my darling
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*りんside*
『(綺麗ーー…)』
駅までの帰り道をゆっくり歩いていると、目の前にオレンジ色の夕日が広がっていた。
ゆっくりゆっくり沈んでゆく光景が幻想的で、吸い込まれるように魅入ってしまう。
隣を歩く白石さんをそっと見上げると、同じように沈む夕日を見つめていた。
『(まだ、残ってるみたい……)』
自分の唇をそっとなぞる。
菜々子さんに"恋のお守り"と言って渡されたグロスだけど、まさか、まさか……あんなに気に入って(?)貰えるとは思っていなかった。
『(…った、食べられちゃうかと思った)』
あの時。白石さんの瞳には怯えた自分の顔が映っていて、キラリと牙が光って見えた気がした。
何より……怖かった筈なのに、少し期待してる自分が1番恥ずかしくて。
ぼおっと歩いていると、「りんちゃん、聞いとる?」と白石さんが首を傾げていた。
『ふぁい!な、何ですか?』
白「(ふぁいって…)東京着いたら、迎え来てくれるんやっけ?」
『!あ、はい…お父さんが車で迎えに来てくれるので大丈夫です』
「ほな安心やな」とホッと安心する白石さんを見上げて、私の胸はきゅうんっと反応する。
『(「帰らんで」って、強引に抱き締めてくれていいのにな…)』
地面に映し出された2つの影を見つめながら、そんなことを思ってしまう。
ふと…「おかえり」と、素っ気なくもいつも言ってくれるお兄ちゃんの顔が頭を過ぎった。
『(…やっぱり、帰らなくちゃ)』
2人共、別々の帰る場所があるんだ。
ぎゅっと重なった手に力を入れると、すぐに握り返してくれることが切なかった。
白「何やあっという間やったなぁ……りんちゃんとおる時って、ほんま時間経つの早いわ」
『!それ、私もずっと思ってましたっ』
白「ははっ気ぃ合うな」
「嬉しい」と本当に嬉しそうに笑う白石さんにつられ、私の頬も緩んでゆく。
お化粧を落としてすっかり元の姿に戻ってしまったけれど、やっぱり普段の白石さんが1番かっこ良いな。(←※心の声なので恥ずかしくない)
『あの、白石さんは後夜祭に参加しなくて良かったんですか?』
白「ん?」
『送ってくれてすごく嬉しいんです。でも…』
後夜祭も、文化祭同様に面白いことがたくさんあると小春さんが教えてくれた。
謙也さん達のバンド演奏も去年すごく盛り上がってたし、キャンプファイヤーの前で好きな人を笑わせられたら、その恋が永遠のものになるーっていうジンクスがあることも。
『(お父さんにお願いして、もっと遅い時間の新幹線にして貰えば良かった…)』
そうすればきっと、白石さんに気を遣わせることはなかった。
少しでも長く一緒に居れたのに。
思わず俯きそうになった時、ポンッと頭に手が置かれる。
そのまま移動した手に軽く頬を引っ張られて、私は『っ??』と困惑した。
白「ははっやらかいな〜餅みたい」
『(も、餅!?)』
喜んでいいのかな…と悩みつつ、白石さんが優しい瞳で見つめていることに気付いた。
途端にきゅう、と胸が苦しくなって、歩んでいた足が止まる。
白「…俺はな、りんちゃんと居る時が1番楽しくて幸せなんやで」
「知らへんかった?」と尋ねる白石さんに、ただフルフルと首を横に振る。
白「せやから…こうやって会えた時は、一分一秒でも長くりんちゃんと居りたい」
そう言って、切なく微笑んだ顔を見て、私は何故か泣きそうになってしまった。
どんどん大きくなっていくこの想いを、どう伝えたら良いかわからない。
一分一秒がこんなにも愛おしいと思えるのは、白石さんだけなのに。
『(…どうすれば、伝わるのかな)』
