birthdayデート
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『わぁー高い…』
二人は今、観覧車の中にいた。
どんどん登ってゆく度、小さくなる町や人々。
窓からふと目を逸らし、りんはチラリと前を見つめた。
自分の向かい合わせに座り、窓からの景色を見つめている白石。
二人っきりの、密室。
ドキドキと鼓動が鳴りだして、意識せずにはいられない。
その視線に気付いたのか、白石と目が合った瞬間慌て始めるりん。
ハッと思い出したように、鞄に手を掛けた。
『…あの、これ』
白「?」
遠慮がちに、そっと前に差し出したのは…
リボンで丁寧にラッピングされた包み。
『いつ渡そうかずっと迷ってて…お誕生日、おめでとうございます』
そう言って、りんは柔らかく微笑んだ。
白石は少し目を見開いた後、それを受け取る。
白「…ありがとう」
開けていいかと確認を取り、そっとリボンを外す。
すると中に入っていたのは…シルバーの猫が付いた、携帯ストラップ。
『どんなプレゼントがいいかってずっと悩んで…』
りんはたどたどしく自分の携帯を取り出した。
そこに…同じストラップが付けてあって。
白「お揃い…?」
『あ、迷惑かなって思ったんです…!でも、こんなのしか思いつかなくて、』
慌てて言葉を探しているりんを見て、白石はふっと口元を緩めた。
白「…めっちゃ嬉しいで?」
カァァとりんごみたいに頬を赤く染めるりんに微笑み、自分の携帯にそれをぶら下げた。
そんな白石の姿に、自然とりんも笑顔になる。
白「…今日、りんちゃん無理してたやろ」
『え、』
白「俺に気ぃ遣って、合わせてた」
笑顔だったりんの顔が、少しだけ強張る。
何も言わなくても、白石にとってはそれが答えだった。
白「無理せんくてもええ。
…俺は、ありのままのりんちゃんが好きなんやから」
プレゼントだって、何にしようか自分のことで悩んでくれて。
そのことが…一番嬉しいのに。
『……今日は、白石さんの誕生日だから…喜ばせたくて』
小さな声で呟いた後、りんは赤くなって俯いてしまった。
白「…俺の為?」
コクンと頷く姿が、どうしようもなく愛しいと思う。
…浮かれても、いいのだろうか。
白「…さっき、俺を喜ばせたい言うたやん?」
今日は誕生日だから、
少し、我が儘を言いたくなったのだ。
白「……名前、呼んで欲しい」
ゆっくりとりんは顔を上げる。
『名前…?』
白「俺の下の名前」
そう言った瞬間、りんの顔は再び赤く染まる。
白「この名前が嫌やなくなったの、りんちゃんのお陰なんや」
8年前、彼女が自分の名前を誉めてくれたから……
少しだけ、好きだって思えた。
白「せやから…呼んで?」
僅かに上目遣いになるような角度で言えば、慌てて目を逸らされてしまう。
口を開けては思い止まり、を繰り返すりん。
白「(…おもろいなぁ)」
その姿を見続けていると、やがてりんは完全に口を閉ざしてしまった。
白石は悲しそうに眉を下げて、すっと目を細めた。
―蔵ノ介、誕生日おめでとう
―くーちゃんおめでとう!
―誕生日プレゼント、何が欲しい?
俺の欲しいものは、決して手に入らない。
君の心は、いつもたった一人に向けられているから。
―お兄ちゃん!
笑顔が、泣き顔が、真っ赤に染まった顔が、
全部、すべて、自分のものであればいいのに。
『……く……ら…』
ハッと気付いて前を向くと、俯いていたりんが自分を見つめていた。
『くら…のすけ』
ドクンと、鼓動が鳴る。
もう一度りんの口が開いた時、ガタンと観覧車が揺れた。
りんがそれに驚く前に、ギュッと体が抱きしめられて。
ドキドキと鼓動が速くなっていき、何も考えられない。
『…あの、』
白「…りんちゃん、」
柔らかい栗色の髪は、夕日のせいで金色に見える。
そっと耳に掛けると、りんの体はビクンと震えた。
白「俺のもんに、なって」
りんは目を大きく見開いた。
背中に回された腕の力が強くなって、頭も正常に働かないのに。
白「今だけでもええから…俺のもんになって」
いつもより低い声音は、微かに震えてるような気がした。
暫くして、ゆっくりと頷く。
すると急に体が離れ…白石はりんの前にしゃがみ込んだ。
首を傾げていると、ふわっと微笑まれる。
白「なら、俺のりんちゃん」
『…!は、はい///』
白「キスして」
……………。
つかの間の沈黙。
『え、え、』
白「やって俺を喜ばせたいんやろ?」
『そ、それは…///』
白「…10秒以内にせぇへんかったら、俺からするな」
『!?』
りんが慌ててる間にも、「10…9…」とカウントダウンが始まる。
ギュッと唇を噛んだ後、意を決してその肩にそっと触れた。
白石にもその行動の意味が伝わったのか、目を閉じられる。
5……4……
3……2……
1…
薄らと目を開ければ、真っ赤になって俯くりんが映る。
白「……しゃーないなぁ」
りんが目を開けた時、窓にトンッと背中が当たった。
左手は頬に、右手は窓につかれて…逃げ場はない。
頭が混乱してる間に、白石の整った顔が近付いてくる。
『(……っ)』
ギュッと強く目を閉じた時…頬に温かい感触がして、硬く閉じていた目をパッと開けた。
白「本物は…また今度な」
その笑顔は甘く、とびっきり極上で。
観覧車の扉が開くと同時に、くらりとりんは倒れたのだった。
白「楽しかったなぁ、遊園地」
『…は、はい!そうですね』
白「…そんなに離れんでもええのに、」
出口に向かって歩いている途中、白石は隣を見て小さく肩を落とす。
『え?そ、そんなことないですよ…!』
白「…………」
離れるにもほどがある、とゆうほど自分と距離を置くりん。
風船やソフトクリームを持つ小さな子供に「かわいそー」と指を差して言われる始末で。
白「…りんちゃんと手、繋ぎたかったんやけど…」
『ふぇ、』
白「あと少しでお別れなんやけどな…」
しゅんと落ち込む白石を見て、心が揺れた。
いけない!と首を横に振るが、どうしても気になって見てしまう。
『あの「あーかゆいわぁ!」
近付こうとしたりんの前に現れたのは…犬、の服装をしたユウジ。
ユ「かゆい、かゆすぎる!何やもう見てられん!」
『ユ、ユウジさん…どうしてここに…?』
突然の知り合いの登場に驚きを隠せない。
ユウジはハッと気付くと、恐る恐る後ろを振り向いた。
白「…………」
ユ「あ、あー偶然?俺も小春とデートしててなぁ」
はははと笑うが、白石から放たれる黒いオーラには勝てず、ユウジの背中には冷や汗が流れる。
ユ「あれ、こ、小春?ホンマに一緒なんやで!」
白「……ユウジ、」
「後で顔貸してな?」と柔らかな笑顔で言われ、ユウジは硬直してしまう。
勿論その会話が聞こえないりんは、ひたすら頭に?マークを浮かべていた。
あとがき&おまけ→