両想い
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友「くーちゃん、誕生日おめでとう~!」
ドアを開けるとすぐに、パァンとクラッカーが放たれた。
白「おおきに、友香里」
健康オタクな兄のこと。
てっきり体操でもやっているのかと思ったら、白石は鏡の前でグレーのジャケットを羽織っていた。
友「どこか出掛けるん?こんな朝早くから」
白「おん。ちょっとな」
いつもより服装や髪型が決まっている気がする。
それに、全身から滲み出るほわわんとした柔らかいオーラ。
友「(何やくーちゃん、楽しそう…)」
彼をこんなに上機嫌にさせる理由は、ほんの数日前の出来事にあった……
「白石くーん、明日誕生日やね」
昼休みになり白石がお弁当を広げていると、クラスの女子が集まって話し掛けてきた。
目の前でパンを頬張っていた謙也は、落ち着いた昼が過ごせないと静かに肩を落とす。
「一日早いけど、おめでとう~」
「何か欲しいものある?」
白「んーせやなぁ…気持ちだけで嬉しいで。ありがとう」
ニッコリと笑えば、その顔を直視してしまった女子達はくらりと倒れそうになっていた。
謙「(出た、天然…)」
未だ微笑んでいる白石は、何故皆顔が赤いのかわかっていないようだ。
「ほ、ほんならね!」と集団はパタパタと戻って行った。
謙「欲しいもん、ホンマにないの?」
白「……物じゃないかもしれん」
それは、決して手に入らないもの。
何処か寂しそうに言う白石を見て、またか…と思う謙也。
その名も゙りんちゃん病゙
白石は自覚がないと思うが、彼はりんに対してはかなり寂しがりやだ。
落ち込んでいる時は、大抵りんに関係している。
変に関わるのは止そうと心の中で誓うと、ふと白石の携帯から着信音が流れた。
手に取りその名前を見た瞬間、白石の目は大きく見開かれる。
白「ちょお、ごめん」
謙「おお…」
ガタンと立ち上がり、白石は早足で教室を出た。
謙也は顔だけ振り返りながら、安心したように息を吐いた。
廊下に出て、壁に背を預ける。
白「もしもし、」
《あ、えと、こんにちは!》
電話越しに聞こえる、愛しい人の声。
気付かないうちに白石の口元は綻んでいた。
電話の内容は、こんな感じだった。
《明日…もし白石さんがお暇でしたら、遊びに行っても宜しいでしょうか?》
《誕生日…お祝いしたくて》
《…駄目でしょうか…?》
駄目な訳がない。
不安そうに聞いてくるりんが可愛くてしょうがなくて、今すぐに抱きしめたい衝動にかられるが…何とか平静を装う。
白「ええよ。…待っとる」
嬉しそうなりんの声を聞いて、白石も自然と笑っていた。
こんなに一日を楽しみに待つのは、初めてだった。
りんから電話をくれたことが、何より嬉しくて。
白「おっと、」
シルバーの指輪を忘れないよう指にはめて、家を出た。
友「(何や、デートか)」
その後ろ姿を笑顔で見送り、「いってらっしゃい」と友香里は手を高く上げて振った。
一方、りんも駅に着いたばかりだった。
『こ、この格好で大丈夫かな…』
自分の服装をもう一度見渡してみる。
何故か見られている気がして心配だ。
りんは、以前白石が倫子と買い物をした時選んでくれたという…真っ白のふわふわしたワンピースを着ていた。
髪にはクリスマスにくれたお花のヘアピンを付け、二つ結びではなくおろしている。
悩んで悩んで選んだ、誕生日プレゼントも鞄に入れて。
これから会えると思うと、緊張と喜びで胸が高鳴る。
携帯を開けて、白石の姿を瞳に映した。
携帯を開けて最初に映るのは、眠るりんの姿。
それをパタンと閉じて、白石は無造作にポケットにしまい込んだ。
『(…早く、)』
白「(早く、)」
君に会いたい。