my darling
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"CLUB小芥子"は、只今休憩中。
財「"自分の役割を全うしようとしとる"やったっけ?」
『は、はい』
「おもっくそ私情挟んどるけどな」
財前の鋭いツッコミを受け、『すみません…』とりんは居た堪れない空気を感じていた。
小「まぁまぁ、光ちゃん落ち着いて。蔵リンも漸くりんちゃん補給出来るんやから(文句言いつつ自分も離れへんのよねぇ…)」
素直なのか素直じゃないのか。拗らせ気味の後輩を、小春は片頬に手を添えながら宥めた。
あれから……キーンコーンカーンコーンと休憩を告げるチャイムが運良く鳴り響き、女子生徒達は残念そうに退場していった。
その群れに続こうとしたりんを呼び止めた白石は、何を思ったか自分の膝の間に座らせたのだ。
金「財前もずるいで!りん独り占めするなんて」
白「そやろ、金ちゃんもっと言うたってや」
ユ「お前が言うな!」
謙「白石もほんま隠さなくなったよな…」
白石のボケ(?)にすぐさまツッコむユウジと、呆れる謙也。
後ろから抱き締められているりんはというと、ぷしゅーと湯気の音が出るくらい顔を真っ赤に染めていて気の毒だった。←※何度訴えても離してくれなかった。
『(うう…///)あの、皆さん休憩中なのにお邪魔しちゃってすみません』
千「そぎゃんことなか。りんちゃんが来てくれて嬉しいばい」
小「皆りんちゃんに会いたかったんやで〜」
小春の言葉に、皆は頷いたり照れたりと様々な反応を見せる。
りんも『ありがとうございます』と安心したように微笑み、ほんわ〜と彼等の疲れた心を癒していった。
ユ「そういや、白石の列にミスコンの子おったやん」
健「ああ…真っ先に白石指名しとった子な」
『!』
「あれはマジやで」とニヤニヤするユウジにショックを受けるりん。
「いや、同じクラスやからやろ?」と白石が呆れたように否定しても、すっかりしゅんと落ち込んでしまった。
小「(…ったく一氏は)ユウくんこそえらい詳しいけど、蔵リンが羨ましいんやない?」
ユ「え!?」
千「心配せんでも、ユウジもモテとるばい」
金「ユウジの席めっちゃウケてたもんな!」
ユ「っ!?ちゃうで?小春っ俺は小春一筋やで…!!」
小春がツンと冷たく接すれば、途端に慌て出すユウジ。
お花コンビ(※ユウジが命名した千歳と金太郎のこと)に余計なことを言うな、と涙目で睨む。
健「そういや、金太郎指名の女子も多かったな」
金「そや、姉ちゃん達たこ焼き買うて来てくれてん!目の前で食べて欲しい言うてな、」
「美味かったで〜!」と純粋に喜んでいる金太郎は、恐らく餌付けられていることに気付いていないだろう。
3年生になり更に身長が伸びた金太郎は、いつの間にか白石の背も追い越していた。
持ち前の無邪気さに男らしさがプラスされれば、きゅんと母性本能を擽ぐられる女子も多いのだ。
謙「金ちゃん、俺よりモテてたもんなぁ…」
財「いや、寧ろ謙也さんがモテてた時なんてありました?」
謙「っ何やと!?俺かてな、むっちゃ指名貰ってたわ…!」
財&小&ユ「「「男友達にな」」」
「ぐ…っ」と今にも悔し泣きしそうな謙也を見兼ねて、『け、謙也さん…』とりんもうるうると貰い泣きしそうになっていた。(←ヘタレ同士なので共感出来る)
渡「戻ったで〜〜」
『!渡邊先生っお久しぶりです』
渡「おーりんちゃん!よう来たなぁ」
オサムの登場により、白石の膝からぴょんっと抜け出すことに成功したりん。
途端に捨てられた子犬のような…寂し気な視線を横から感じて、『(うう…)』と罪悪感を感じながら隣に座り直した。
謙「オサムちゃん、偵察どやった?」
渡「せやなぁ…去年に比べて何処も気合入っとったけど、今年も俺らが優勝やろ」
小「当ったり前やないの!何てったって、うちには蔵リンと光がおるんやから」
『(優勝?)』
りんが首を傾げていると、「ほな!そろそろ支度始めまひょ〜〜」と小春が手を叩く。
「「よっしゃーやったるで!」」と意気込む者や、重い腰を上げる者。
チッと舌打ちする財前……はいつも通りであるが、やはり気乗りしない様子だった。
『?あの、これから何かあるんですか?』
財「……言ってないんスか?」
白「………………」
気まずそうに目を逸らす白石を見て、りんはハッと気付いた。
もしかしたら……今度はもっと女の子達に騒がれる出し物をするんじゃないか、と。
『っ白石さん……あの、』
白「?」
『えっと……っ』
"行かないで"
その言葉が喉に詰まり、苦しくて。
本当は……熱の込もった瞳で彼を見つめる女子も、その子に笑い掛ける彼も、もう見たくない。
『(でも……きっと、困らせる)』
咄嗟に掴んでしまった手を離そうとすれば、何故かぎゅっと握り返された。
『しら「りんちゃん」
ぱっと面を上げると優しく瞳を細めた白石がいて、ドキンと鼓動が跳ねる。
