妹愛
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*リョーマside*
「嬉しいなぁ、越前くんから誘ってくれるなんて」
と俺の腕を無理矢理絡めるのは……何とか梓(アズサ)先輩。
平日の学校帰り、俺は映画館に向かっている。
久しぶりに部活もなく…何となく家に帰りたくなかったから、この人を誘った。
梓「ねぇねぇ、何の映画見るの?」
リョ「ああ…これ」
梓「えーこれかぁ。あ、日本語吹き替えにしてよね」
ピキッと何かが切れた音がしたが、ぐっと堪えた。
何でこの人とこんな関係になったのか、今だに面倒くさいことをしたと思う。
本当は、りんを誘おうと思っていた。
『明日ね、その…大阪に行くことになったの。だから部活に遅れちゃうかもしれなくて…っ』
俺の部屋に訪ねて来て、顔を真っ赤にして小さくなって。
りんがあまりにも嬉しそうに話すから…言えなかった。
りんは、好きな人と付き合うことになった。
当たり前だと思う。
あの人もりんに想いを寄せていたんだから。
りんが幸せなら、それでいい。
『菜々子さん、こうかな…?』
菜「そう。で、耳の横でピンを留めて…」
だけど、
菜「可愛い!きっと白石さんもそう言ってくれるわよ」
『えへへ///本当?』
どんどん可愛くなるりんを見て
面白くない、自分がいた。
りんの心は、どんどんあいつに支配されていく。
一番が、変わっていく。
じゃあ、俺は?
俺の存在に、意味があるのだろうか。
そんな時だった。
梓「越前くん、私と付き合わない?」
見たことのない三年生の先輩だった。
付き合うことに興味関心がない俺は、すぐに断わったが、
梓「じゃあさ、妹さんの代わりでいいよ」
リョ「…は?」
梓「付き合ってから、好きになってくれていいから…ね?」
代わりとか、言ってる意味が良くわからなかったけど。
伸ばされた手に、気付いたら自分の手を重ねていた。
寂しさを埋めるように…
梓「越前くん、越前くーん…」
リョ「………」
梓「お兄ちゃんー?」
ハッとする俺を見て、キャハハと楽しそうに笑う先輩。
馬鹿にされたのか?
悔しさと恥ずかしさから腕を解こうとすれば、向こうから離した。
梓「…ね、家来ない?」
リョ「え?」
梓「家、帰りたくないんでしょ?丁度いいじゃない」
夕飯作ってるだろうから、りんに連絡しないと。
゙超勝手゙
リョ「………」
携帯を開けて暫く考え、パタンと閉じた。
リョ「…行きます」
梓「本当ぉ?じゃあ行こ、行こー!」
また腕を絡められ鬱陶しく眉を寄せるが、先輩はそんな俺にお構い無しに進んでゆく。
何だかペースに巻き込まれてるような…と、自分自身に溜め息を吐いた。
梓「ジュース持ってくるから待ってて!」
先輩はそう言うと、部屋を出て行った。
一人取り残された俺は取りあえず鞄を置き、部屋を見渡してみる。
(意外とシンプルだな…)
ぬいぐるみだらけの妹の部屋を思い出し、あいつが子供っぽいのか…と自然と頬が緩んだ。
ガチャッとドアが開いたと同時に、顔を元に戻す。
梓「お待たせ~どしたの?」
リョ「いや…先輩、家族は?」
ジュースを丸テーブルに置く先輩を見ながら、ふと疑問に思ったことを問い掛ける。
梓「家ね、両親共働きなんだ。大抵誰もいないよ」
リョ「…ふーん」
結構自由な人だと思ってたから、それ程驚きはしなかった。
ジュースを飲む手を止め、「…ねぇ」と呟いて俺と視線を合わせる。
梓「越前くん、本気で付き合わない?」
リョ「え?」
梓「私のこと、どう思ってる?」
どうって……
口を開ける前に、急に後ろに倒された。
トンッと床に背中が付き、驚く俺の上に跨がる先輩。
リョ「ちょ…っ」
押し倒されてるんだよな…?
…重いんだけど。
梓「越前くんもその方がいいんじゃない?」
リョ「…どうゆう意味、」
梓「妹さんのこと、忘れさせてあげるよ?」
眉を寄せていると、フッと笑われる。
忘れる…りんを?
梓「辛いよね?…妹さんにこういうこと、出来ないんだもんね」
スッと俺の頬に手を這わせる先輩の手は、冷たかった。
梓「もう開放されてもいいんじゃない?越前くんは越前くんで、楽しまなきゃ…」
ゆっくりと先輩の顔が近付いて来る。
開放…?
俺が、りんに?
違う、
開放されるのは…りんの方だ。
リョ「…今わかった」
近い距離にあった先輩の顔が、俺と目が合った瞬間徐々に遠退いた。
リョ「…すいません、俺には無理です……忘れるなんて」
あんなに大切な妹を、忘れられるわけないじゃないか。
リョ「…ずっと縛り付けてた。そうしないと、俺が一番傍にいないと、あいつ守れないから…」
梓「……」
―お兄ちゃん!
いつも俺の後についてきて、名前を呼んで無邪気に笑って
俺が傍にいないと、駄目だと思ってた。
でも、違った。
りんはもうとっくに…一人で歩いてた。
リョ「りんを必要としてたのは…俺の方だったんだ」