無人島
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ピチョンと、洞窟の天上に付いていた水滴が落ちる。
財「あんたは、ここで目を瞑る」
『はい…っ』
りんは言われた通りに目を瞑った。
何が起こるのかわからないが、取りあえず言われたことに従う。
財「(…アホか)」
自分は只、からかう目的でしていただけなのに。
何処までも素直で従順なりんに拍子抜けした。
財前は頬に添えていた手を戻そうとするが、
財「…………」
目をギュッと瞑り次の行動を待つりんの姿に、何故か手が離せない。
りんの真っ白な肌は、薄暗い洞窟の中で輝いて見えた。
ドクンと、鼓動が鳴る。
それは、本能的に。
財前はゆっくりと…その顔に近付いていった。
『……?』
ずっと何も言われないので、不思議に思ったりんが目を開けようとした。
その時、
「誰かおる?」
その声にパチッと目を開けると、真っ先に映るのは財前のドアップで……
『!!???』
ズザァァと音がする勢いで後ろに下がり、りんはゴンッと頭をぶつけてしまった。
『うう~』と両手で押さえて、痛そうに顔を歪める。
財「…本番は、本人にしてもらい」
その言葉にようやく状況を理解したりんは、頬を赤らめる。
意地悪く小さく笑って、財前は何事もなかったようにすっと立ち上がった。
千「財前、りんちゃん」
『ち、千歳さんっ!』
突然現れた千歳。
彼は背が高いので、洞窟内では少し猫背だった。
財「千歳先輩、何でここに?」
千「あー…ちょっと探検さんしとったら、帰れなくなって」
どうやら全員同じ事情らしい。
こうしてまた、1人仲間が増えたのだった。
千「(…財前、顔赤かね?)」
財前の顔を見ながら、千歳は首を傾げた。
翌日、合宿2日目の朝が訪れた。
別荘を朝日が照らし始め、普段なら感動する風景のはず。……なのだが。
リョ「………ふぁ」
リョーマが思わず欠伸をしてしまうと、近くにいた青学の皆もつられて大きく口を開けた。
海「……不二先輩、今何時っスか」
不「……4時半だね」
大きなソファーに腰掛ける海堂は、目の下にクマがくっきりとできている。
隣にいる不二も、明らかに疲労の表情を見せていた。
りんが心配で殆んどが寝ずに、起きて待っていたのだ。
知らされてはいるが、他校のメンバーは夜中に部屋に戻り、限界が来て寝てしまった。
ロビーで待っているのは青学、跡部、忍足、紅葉と…
白「…………」
昨晩から一睡もしていない、白石。
紅「蔵…ちょっとは寝や?心配なんはわかるけど、」
膝の上で手を組み、白石はただ一点を見つめていた。
その目にはやはりクマがあり、睡眠不足を表している。
その時、バタンとドアが開かれた。
一斉に勢い良く目を向けると、
千「皆どぎゃんしたと?」
予想もしていなかった千歳の登場に、皆は目を点にした。
頭の上に?マークを浮かべる千歳の後ろから、ひょこっと顔を覗かせたのは、
『た、ただいま…帰りました』
リョ「…りん!」
怖ず怖ずと前に出るりんへと、真っ先に駆け出したリョーマ。
『お兄ちゃん?その目どうしたの…?』
周りを見渡すと、皆同じようにクマだらけの顔をしていた。
りんは慌てて皆の元へ駆け寄ろうとするが、それより先に動いた人物がいた。
『しら……』
一瞬目が合ったが、すぐにギュッと抱きしめられた。
それは強い力で…少し苦しいくらいに。
白「無事で良かった…」
彼の…白石の切羽詰まった声に、酷く罪悪感が溢れてきて。
『ごめんなさい……』
すごく心配を掛けていたんだと、身に染みてわかった。
腕を解き、白石に頭をぽんぽんと撫でられる。
こんな状況なのにドキンと鼓動が鳴った。
『…皆さん、迷惑かけてしまって、ごめんなさい…』
向き直り、深く頭を下げるりん。
大「いや、大丈夫だよ」
河「りんちゃんが無事で良かった」
不「怪我ないかい?」
コクッと頷くと皆は安心したように笑ってくれた。
忍「…跡部、」
跡「忍足、後は頼んだぜ」
立ち上がり、ふらっとしながらも跡部は歩き出した。
彼が休めるようにと忍足も一緒に待っていたのだが、結局跡部は一睡もしなかった。
忍「(ほんま心配してたんやな…)」
白石がいなかったら、代わりにりんを抱きしめていたのはきっと……
跡部が彼女に寄せる想いを、改めて知った。
紅「あんたも頭下げや」
財「…すいませんでした」
小さく頭を下げる財前。
『違いますっ財前さんは悪くな「あの島がどんなんか、気になっとって…」
りんの言葉を遮り、財前は「すいません」と今度は深く頭を下げた。
ふと、りんの手が隣にいた白石によって握られる。
驚いて隣を見上げるが、白石は目を細め財前を真っ直ぐに見据えていた。
白「…自分も、無事で良かったわ」
優しい言葉使いなのに、その表情は何処か怒りが交えているように見えた。
繋いだ手を、更に強く握られる。
『(白石さん…?)』
対する財前も、切れ長の目を細めていて。
お互いを射ぬくような瞳に、りんは2人を交互に見上げるしかなかった。