my darling
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*白石side*
ー文化祭前日ー
白「ほんまに今年もやるんか…?」
テニス部の部室に入るなり、自然と口から溢れた言葉がこれ。
姉ちゃんが洗面台を占領してた時によう使うてたパフ?を持った小春が、「もぉ、蔵リン!」と振り返る。
小「諦め悪いで?うち(テニス部)の恒例なんやから協力してや」
白「そりゃそーやけど…何かが失われてくっちゅーかな、」
金「白石、何でそんな嫌なん?ワイ色んな格好出来て楽しいで!」
小春にメイクされてた金ちゃんはくるっと振り返るなり、口紅を付けた口でにんまり笑う。
今や俺よりも大きく成長した金ちゃんが女装しとるなんて、切ないような悲しいような…
財「…りんに見せたないんはわかりますけど、ええ加減腹括って下さいよ」
冷静に話しながらも、ゴゴゴゴ…とものごっつい不機嫌オーラを放つ財前。(デジャヴか?)
横に流した長い黒髪と青色のチャイナ服がやけに似合っとった。
謙「白石が居らんと優勝出来へんしなー」
白「…謙也、かわええな」
謙「っ!な、何やねん、胸キュンしてまうやろ」
白「いや、それは勘弁してや」
ばっさりと断る俺に、「酷い男やな!」と冗談っぽく泣く謙也。
眩しい金髪を2つのお団子にまとめ、チャイナ服を着た親友が生き生きして見えるんは、気のせいやろか?
白「(コイツ楽しんどるな)せめて俺も、銀と同じのが着たいんやけど…」
小「なーに言っとるの!蔵リンは自分のことなんっもわかってへん。その素材は何の為にあると思ってるん??」
ユ「小春の言う通りやで、大人しく美女になっとけや!!」
白「どう言うことやねん!?」
意味の分からない主張をされ、思わず大声でツッコんでしまった。
千「まぁまぁ、白石落ち着きなっせ。りんちゃんなら喜んでくれるんやなか?」
白「で、デカい女子やな…まぁ、去年はそうやったけど」
ぬっと現れた(女装済みの)千歳に驚きつつ、去年の文化祭で『可愛い!』言うてくれたりんちゃんを思い出す。
正直、好きな子には"可愛い"より"かっこいい"って思われたいのが本音やけど、キモい言われるより全然ええ。
白「(まぁ、りんちゃんはそんなこと言わへんやろうけど…)」
りんちゃんには文化祭を思いっきり楽しんで欲しかった。
せやけど…今年も出し物が忙しなくて、俺が一緒に居れそうにないのがツラい。(←※ここ重要)
渡「はっはー!白石は今年もミス女装に選ばれたりしてな」
白「オサムちゃん、埋めてええか?」
謙「白石落ち着き!仮にも顧問やから…!」
この出し物の提案者であるオサムちゃんが、ほんまに憎い。
何やねん"CLUB小芥子"って。何が楽しくてホストクラブと掛け持ちせなアカンねん…!
