海外合宿
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ドクンと鼓動が鳴る。
暫く見つめ合い、ハッと気付くとりんは慌てて目を逸らした。
白「…俺は、ずっと会いたかったんやけど」
白石の眉が、微かに下がりつつあった。
りんは…その表情をされると弱い。
『わ、私も…会いたかったですよ』
白「せやけど、めっちゃ楽しそうやった」
何処か拗ねたように聞こえる白石の言葉。
りんは頭の上に?マークを浮かべながら、その意味を考えた。
ふと、飛行機内で言われた言葉を思い出してみる。
゙着いたら…俺だけ構っで
りんはゆっくりと近付き、本当に自然に…ふわっと彼を抱きしめていた。
突然のことに目を見開く白石。
『…本当は、真っ先に会いたかったです……でも、』
りんは言いにくそうに言葉を詰まらせる。
腕の中にいる白石は、トクントクンというりんの鼓動を感じていた。
『いざとなったら、恥ずかしくて……』
『ヘタレで、ごめんなさい』と続く言葉に、黙って聞いていた白石の口元がふっと綻ぶ。
細くて真っ白なりんの腕を掴み、ぐいっと座らせるように下に引っ張った。
その為立っていたりんがバランスを崩し、座る白石と目線が同じになる。
さっきよりも随分近い距離に、ドキンと鼓動が鳴った。
『(ち、近い…!)』
慌てて目を逸らしついで体も背ければ、後ろからギュッと抱きしめられて。
…逃げることなんて、許さないように。
白「じゃ、約束通り構ってな?」
『…え、えと///』
りんが戸惑っている間にも、トンッと背中におでこをつける白石。
もう、心臓は尋常じゃない程ドキドキと高鳴っていた。
『(…白石さんって、こんなに甘えん坊だったんだ)』
テニスをしてる時とは、全然違う。
やがて力を抜き、りんもそんな彼に身を預けようとした時…
跡「…りん、タオルあるか?」
『!は、はははい…っ!』
試合を終えた跡部が近付いて来て、りんは白石の腕を振りほどき慌てて立ち上がる。
タオルを持ち、小走りで跡部の元へと歩み寄って行った。
『ど、どうぞっ』
跡「ああ」
それを受け取り額の汗を拭っていると、急に殺意を感じた。
りんの肩越しに視線を送れば、どす黒いオーラを放っている白石の姿が。
跡「…………」
何かを察した跡部が、急にりんの頭に手を置いた。
と、そのオーラは更に黒くなる。
跡「……お前の男は嫉妬深いな」
『??』
意味を理解していないりんの頭上では、物凄い火花が散っていたのだった。
夜、広々とした温泉をゆっくりと堪能したりんは、夕食の前に髪を乾かしたりと自由に過ごしていた。
『まだ時間あるので、ちょっと浜辺に行ってみますね』
紅「あーうん。一人で大丈夫?」
『はい!』
腹筋や腕立て伏せをしたりと、筋トレに励んでいた紅葉に一言残し、りんは別荘を後にした。
波打ち際に降りてみると、夜だからか昼間見た海も濃い青色だった。
白砂を手に取り楽しんでいたら、遠くの方に人影があることに気付く。
近付いてみれば…見知っている人物だった。
『…財前さん?』
音楽を聞いているのか、りんが少し顔を近付けると面を上げて驚いたように目を丸くした。
『何してるんですか?』
財「…部屋うるさいねん。自分は?」
『えっと、散歩です』
えへへと笑うりんをじっと見た後、「爺さんか」と無表情でツッコむ財前。
笑っていたりんは、むぅと頬を膨らませた。
『散歩…好きなんですっ』
財「ああ、そんな感じやな」
どんな感じだろう…?と首を傾げるりん。
急に立ち上がり歩きだした財前の後を、慌ててついてゆく。
財「(犬……)」
トトト…と必死で追い掛けてくる姿が、その動物を連想させた。
『あそこにも島があるんですね』
財「?」
りんが指差す方を見ると、少し遠くに小さな島があった。
財前は「ああ…」と思い出したように呟く。
財「あそこも跡部さんの領域みたいやで。練習中言っとった」
『あそこもですか?』
感心したように、りんはその島を見つめる。
行ってみたい。
それは小さな好奇心だった。
ふと目を凝らしてみると…島から島へ、橋が掛けてあることに気付く。
『……私、行ってみます』
財「は?行くって…」
『少しだけ…すぐ戻って来ます!』
財前の言葉を待たず、だーっと駆け出して行ってしまったりん。
残された財前は、だんだんと荒くなってきている海を見渡した。
財「……はぁ」
深い溜め息を零して、その後を追った。
長い橋を一気に駆け抜けて、ようやく島に着いた。
…のだが、
『あれ、橋が…』
財「消えた…?」
満潮で橋が見えなくなっていた。
渡れなくもないが…びしょびしょに濡れてしまうだろう。
『ご、ごめんなさい…』
軽率な行動をしたと、しゅんと頭が下げる。
そんなりんを見て、財前は小さく息を吐いた。
『い、いつ潮が引けるでしょうか…』
財「…さぁ、早くても朝方やないか?」
『良かったぁ、朝方……』
朝方?と、ピキッと音を立て固まってしまった。
『(…ってことは、)』
慌てて隣に立つ財前を見上げる。
『(…朝まで、二人きりってこと?)』
長い長い夜の、始まり。