?」
その言葉で笑い声が消えた。
目が合った瞬間、2人の視線がぶつかる。
財「俺のこと、殴りたくてしゃーないんやないですか?」
白「……俺がそうしたら、財前の気持ちは変わるんか?」
財前は一瞬だけ目を見開いて、ふっと視線を逸らした。
色恋沙汰に関しては鈍感だとばかり思っていたが、人のことになると鋭い。
…もう1人、いるが。
白「そんなんやったら、いつまでもりんちゃん気付かへんで?」
財「ならガンガンいって、あいつ惚れさせても「それはない」
財前が前を見ると、白石は目を逸らさずにいた。
白「…それは、絶対にありえへんから」
財「…凄い自信っスね」
白「そやな」
その言葉には、何の迷いもない。
りんが自分以外を好きになるなんてありえない、とその瞳が言っているようで。
財前は無意識のうちに…拳を握っていた。
財「雰囲気作りの練習ゆうても、ほんまにするわけないですやん。…でも、あいつ俺が言ったことほんまにするから、」
何処か挑発するような話し方に、白石もまた、拳を握っていた。
それは…だんだんと強い力になる。
財「あの時キスしても…良かったわ」
カァッと、頭に血が昇るのがわかった。
一瞬のうちにして、白石は財前の胸ぐらを掴んでいた。
それに合わせるかのように、波が白砂に掛かる。
財「…ほんま、りんのことになると熱いんやな」
至近距離で暫く睨み合い、やがて手を離した。
財前は乱れた襟を直しながら、白石を見据える。
財「本気になるなんて、アホらしいって思ってましたけど…」
同時に、瞳が重なった。
財「あんたから…奪ったる」
その時確かに、白石の脳内に…あの笑顔が浮かんだ。
゙りんちゃんは、誰が好きなん?゙
本当は、自信も余裕もない。
俺だけを見て、俺だけに微笑んで。
他の男になんか、触れさせない。
絶対に……