謙也に押さえられとる俺を見て、「そないに嫌なんか…」と本気で驚くオサムちゃん。
渡「せや、白石がホストで頑張ってくれたら、中華CLUBの方は最初顔出すだけでええで」
白「っほんまに?ちゅーか頑張るってどうしたら、」
渡「そりゃNo.1になって、お客さんを満足させたらな!」
No.1…?とオサムちゃんの言葉の意味を考えつつ、そうすればりんちゃんと居れる時間が増えるっちゅーことやな、と納得した。
白「よっしゃ、No.1になったる…!!」
小&ユ「「お〜〜」」
財「…いや、普通にそっちの方がりんに嫌がられそうっスけど(聞こえてへんし)」
財前が的確なツッコミをしてくれたにも関わらず、俺はりんちゃん(とのデート)の為にメラメラと燃えていた。
***
白「…っていうことなんやけど、」
当初の約束通り、無事自由な時間を手に入れた俺は、りんちゃんと空き教室におった。
『お店は大丈夫なんですか?』と不安そうに尋ねるりんちゃんに経緯を話していくと、ホッと表情が和らぐ。
せやけど、何かを言いたそうに口をもごもごしとった。
白「ん?」
『…っそれでも、見たくなかったです』
『白石さんが他の女の子に優しくしてるとこ』
そう呟くなり、りんちゃんはぷくーと頬を膨らませてしまった。
白「(え)」
子供のようにわかりやすくいじけるりんちゃんの愛らしさに、一瞬息をし忘れる俺。
暫くして、嬉しさでニヤついてしまいそうになる口元を必死に押さえた。
そんな俺の様子にハッと気付き、『っな、何で喜んでるんですか?』と涙目で怒るりんちゃん。
白「堪忍な、せやかて…ヤキモチ妬いてくれたんやなぁ思うて」
『っ!///』
隠し切れずにニッコリ笑ってまえば、その顔が真っ赤に染まった。
餌を欲しがる鯉のようにパクパクと開け閉めさせていた口が、『…そうですよ』と動く。
俺が聞き返すより先に、りんちゃんからぎゅうっと抱き付いてきた。
白「…………えーっと、りんさん?」
『………………』
いつもは控え目な力が、しがみ付くように強く込められる。
無言を貫くりんちゃんが心配になって問い掛ければ、『…モテモテでも、いいんです』とぽつりと聞こえた。
『白石さんが、私だけ見てくれれば』
ぎゅううと必死に抱き付く姿が、"ここにいて"と言ってるようで。
顔は服に押し付けられて見えへんけど、耳元が真っ赤に染まっとるのがわかった。
……ああ、ほんまに敵わん。
白「っごめんな、りんちゃん」
一緒に居れる時間が増えるほど、りんちゃんは喜んでくれるんやないかって思うとった。
その為にやりたないホストもやって、女装もして……
俺の勝手で、結局りんちゃんを傷付けてしまった。
白「(…最低やなぁ、俺)」
こんなに胸が痛いのに、りんちゃんが俺のことで悩んでくれて、嬉しいと思ってしまう。
白「(いつも俺のことしか考えなかったらええのに、)」
もっともっと、俺のことでいっぱいになって欲しい。
求めて、焦がれて、ずっと離さんでいて。
更に恐ろしいことを考えそうになった時、ハッとりんちゃんに視線を戻した。
未だに俺にひしっとくっ付いていて、その姿が小さい子のようで。
思わずぷ、と笑ってまうと、りんちゃんは俺の反応に首を傾げる。
白「ごめんごめん…りんちゃんが一々可愛くて、」
『っ!白石さんさっきからニヤニヤして…私、真剣なのに』
白「俺も真剣やで?ほんまに反省しました」
しゅんと落ち込んで見せると、りんちゃんは『あ…』と途端に困った顔をする。
その反応を俺が楽しんで見とるとは知らず、りんちゃんは何かを考えた後、『じゃあ』と呟いた。
『お願い、聞いてくれますか…?』
白「うん。何でも言うて」
『えと、さっきの女の子達にしてたみたいに、頭を撫でて欲しい…です』
もじもじしながらお願いするりんちゃんに、俺は瞬時に迷うことなくその頭を撫でる。
『えへへ///』と嬉しそうに、恥ずかしそうに頬を緩めた顔を直視してしまい、あまりの可愛さに「…っっ」とよろけそうになった。
せやけど……これだけで満足そうにするりんちゃんに、今度は俺がムッとしてまう番で。
