birthdayデート
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*りんside*
植物園を出て少し歩けば、目的の遊園地に辿り着いた。
『私、遊園地久しぶりです…!』
白「ホンマに?」
『はい。日本では5歳の時以来で。
アメリカでは良く家族と行ってたんですけど、』
あの時は身長制限があって殆んどの乗り物は乗れなかったけど、もう乗れるよね!
(今も小さいけど…)
白「アメリカの遊園地…凄そうやなぁ」
『でも私は、この遊園地も楽しいです』
乗り物も勿論だけど、こんなに楽しい気持ちになるのは、
きっと…一緒にいるのが白石さんだからで。
白「まだ乗ってないのに?」
白石さんは笑いながら私を見た。
さっき思ったことは、恥ずかしくて絶対に本人には言えない。
チラリと隣を見上げると白石さんは案内図に目を通していて、ホッと肩を落とした。
白「何処から行く?ここのジェットコースターめっちゃ怖いらしいで」
『!そ、そうなんですか…』
実は絶叫マシーンがそれほど得意ではない、つまり苦手…なんです。
(でも今日は、白石さんの誕生日だから)
喜んで貰いたい。
好きなこと、させてあげたい。
「絶叫系平気?」と不安そうに尋ねてくる白石さん。
ギュッと拳を握り締めて、向かい合った。
『はい!大好きです!』
20分後…
『うう…』
目が回る…ううん、地球が回ってるよ…
何回転もして、ぐるぐるとまだ頭が回ってるみたい。
白「大丈夫?」
『あ、はい!大丈夫です』
私の顔を覗き込むようにされて、慌てて手を横に振る。
こ、こんなことでくじけてちゃダメだよね…!
と自分に活を入れて、次の乗り物を探すように首を動かす。
白「…そろそろお腹空かへん?」
『へ?は、はい』
予想外な言葉に、間の抜けた返事をしてしまった。
数あるレストランの中から一つに絞って、店内に入る。
それは可愛らしい造りで、顔を動かしてみるとカップルが多いことに気付いた。
中でも私の正面に座る人達が…
「はい、まーくんあ~ん…」
「あ~ん…今度はめぐたんにもあげるよ~」
「もー」と言いながらもその女性は嬉しそうに口を開ける。
(…す、すごい)
これがイチャイチャする、とゆう行為なのだろうか。
目の前に広がる光景に、もし自分がされたら…と想像の世界に入ってしまう。
…………
………………
(ぜ、ぜぜったい出来ない…っ///)
ボンッと顔が一気に赤く染まり、「りんちゃん!?」と白石さんの慌てた声音が聞こえる。
誰かにヘタレ…と溜め息を吐かれた気がした。
『こ、これすごく美味しいです///』
パッと視線を下に向けて、デザートに頼んだ食べ掛けのパフェを再び口に運ぶ。
白石さんはコーヒー(多分ブラック)を飲みながら「良かったなぁ」と微笑んでいて、注文したメニューの違いに恥ずかしくなった。
今がチャンスと、渡しそびれた誕生日プレゼントを思い出して鞄の中を探る。
『あの、白石さん…っ』
意を決して前を見ると突然腕が伸びて来て、驚いて言葉が続かなかった。
口元に白石さんの指が触れると同時に、ドキンと心臓が跳ね上がる。
白「クリーム付いとる」
『!』
ペロリとその指を舐める姿に、カァァと熱くなる頬。
「甘いな」と言う感想を聞いても返す余裕なんてなくて。
(…そういうこと、しないで欲しい……)
じゃないと、心臓が保たない。
これだけで真っ赤になって動揺してしまう私は、あんな風に食べさせ合うなんてとんでもないと…強く思った。
昼食を終えると、コーヒーカップに空中ブランコ…殆んどの乗り物に乗り、久しぶりの遊園地を満喫していた。
(あ、木馬…)
メリーゴーランドの前を通り過ぎて、自然と足が止まる。
白「…りんちゃん?」
『あ、えと…昔良くお兄ちゃんと乗ったなって、』
どの馬にするか選んだりして、楽しかったなぁ。
今思えば、あの時のお兄ちゃんは仕方なく付き合ってくれてたんだと思う。
はしゃぐ子供達を見て思わず微笑んでいると、白石さんは顎に手を添え何かを考えてるようだった。
白「(…りんちゃんが木馬か……)」
『?』
白「(…全く違和感ないわ)」
ふっと口元を緩め「乗りたいん?」と、何処かからかうように聞かれて、ぶんぶんと首を横に振る。
『今は流石に…っ
観覧車はどうですか?』
白「ええよ。あ、でもまだ一つだけ…」
『??』
歩きだす白石さんに連れられてその後を追えば、
白「まだここ入ってないよなぁ」
『……!!』
足を止めゆっくりと前に視線を送ると、゙お化け屋敷゙がそこにはあった。
中から男なのか女なのかわからぬ悲鳴が聞こえてきて、体が震え上がる。
白石さんと目が合い、思わずゴクンと唾を飲み込んだ。
白「りんちゃ『む、む無理です…っあ、違う乗り物にしましょうよ!』
慌てて、全身を使って否定した。
白「…そっか、暗闇苦手やもんな」
コクコクと大きく頷く。
反対に、しゅんと残念そうに眉を下げる白石さん。
(う…ま、負けない…)
いつもいつも、この表情に心が動かされるのだ。
…けれど、やっぱりズキンと胸が痛んで。
それに、今日は白石さんの誕生日だから。
『……行きます』
白「ホンマ?」
『は、はい…!』
ギュッと拳を握り締めると、頭に手が置かれポンポンと優しく撫でられた。
白「大丈夫。絶対守ったるから」
きゅうっと胸が締め付けられた気がした。
白石さんの言葉一つで、こんなにも勇気を貰えるなんて…不思議だ。
コクンと頷いてから隣を見上げると、白石さんも微笑みながら頷いてくれる。
そして、一歩後ろについてくような形で歩きだした…