birthdayデート
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*りんside*
待ち合わせの時間まで、あと少しです。
(き、緊張する…)
自分から誘っておいて何を言ってるんだろうか。
だけどこの待ち時間が、無意識にドッドッと鼓動を速くさせる。
ふと遠くに視線を送ると、待ち焦がれた本人の姿があった。
ドキーンと体が大きく跳ねた後固まる。
私に気付いたのかニコッと笑って、さっきより足を速め近付いて来た。
『こ、こんにちは!///』
白「こんにちは」
ははっと笑うと、白石さんは私の頭に手を置いて軽く撫でた。
その動作はあまりにも自然で、一々顔を赤くする自分が恥ずかしい。
『誕生日…おめでとうございます』
白「おおきに」
プレゼント、今あげた方がいいかな…
鞄に手を掛けようとする私の姿を、じっと見つめる白石さん。
ハッと気付き、やっぱりこの服装は変なのかと不安になってきた。
白「…うん、やっぱ似合うな」
ふわっと微笑まれて、ドキンと大きく鼓動が鳴る。
こんなひらひらした可愛らしい服、ずっと気恥ずかしかったけど…
白石さんにそう言われて、少しだけ自信がついた。
そっと前を盗み見れば、白石さんはフード付きの服にグレーのジャケットを羽織り、細身のジーンズを合わせていた。
フード姿が新鮮で、それに何だか…
『…可愛い』
ぽつり呟いてしまった後、「ん?」と首を傾げられる。
慌てて何でもないと手を横に振った。
男の人って可愛いとか言われたくないんだよね…!
(お兄ちゃんも怒るし)
『あの、今日は何処に行くんですか?』
白石さんはポケットから二枚のチケットを取り出し、私はそれをじっと見つめる。
『遊園地…?』
白「うん。結構近くにあるし……嫌?」
目を丸くする私を不安そうに見つめる白石さん。
(また…!)
眉を下げて答えを待つ表情を見る度、私の心臓は壊れそうになる。
忙しく鳴る胸を押さえて、何とか口を開けた。
『…い、行きたいです、遊園地!』
元気良く身を乗り出して言ったら、白石さんは嬉しそうに笑った。
白「ほんなら行こか。こっちやで」
『はいっ』
くるっと背中を向け歩き出した白石さんの後を、慌ててついてゆく。
と思ったら急に立ち止まり、その拍子に背中に衝突してしまった。
『??』
どうしたのかな、と首を傾げる私へと振り返り、すっと手を差し伸べられる。
まだ意味を理解出来ずにいると、白石さんは少し苦笑気味に笑った。
白「…お姫様、お手を」
ドキンと鼓動が波打つ。
その柔らかな笑顔は、小さい頃に想い描いていた王子様にそっくりで。
コクンと頷き、怖ず怖ずと手を差出した。
『…はい…』
真っ赤になった私にふわりと微笑み、白石さんはその手をギュッと握った。
暫く頭がパニック状態だったけど、歩いていたら少し落ち着いてきた。
(白石さんの手、大きいな…)
お兄ちゃんと全然違う。
長くて綺麗な指なのに、手の平は少しゴツゴツしてて…私の手をすっぽりと隠してしまう。
白「…緊張しとるん?」
『ふぇ!?ど、どうして』
白「んー…手から伝わってくる」
汗ばんでるってことかな…それとも鼓動が手を伝って??
頭をぐるぐる悩ませる私を見て、白石さんは楽しそうに笑う。
(…私だけなのかな)
こんなにドキドキ緊張してるのも、何話したら良いのかわからなくなるのも。
全部全部……私だけ?
白石さん、余裕そうだし…
白「……りんちゃん」
『?はい』
白「あんま…見んといて」
顔を逸らす白石さん。
慌てて謝れば、「いや…」と擦れた声が返ってくる。
白石さんの顔が微かに赤かったけど、何でなのかはわからなかった。
白「お、もうすぐ着くで」
白石さんが向く方を見ると、遊園地…ではなくて、煉瓦張りの建物が目の前に広がっていた。
(えっと、ここは?)
建物の前にば植物園゙と書かれた看板が立て掛けてある。
白「ごめんな、遊園地はこの後でええ?」
『は、はい。私は別に…』
言いにくそうに、じっと地面を見つめる白石さん。
その姿に首を傾げていると、ふと目が合ったのでドキンとした。
白「ここな、好きな子が出来たら絶対一緒に行きたかったところなんや」
『え…』
白「俺の大好きな場所やから…どうしても、りんちゃんと来たくて」
口元を緩めた白石さんの瞳には、確かに私が映っていて。
そんなこと、思ってくれてたんだ…
『…嬉しいです、』
好きな人の好きな場所を、今日、知ることが出来た。
『白石さんの好きな場所に連れてきて貰えて…
すごく、嬉しい』
心から思ったことを伝えて微笑めば、白石さんは一瞬目を丸くした後コホンと小さく咳払いをした。
白「ほな、入ろか」
『はい!』
心成しか手を握る力が強くなったのは…気のせいかな?