白「……それだけで満足なん?」
手を伸ばし、柔らかい頬をゆっくりと撫でる。
その手付きにりんちゃんも"何か"を想像したのか、カァアアと顔を真っ赤に染めていた。
『あ、あの、』
白「…やっぱこの格好、嫌?」
『へっ?』
両手でぐっと胸を押し返され、不安になった。
さっきまではりんちゃんのあまりの可愛さに脳が蕩けそうで、気にせんかったけど……
俺は今、女装をしとる。
白「(化粧もバッチリやしなぁ)」
流石にこの見た目で迫られるんは……嫌かもしれん。
服の袖を軽く引っ張られて、少しだけ腰を屈めた隙に、ちゅっと頬に温かいものが触れる。
驚いて前を見据えると、りんちゃんが優しく微笑んでいた。
『私は……どんな白石さんも、大好きなんですよ』
『覚えてて下さいね』と照れながら笑うりんちゃんが可愛くて、どうしようもなくて。
その衝動のままりんちゃんを引き寄せ、唇に近付いた。
白「………こら。この手は何なん?」
『っ!だ、だって……白石さんがあんまりにも綺麗で、顔見られると緊張しちゃって…///』
また両手を伸ばして体を遠ざけようとするりんちゃん。
その理由がいくら可愛いものであっても、残念ながら受け付けられへん。
次第にりんちゃんは観念したように大人しゅうなり、俺はその両手に自分の手を重ねて固定する。
そっと触れるだけのキスをしてから離れると、りんちゃんの唇に口紅の色が移ってしまった。
白「ごめんな、赤いの付いてしもーた」
『…………ふぇ…?』
赤く染まった唇を指でなぞる俺を、とろんとした瞳で見上げるりんちゃん。
目が合うと慌てたように逸れていき、再びそっと閉じられた。
その不器用な"催促"が愛らしくて、少しだけ突き出しながら待っとる唇を、自分のでそっと塞いだ。
白「…りんちゃん、口開けて?」
『っは、ん……っ』
舌が歯をなぞる度にビクッとして、それでも必死に俺の真似をして絡めてくれる。
ぐっとチャイナ服の裾から見えていた脚がりんちゃんの方へ踏み込み、更に距離を縮めた。
背中をつつーと撫でた瞬間、『ふにぁ!?///』と声を出すりんちゃんに思わず笑ってまう。
白「ふっくく…猫みたい、」
『!?白石さんがい、厭らしい…触り方するからっ///』
白「りんちゃんやって、やらしいキスしてたやろ?」
『!!?』
お互い様にも関わらず、わざと責めるような言い方をすれば。
『い、意地悪です…』と独り言のように呟いてから、俺の顔を見つめた。
りんちゃんはポシェットの中を探り、ピンク色の口紅?のような物を取り出す。
『あのっ白石さんも取れちゃったので……私が塗り直してもいいですか?』
白「え?」
キラキラ目を輝かせるりんちゃんを断るなんて出来ず、「ええよ」と頷く。
塗りやすいように腰を屈めてあげると、『失礼します…っ』とりんちゃんはそれを塗り始めた。
白「(……何や変な感じやなぁ)」
彼女に口紅を塗って貰う男子なんて、中々おらへんやろな……
真剣な表情でそれを塗っていたりんちゃんは、『出来ましたっ』と満足そうにニッコリ笑う。
『このグロス、菜々子さんに貰ったものなんですけど…白石さんすごく似合ってます///』
白「…それ喜んでええんか!?」
『はい!』と輝く笑顔で頷かれて、「おおきに……」と俺の声も掠れていった。
こんなに喜んでくれるなら、いっそのこと一生女装してた方がええんやないか?俺。
気になって無意識に唇を舐めてまうと、甘い味が口の中に広がった。
白「っん、これ甘いな」
『あ、そうなんです。確か舐めても大丈夫って言ってました』
白「へー…そうなんや」
ニヤリと口角をつり上げる俺に気付き、"しまった"というような顔をするりんちゃん。
一歩後退りしても背後には壁があって、逃げ場なんてあらへんのに。(←わざと)
『あ、あの…白石さん?』
白「折角やし、一緒に味見しよか」
『(め、目が怖い…!)』
りんちゃんの怯えた様子から、子ウサギを前にした肉食動物のようにギラギラしていたに違いない。
そんなことお構いなしに、俺は「いただきます」と心の中で呟いてから口を開けた。