東京に戻っても寂しくならないように、もっと深いところで繋がっていたい。
ゆっくりゆっくり歩いていた筈なのに、いつの間にか朝迎えに来てくれた駅の前に着いていた。
『(……白石さんの顔、見れない)』
いつもどんな顔をして別れていたのかも、思い出せなかった。
じわりと溜まった涙を悟られないように下を向くと、「りんちゃん」と落ち着いた声がして。
頬に触れた手の温かさにゆっくり顔を上げると……眉を下げて笑う白石さんがいた。
白「来月の連休って、りんちゃん用事ある?」
『…?えっと、特には……』
白「ほな、そしたら出掛けへんか?」
キョトンとする私を見て、言いにくそうに言葉を詰まらせる白石さん。
逸れていた視線が重なった時、その瞳が揺らいだ気がした。
白「……その、泊まりで」
泊まり…?と少しの間考えて、『また皆さんと旅行に行けるんですか?』と嬉しさで声が弾んだ。
白「えっうん、旅行なんやけど……"皆"やなくてな、」
『?』
白「俺と2人で」
『……シライシサント、フタリ?』と何故か発した声がカタコトになる私。
頷いた白石さんを見上げること数秒、ボンッと顔が真っ赤に染まっていった。
『(え、え…?お泊まり……??)』
カァアアとひたすら顔を朱に染める私に、「…急でごめんな」と謝る白石さん。
白「りんちゃんの誕生日も近いし、お祝いもしたいっちゅーか…バイトで貯めた貯金もあるし、旅費は俺持ちで、」
ペラペラと早口で話していた白石さんは、途中ハッと止まる。
私の様子をちらりと確認してから、顔を片手で覆ってしまった。
白「〜〜〜っ必死過ぎて、俺めっちゃダサいな…」
ボソッと独り言のように呟いた白石さんを、私は目を丸くして見つめていた。
長い指の隙間から見える顔が赤い気がするのは、きっと気のせいじゃない。
緊張が伝わって、『えっと…』と私までもじもじしてしまう。
『…嬉しいです。わ、私も2人で行きたい』
ドッドッと高鳴る心臓を押さえながら何とか言葉を発すると、白石さんがぱっと私を見つめる。
『でも、親に相談してみないと…』
白「うん。それは心配するやろうから、勿論やで」
その答えを聞いて安心したのか、嬉しそうに頬を緩める白石さん。
私の頬は熱くなる一方で、『ま、また連絡します…っ///』とペコリと頭を下げた。
何だかぎこちない空気を残し、私は赤い顔を隠すように駅のホームへ急いだ。
『(…ど、どうしよう)』
お父さんに話したら、絶対反対するに決まってる。(お母さんはわからないけど…)
電車に揺られながら、ただ嬉しそうに笑う白石さんの顔を思い出していた。
***
スーツケースを持った人や、大きなバッグを持った人。
同い年位の地元の学生達が、駅の周りに集まってお喋りしている。
私は見慣れない駅を見上げていた視線を、ふと腕時計に戻した。
『(あと10分……)』
楽しみで仕方がなくて、30分も前に来てしまった。
まだかなまだかなと待ち切れず、ぎゅっと大きなバッグを持つ手に力を入れる。
『何か、緊張する……「そうなん?」
突然聞こえた声に『ひゃあ!』と体が飛び跳ねた。
後ろを振り向くと、楽しそうに笑う待ち焦がれた人の姿。
『も、もう…着いたなら教えて下さい!』
白「ごめんなぁ、そわそわしながら待っとるりんちゃんが可愛くて、」
『っ!///』
そんな風に言われたら何も言えなくて、せめて赤くなった顔を見られないように俯いた。
白「…ほな、行こか」
優しい声音と共に、すっと目の前に片手が差し出される。
私はこれから始まる出来事に胸を高鳴らせながら、その手を強く握った。
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