白「大丈夫やで。約束したやろ?」
『(約束…)』
俺はこの先何があっても、りんちゃん一筋やで
やがてコクンと頷いたりんに、白石は小さく笑って。
優しく頬を撫でていた手は、名残惜しそうに離れていった。
白「そんじゃ、行ってくるな」
『…はいっいってらっしゃい』
白石の言葉を信じよう。そう決めたりんの表情は、いつものような可愛らしい笑顔に戻っていた。
「「「「「(リア充め……)」」」」」
はたから見たら新婚夫婦の朝の掛け合いのようで、一体自分達は何を見せられてるんだ…と皆は遠い目をしていたのだった。
***
斯くして、テニス部の文化祭出し物・第2部に参加することになったりん。
ワクワクしたり不安になったり落ち着かない状態で待っていると、再び店内が混み合い出した。
やはり女性客が多いが、さっきよりも男性客の姿が増えている気がする。
『(すごい人気だなぁ…)』
皆かっこいいもんね、とりんはスーツ姿の彼等を思い出していた。
ホストになっても其々のキャラを生かし、お客さんを楽しませているところが何とも四天宝寺らしい。
そわそわしながら待っていると、「お姉さん1人なん?」と突然声を掛けられた。
『?は、はい』
「めっちゃかわええね、良かったら俺らと一緒に座らへん?」
「俺らここ(四天宝寺)の卒業生やし、奢ったるで」
『へ?あの、大丈夫です…っ』
大学生らしき2人組の男性はニコッと笑い、勝手にりんの隣に座ってくる。
中々話を聞いてくれない様子に、仁王から伝授してもらった"実は男なんです作戦"を使おうとした時……わっと突然周りが騒がしくなった。
小「皆さ〜ん、お・待・た・せ!テニス部による女装中華CLUBへようこそぉ」
ふわふわが付いたセンスを持って登場した小春。
その身にはドレスのような赤いチャイナ服を纏っていて、黒いボブのカツラまで被っている。
ユ「最後まで楽しんでってな〜」
その肩に腕を回しながら登場したユウジも、同じようなデザインのチャイナ服を着て、長い髪をおろしていた。
彼等だけじゃなく、先程までスーツ姿だった全員がメイクを施し、チャイナ服に着替えているようで……
『(す、すごい、皆綺麗ー…)』
ただ純粋に、『わああ』とその出来栄えに感心するりんだった。
「やば!やっぱミス女装がいるとこはちゃうわ」
「他の部の女装は見れたもんやなかったしな」
『…あの、"ミス女装"って?』
2人の会話が気になり、思わず話し掛けてしまう。(※ナンパされてる最中です)
「え、お姉さん知らへんの?四天宝寺のミス女装コンって有名やで」
「確か個人と団体で分かれとるんやけど、去年はテニス部から選ばれとったで」
『!そうなんですね』
言われてみれば、確かに女装した人達が何人も校舎にいたような…と思い返すりん。
「まぁお姉さんの方が俺はタイプやけどな〜」と男がりんの手に触れようとした、その時ー……
すっとりんの前に誰かが入り込んだ。
「お兄さん達、店内はナンパ禁止やで」
聞き慣れた声にハッと気付いたりんは、その姿を見るなり瞬きを繰り返した。
そこには……紫色のチャイナ服を着た白石がいたから。
『(し、白石さん…!?)』
突然恋人の女装姿を目の当たりにした為、ポカンと口を開けるりん。
白石はエクステ?を付けた髪を後ろでお団子にまとめていて、体のラインにピッタリ沿った服や綺麗にお化粧した顔が、やけに色っぽくて。
男達は反論することも忘れ、ただその姿に見惚れていた。
白「…それに、うちらだけやと満足せぇへんの?」
更に白石は、今まさにりんに触れようとしていた男の肩に手を置いて、そっと囁く。
その色香にやられた2人組は、「え!?い、いえ…///」とあっという間に大人しくなってしまった。
白石は"大丈夫か?"という意味でりんの顔を覗き込むと、こちらもぽーっと見惚れていた。
白「…りんちゃん?」
『わ!ご、ごめんなさい…っあまりにも綺麗だったので///』
正直な感想を述べれば、白石は今まで見たことがないような複雑な表情を浮かべた。
白石は筋肉がある方なので、女装しても骨格から男性だとわかってしまうが……それでも、女性顔負けの美しさだ。
白「(やっぱ複雑やなぁ…)お客さんのお気に召したみたいで、光栄やわ」
『は、はいっ///』
りんが必死にコクコクと頷くので、複雑だった白石の心も浄化されていく。
扇子を顔の横に置いて見えないようにしてから、りんの耳元に顔を近付けた。
白「…良かったら、VIPルームに招待してええやろか?」
『ふへ…?』
思わず間抜けな声を出してしまうりんに、パチッと綺麗にウィンクする白石。
その顔にまたドッキンと胸が高鳴り、(←チョロい) りんは大人しく白石について行った。
「今のって…ミス女装の奴やろ?」
「…つか、俺ら邪魔者?」
りんと白石の両方にトキめいた男達は、ただ呆然と立ち尽くす。
銀「…諦めた方がええで」
ポンッとカンフーの格好をした銀に肩を叩かれ、2人は静かに肩を落としたのだった。