my darling
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白「俺はこの先何があっても、りんちゃん一筋やで。りんちゃんは?」
『!わ、私もっ白石さん一筋です…///』
白「ありがとう…嬉しいわ。せやったら、俺と約束して欲しい」
『?』
別れ際。すっと小指を差し出す白石に、りんは戸惑いつつも同じように小指を出し、絡めた。
白「これから見るものは幻やから、すぐ忘れるんやで」
『へ?(幻??)』
あまりにも真剣な顔で言うので、何処か緊張しながらも顔を縦に振るりん。
この時、いつもなら安心したように柔らかくなる表情が、未だに晴れないのが不思議で。
少し心配になりながら彼を見送ったりんだったが、その理由はすぐ知ることになるのだったーー…
***
『(……ここでいいんだよね?)』
りんは今、四天宝寺テニス部の部室……否、"CLUB小芥子(こけし)"の前にいた。
外観は至って普通の部室であるが、シンプルな看板の横には大きなコケシが飾られていて、ゴゴゴゴ…と妙な迫力を放っている。
りんはゴクリと息を飲み込んでから、そーっと部室の扉を開ける。
すると、すぐに「おかえりなさいませ」と深々と頭を下げた人物に気付いた。
『小石川さん…!』
健「っ!りんちゃん。びっくりした、久しぶりやなぁ」
出迎えてくれた小石川に『お久しぶりです』とペコリ頭を下げる。
小石川は前回の文化祭同様、白シャツにスーツのベストを合わせていて、似合ってるなぁとりんは改めて思っていた。
『それにしても…すごい豪華な内装ですね』
健「せやろ?オサムちゃんが一度だけ行ったっちゅー高級CLUBを真似しててな……色々大変やで」
どっと疲れた様子の小石川に『?』と首を傾げていれば、「あ、ここやないー??」と数人の女子生徒が部室の戸を開け入ってきた。
その拍子にドンッと体がぶつかり、小柄なりんは『わわ…!』とはね飛ばされてしまった。
「テニス部の部員がおもてなししてくれてな、お気に入りの子も指名出来るらしいで!」
「きゃ~~ヤバいやん!じゃあ白石くんとかも指名出来るん??」
『(指名??)』
「りんちゃん大丈夫かっ?」と慌てた小石川に支えられながらも、ぴくっとその名に反応する。
その時…「あら、新規のお客様~??」と奥からピョコッと顔を覗かせたのは、小春。
クールな黒のパンツスーツに身を包んでいるが、走り方は乙女全開だ。
小「ご来店おおきにぃ。"CLUB小芥子"へようこそ!早速やけどお店のルールを説明するわね。
ここは美少年達と会話をして、日頃の疲れを癒す場所~~
まずはここにあるコケシを好きなだけ買うて貰って、お好みの子を1人選んで席についてなぁ。時間は30分制やけど、15分延長ごとに1コケシ必要やから注意やでっ」
「因みに盗撮はアカンけど、オプション付ければ軽いボディタッチなんかはええわよ」とウィンクする小春。
それを聞いた瞬間、大人しく説明を聞いていた女子達の目がギラリと肉食動物のように光った。
更には大きなボードを前にした途端に、「「「キャー!」」」と甲高い声が部屋中に響き渡る。
あまりの勢いに呆然と固まる小石川とりんを置いて、女子達はさっさとカーテンの奥に消えていった。
『い、一体何が……』
健「……堪忍な、さっきからずっとこんな感じで(もー嫌…)」
頭を抱える小石川と、ただポカンと立ち尽くすりん。
暫くして「りんちゃん!来てくれておおきになぁ」と小春が再び戻って来た。
『小春さん、このボードは?』
小「ん?これこれ、うち(CLUB小芥子)の自慢の子達やで!」
大きなクリップボードをくるっと裏返すと、そこには複数の写真が貼られていた。
No.2ユウジ、No.3財前、No.4千歳、No.5謙也、No.6金太郎とランクが書いてあり……上位メンバーは見知った顔が並び、皆スーツを着て様々なポーズで写っている。
