妹愛
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*りんside*
『……う…』
薄らと目を開けると、見慣れた自室の天井が映る。
私、あれからどうやって帰ったんだっけ……
リョ「桃先輩が運んでくれたんだよ」
『わぁ!お、お兄ちゃんっ』
私の隣にいたお兄ちゃんに気付いて、慌ててベッドから起き上がる。
『どうして…デートだったんじゃ、』
リョ「桃先輩から連絡貰って帰って来た」
『ええ!ご、ごめんなさい…』
「別に」と素っ気なく呟いて、お兄ちゃんは部屋を出て行こうとした。
布団をギュッと掴み、勇気を出して問い掛ける。
『あの女の人と…つ、付き合ってるって本当…?』
冗談だって、嘘だって
そう言ってくれることを…私、期待してる。
お兄ちゃんは足を止め、背を向けたまま。
リョ「……うん」
ズキンと胸が痛む。
『そっか…き、綺麗な人だねっ』
リョ「そう?」
何だかお兄ちゃんが、急に遠い。
私の知らない…お兄ちゃん。
『あ、名前何て言うの?タメ口使っちゃ駄目だよ。仮にも先輩「りん」
少しでも明るくしようと話を振っていたら、お兄ちゃんが私を見ていた。
いつもと違う、冷たい瞳で。
リョ「…りんには、関係ないよ」
゙関係ない゙
その通りだ。
お兄ちゃんが誰と話してたって、どんな人と付き合ってたって、私には関係のないことで。
それがこんなに悲しいことだなんて…知らなかった。
『…そんなに秘密にすること、ないのに』
ぐっと唇を噛み締めて、俯きながら言葉を絞り出す。
顔を上げてお兄ちゃんの顔を見たら、泣いてしまいそうだったから。
暫くそうしていると、ハァと短い溜め息が聞こえた。
リョ「りんだって、一々俺に言わないじゃん」
『え…』
リョ「なのに俺だけ言わなきゃいけないの?」
顔を上げた時、その強い口調と違って、お兄ちゃんは寂しそうに顔を歪めていた。
リョ「…超勝手」
『お兄ちゃ…』と言い終わる前に、お兄ちゃんは部屋を出て行ってしまった。
パタンとドアの閉まる音が、静まり返った部屋に響いた。
雪「……で、あんたはずっとそうしていると、」
『だってだって……ふぇ…』
翌日の放課後の教室、もう皆とっくに帰宅していて、残っているのは私と雪ちゃんだけ。
今日一日ずっと塞ぎ込んでいた私を心配して、雪ちゃんは話を聞いてくれたのだけれど、
『お、お兄ちゃんに嫌われちゃった……』
話してたら凄く悲しくなってきて、涙が止まらず溢れてくる。
雪「いや…それはないでしょ。(りんのお兄ちゃんに限って)」
『…だって凄く怒ってたもん…』
雪「何か理由があるんじゃない?いきなり彼女って、」
彼女…彼女…とエコーのように頭の中に響いてきて、再び机に伏せてしまう。
『あの人と一緒にいるお兄ちゃんなんて……見たくないよぉ』
本格的に泣き始める私に雪ちゃんは、深く溜め息を吐いた。
゙超勝手゙
お兄ちゃんに言われた言葉が、胸にずっと残ってる。
人は誰だって、触れられたくないことがあるのに。
妹だからって…踏み込みすぎたのかもしれない。
本当に本当に勝手だ。
雪「…もう良い機会なんじゃない?」
『…機会……?』
雪「そ、兄離れする機会」
それを聞いて顔を上げる。
『兄離れ…してないかな?』
雪「してないでしょ!この無自覚娘が!!」
(兄離れ…)
自然と私の傍には、いつもお兄ちゃんがいて。
でも今思えば、傍にいたいのは私だけだったのかもしれない。
何をするのも一緒が良かった私を…お兄ちゃんは鬱陶しかったんじゃないかな。
要「はいはい、そこまでね」
雪「『わ!』」
突然ぬっと現れた水城先生。
いつからそこに?と私と雪ちゃんのどちらかが言う前に、先生は答えた。
要「りんってブラコンなんだな」
『!』
「そんな感じ」とニッコリ笑う水城先生。
始めから聞いてたんじゃ…と焦る私の横で、雪ちゃんは目をハート型にさせていた。
雪「はいはい!私も雪って呼んで下さい!!」
要「ん?あー…と、九条雪ちゃんだよな」
雪「はい!」
雪ちゃん、嬉しそう…
それにしても、水城先生って本当に怒らないんだな。
じっと見ていると目が合いフッと口元を緩められ、雪ちゃんは失神しそうになっていた。
要「今のさ、そのお兄ちゃんに言ってみれば?」
『え、』
要「゙あの人と一緒にいるお兄ちゃんなんて見たくない゙って」
からかわれてるのかな、と思ったのに、水城先生は真剣な瞳を向けていた。
『い、言えません……』
要「どうして?」
『また勝手って思われるから…そんな我が儘、言えません』
それに、お兄ちゃんを困らせたくない。
要「言い訳だな」
強い口調に再び視線を合わせば、ビクッと体が震えた。
雪ちゃんも同じだったようで、初めて見る先生の顔に驚いている。
要「゙嫌われたくない゙の言い訳にしか聞こえないな」
『…っそれは、』
図星だから、何も言い返せない。
我が儘言って、甘えたこと言って、
嫌われるのが…怖い。
黙って俯いてしまった私の頭に、温かい感触がした。
顔を上げれば、それは先生の手だとわかった。
要「…怖がるな、嫌われるわけない」
「お前のお兄ちゃんなんだろ」と、頭をポンポン叩かれる。
怖がらず、今の気持ちを
真っ正面から。
『……はい』
コクンと頷くと、優しく頭を撫でられる。
その動作は、大好きなあの人を思い出させた。
『…ありがとう、雪ちゃん……要先生!』
「頑張れりんー!」と背中越しに雪ちゃんの声援を受けながら、駆け足で走り出した。
雪「全く…世話の焼ける子」
要「可愛いよね、あいつ」
雪「え!先生もりんがタイプですか、」
要「(も?)いや?俺ガキには興味ないから」
雪「(フられたーっ)」