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*りんside*
金「行っくでぇ~~!!超メガトンワンダーデラックス山噴火サーブ!!」
謙「うお!?強烈やなぁ…!」
作ったドリンクを皆に配りながらコートに目を向けると、金ちゃんと謙也さんが楽しそうにラリーを繰り返していた。
今日は入れ替え戦もない日なので、各コートで自由に試合が出来る。
千「りんちゃん、ドリンクくれると?」
『はいっどうぞ』
試合を終えた千歳さんに、ドリンクと一緒に新しいタオルも渡した。
私が何故、四天宝寺の皆と一緒なのかと言うと……
あのクイズ大会の後、四天宝寺のマネージャーを任せられたからなのです。
『(何だか、変な感じだなぁ…)』
皆のことは勿論大好きだし、マネージャーとして手伝うことが出来て嬉しい。
ただ、紅葉さんの役割を果たすことが出来るのかなと、不安で。
『あの…千歳さん。紅葉さんって、他にどんなことしてましたか?マッサージとか、特別なサポートの仕方があれば教えて頂きたくて、』
千「え?んー…そげんなことしちょったかなぁ。寧ろりんちゃんが完璧すぎて、紅葉が如何にてきとーだったか感じ取るとこやけん」
『そ、そうなんですか…?』
私、全然完璧なんかじゃないのに…
ニッコリと微笑みながら言ってくれる千歳さんの言葉が嬉しくて、私もつられて笑顔になる。
和やかな空気に対し試合は白熱していて、金ちゃんの打った球が弧を描いて遠くに飛んで行くのが見えた。
千「あちゃー金ちゃんファールばいね」
『あ、私取りに行ってきます。お2人は続けてて下さい!』
金「りん~堪忍なぁ!」
『大丈夫!』と振り返りながら小さくVサインをした。
『(確か、この辺だったような……)』
コートから離れた場所にある、坂になった芝生の中を探していると、キラリと輝く白いものが見えた。
不思議に思いながら近付き、"それ"の正体がわかったと同時に力が抜けていく。
白い帽子をずらすと、肩を上下させながら綺麗に瞼を閉じる顔があった。
『お兄ちゃんっ駄目だよ、こんなところで寝ちゃ』
リョ「ん………りん……………?」
『練習中でしょ?』
もう、最近寝てばかりなんだから…
ぼーっと焦点の合わない目で見つめ、欠伸を繰り返すお兄ちゃんが正直とても可愛い。
でも、ここで甘やかしたら本人の為にならないと、私は心を鬼にした。
『ちゃんとしないと、手塚部長に言い付けちゃうからね』
リョ「……わかったよ」
マイペースなお兄ちゃんもその言葉には弱いみたいで、しぶしぶと身体を起こそうとした。
……筈なのに、私の手から帽子を取って再び顔の上に乗せ、寝そべってしまった。
『!お、お兄ちゃん…っ!』
リョ「……あと5分」
「最近寝不足なんだよ」
そう言ってまた眠り始めてしまうお兄ちゃん。
私は起こそうと身体を揺さぶっていたけど、
ピクリとも動かないお兄ちゃんに肩を落とし、傍に腰を下ろした。
『お兄ちゃんがずっと寝ないように見張るだけだよ。時間になったらすぐ起こすからねっ』
リョ「あっそ…」
わざと素っ気なく振る舞っているつもりでも、俗に言うツンデレ発言だったみたいで。
笑いを堪えるお兄ちゃんにぷぅと頬を膨らませた。
そよそよと吹く風が頬を撫でて、くすぐったい。
思えば…ここ(合宿)に来てから色々あったから、こんなに心が落ち着くのは久し振りだ。
ふと、コートに目を向けると、白石さんがラケットを持って入るところだった。
リョ「………あのさ、」
『ん?』
リョ「りんは、白石さんの何処が好きなの?」
『えええっ!?』
突然すぎる質問に、声が裏返ってしまった。
お兄ちゃんを見ると帽子を下にずらして、じっと目だけ私の方を見ていた。
その視線にうっとたじろぎ、顔を隠すように折り曲げた膝の間に埋める。
『…優しい、とこ』
リョ「……ふーん」
『ほんとだよっすごーく優しいんだよ!///』
リョ「何にも言ってないじゃん」
お兄ちゃんの声が疑ってるように聞こえたから、思わずムキになって大声を出してしまう。
膝から顔を上げて、コートでラリーを繰り返す白石さんを見つめた。
『何にでも真面目でね、絶対に手を抜かないの。それがいっぱいすごいなって…思うんだ』
リョ「…………」
何をしても白石さんの周りはキラキラと輝いて見えるけれど、テニスをしている時は一層輝きを増す。
その輝きを一瞬一秒も逃さぬように、目を見開いて前を見据えた。
それにしても、お兄ちゃんと恋愛話(?)をするなんて……
パッとお兄ちゃんに目を向けると、いつの間にか背中を起こしていた。
リョ「……覚えてないんだ」
独り言のようにポツリと呟き、ふいにお兄ちゃんの腕が私に伸ばされる。
一瞬、頬に手が触れて、すぐに下された。
『?お兄ちゃん…?』
どうしたんだろう……?