その中でも一際目立っていたのはNo.1の白石で、写真の周りを派手に装飾されていた。
『こ、これってまさか…?』
小「そう~ホ・ス・ト・ク・ラ・ブ(ハート)」
『!("CLUB"ってそのクラブなんだ!)』
前回のメイド喫茶で大分免疫は付いていたもの、この出し物は予想していなかった。
驚くりんを余所に、小春は饒舌な口調で説明していく。
小「蔵リンはあの顔やし、幅広い層から大人気なんやでぇ~(本人たじたじやけど)
ユウくんは元々笑いのファンが多いし、光はド塩の対応が逆にええのかもね」
『??そ、そうなんですね』
小「折角やから、りんちゃんもゆっくりしていってや!空いとる子付けるから」
りんが答える間もなく、流れるように奥へと誘導されていった。
健「(りんちゃん、大丈夫やろか…)」
小石川の心配も虚しく、案内された席へと腰を下ろしたりんは、"その光景"をすぐ目の当たりにすることとなる。
「白石くん、追加で1コケシ払うから一緒に写真撮ってや~」
「はい!うちは2コケシ払ったから頭撫でて欲しい!」
「あのっ3コケシで名前呼んで欲しいです!」
白「え?困ったな……取りあえず順番やから待っててな、」
机を囲んでお喋りするメンバーと違い、白石の周りだけ何故か一列に女子が並んでいた。
皆の熱い(?)告白を受け、苦笑いを浮かべながらも「おおきに」と対応する光景は、まるでアイドルの握手会のようだ。
おまけに「はい、時間やでー」と知らせる"剥がし"の部員まで配置されている。
『(!すごいモテてる…!)』
そのシュール過ぎる光景にツッコむ余裕などなく、りんは心にずしんと鉛が乗ったような重さを感じていた。
『(白石さんがさっき言ってたことって…このこと?)』
あんなに必死に訴えていたのは、りんが傷付かないようにする為だろうか。
あの言葉に嘘はないとわかっていても、それでもチクチク痛む胸はどうしようもないのに。
銀「…りんはん?」
『…………わ!?石田さん!』
慌てて顔の向きを戻すと、銀がテーブルにクリームソーダを運んでいるところだった。
銀は普通のスタッフと違い、飲み物を各テーブルに運んだり厄介な客に対応するボディーガードをしているらしく……
身なりもサングラスをしたりと、ホストというよりはヤ◯ザのようだった。
『厄介なお客さんですか?』
銀「りんはんも気を付けた方がええで。変な輩は毎年おる」
何処を見渡してもお客は女子ばかりなので『?』と首を傾げていれば、そんなりんの元に別の足音が近付いていた。
財「ご指名ありがとうございます……………光です」
溜め息を吐きながら、ボソッと如何にもだるそうに挨拶をする財前。
『財前さんっ』とりんが思わず呼んでしまうと、漸くその顔が上げられた。
財「っ何やりんか、」
『はい!お久しぶりです』
ニコニコ笑うりんにつられ、財前もふっと肩の力が抜けたように口角を上げる。
文化祭が始まって以降、財前の笑顔を見たのは初めてで、銀は何処かほっこりした気持ちで退場していくのだった。
隣に腰掛けた財前は珍しく前髪を上げていて、相変わらず複数付けたピアスが目立っていた。
財「クリームソーダとか、お子ちゃまか」
『!?い、いいじゃないですか…っ(美味しいのに、)』
財「一口くれへん?糖分補給したいねん」
『どうぞ』と躊躇いなくクリームソーダを差し出すりん。(「そうゆうとこやでりんちゃん…!」by白石)
だが、戻ってきたそれはアイスが半分以上なくなっていて、りんの目にじわりと涙が溜まった。
『(ひ、一口…?)財前さん、お疲れですね』
財「まーな、一々女子と会話せなアカンのが面倒いわ」
「まだ去年のがマシやった…」と財前は深い溜め息を吐く。
去年の文化祭でも、財前のメイド姿にときめいているであろう男性客はちらほらと存在していた。
綺麗だったなぁと尊敬の眼差しを向けるりんを余所に、財前は別の場所を見ていた。
財「(……相変わらずエグいモテ方やな)」
明らかに"困ってます"というような顔をしながらも、一人一人にきちんと対応している白石。
自分だったら速攻断ってしまう自信があるが、彼の優しい性格も関係あるのだろうか。
ふと視線を隣に移動させれば、ちらちらとその方向を気にするりんがいた。
財「…そんな気になるなら、嫌って言えばええやろ」
『え?』
財「あんたが言えば白石さんも流石に断るんやないか?」
からかいのない真剣な財前の言葉は、自分を想って言ってくれているのだとわかる。
りんは膝に置いていた掌をきゅっと握り、静かに首を横に振った。
『ありがとうございます。でも、いいんです』
眉を寄せる財前に、りんは続ける。
『白石さんは、どんなことも真剣に取り組む人だって知ってるから……今もきっと、自分の役割を全うしようとしてるんだと思います』
投げ出さず、最後まできちんと成し遂げるところもりんが尊敬しているところだった。
そう言いつつもふにゃりと笑った顔はきごちなく、財前は「…アホやな」と溜め息を吐いた。
財「そんな甘かったら男はつけ上がるだけやで」
『うう、はい…』
財「まぁ…らしいっちゃらしいけど」
りんが白石を大好きなことも、白石が(ウザいほど) りんに一途なこともわかっている。
わかってはいるが……こんな表情をする彼女を放っておけない。
財「(しゃーないな…)」
白石をちらりと一瞥してから、財前はりんに近付いた。
全く警戒しない様子に呆れながらも、「りん、」と耳元に顔を寄せていく。
その距離の近さを漸く理解したりんは、ドキッと肩を揺らした。
『っあの、財前さ「膝貸せ」
思わずぎゅっと瞑っていた目を開けると、至って無表情でこちらを見つめる財前がいた。
財「ええから、早よ膝貸せや」
『ひぇ…』
甘い空気はおろか、断ったら殺されそうな雰囲気まで漂わせている。
りんはその気迫に怯えながらも、『?ど、どうぞ…っ』とさっと自分の膝を差し出す。
すると……そこに財前が頭を付けて寝転がったので、ビクッと体が跳ね上がった。
財「思ったより寝心地ええな」
『っ///えと、今はどういった…??』
財「どうって、りんに営業トークしてもしゃーないし……疲れたから休憩させてや」
そういって目を瞑る財前に、ぐう、と言葉を飲み込むりん。
珍しく弱々しい姿に胸を打たれて、抵抗する気もなくなっていった。
『(よっぽど疲れてるんだ…)』
普段のクールな財前とのギャップに、思わずクスリと笑みが溢れてしまう。
楽し気な声を聞き、横を向いて眠っていた財前はゴロンと正面に向き直る。
下からじっと見つめ、りんに向かって静かに手を伸ばした。
だが、この財前の行動は握手会(?)をしている彼まで届いていて……
白「(……ハッりんちゃんレーダーが反応しとる!)」
※説明しよう。りんちゃんレーダーとは、白石だけが持っているりんの存在をいち早く認知出来る能力である。
白石は慌てて辺りを見渡し、りんの膝の上で寛ぐ者の存在に驚愕した。
白「(え。財前何しとるん…近すぎちゃうか?)」
それに、膝枕なんて自分も滅多にして貰ったことがないというのに。
「白石くん?」と順番待ちする女子生徒に不審がられても、白石の嫉妬心は悶々と膨れ上がっていき……
やがて財前がすっと手を伸ばしたのを見兼ねて、ガタン!と立ち上がった。
白「財前!!「お、おおお前何しとんの…!?」
叫んだ白石に被せるようにして、通り掛かった謙也の声が響き渡った。
「あ、謙也さん」『謙也さん!』といつも通りの2人と、あわあわと顔を赤く染める謙也の温度差がえらいことになっている。
財「チッ来たのはこっちか」
白「…どっちやって?」
すっといつの間にか後ろに立っていた白石に、一同は目を見開く。
「遅いっスわ、No. 1」と軽く口元を緩ませる財前と、「財前…わざとやろ」と黒い笑顔を貼り付ける白石。
謙也とりんは突如始まったバトルに怯えるしかなく、結局財前は(強制的に) りんの膝から退かされるのだった……