いつもと違う様子にその顔を覗こうとした時、コートの方からざわざわと騒がしい声が聞こえた。
ドクン、と大きく心音が鳴る。
『(…白石、さん……?)』
まるで呪いに掛かったかのように、足が一歩一歩進んでいく。
コートに倒れたその姿がはっきりと見えてくると、弾かれるように地面を蹴った。
『……っ白石さん……っっ!!』
その瞬間、景色が真っ暗になって、他の音も、色も、全部消えた。
「いい加減泣き止みなさいよ……」
合宿所と、学校の間にある保健室。
うっうっと大量の涙を流す私はこの世の終わりか、というほどで。
保険医の華村先生に呆れたように溜め息を吐かれても、涙は止めどなく溢れてくる。
華「(まったく……)ほら、白石くん起きたんじゃないかしら?」
『!!白石さん……っ』
ベッドに横たわる白石さんの顔を慌てて見つめる。
「ん……」と身を捩るのを確認すると、安堵からまた涙が出そうになった。
白「……あれ、りんちゃん……?」
『!し、しら……う、ひぐっ』
ゆっくり瞼を開けた白石さんは、大号泣する私に驚いたのか慌てて身を起こす。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった私の顔を見て、あやすように頭を撫でた。
『しら、いしさん……生きてて良かったぁ……』
白「勝手に殺さんといて!?」
ひっくひっくと鼻を啜る私にすかさずツッコみ、「ほら、生きとるやろ?」と手を握ってくれる白石さん。
優しい温かさを感じて、コクコクと頷いた。
華「……そろそろ良いかしら?」
白「っあ、すみません…」
華「白石くん、最近寝てなかったんじゃない?十分に睡眠取らないと、テニス等の激しいスポーツは危険なのよ」
白「……はい」
「すみませんでした」ともう一度頭を下げる白石さんに華村先生が近付き、「いい子ね」と頭を撫でた。
華村葵(ハナムラ アオイ)先生は白衣の上からでもわかるほどスタイル抜群で、色気がある。
そんな先生が白石さんと並ぶと、とても絵になるけれど……
華「それとも、眠れないんだったら先生が一緒に寝てあげるわよ?」
白「え」
『!だ、だだ駄目ですっ私が一緒に寝ますから!』
白石さんを守るように前に立ち、その言葉の意味を深く考えずに叫んでしまう。
「冗談よ」とクスクス笑う先生に私の顔もカアアアァと赤く染まっていった。
「何かあったらすぐ呼んでね」とだけ言い残し、保健室を出て行った華村先生。
しーんと静まり返る部屋に急に恥ずかしくなって、『な、何か買ってきましょうか?』と早口で尋ねた。
白「ううん…りんちゃんと居りたい」
『はいっじゃあ……え、ええ!?///』
不安気に見つめてくる白石さんにきゅうううんと胸が締め付けられて、息が詰まる。
コクンと小さく頷くだけで精一杯な私は、ベッドの隣の椅子に腰掛けた。
外は日が沈みかけていて、保健室の中をオレンジ色に染めていた。
窓の隙間から入ってくる風が、涙で濡れた頬を撫でる。
『寝不足なんですか…?』
白「最近な…でも、りんちゃんが一緒に寝てくれるんやろ?」
『ふええ!?』
子供っぽいヤキモチで言った言葉なのに、白石さんは至って本気で返してくる。
変な意味はないってわかっていても、妙に意識してしまう。
『(寿葉ちゃんがあんなこと言うからだ……)』
昨日、女子部屋で聞いたことが頭を過って、思い出す度に顔を覆いたくなる。
それでも、白石さんが眠れるなら、私の緊張なんてどうでも良いかもしれない。
"いいですよ"と口を動かそうとした時、白石さんの細くて綺麗な指が私の涙を拭った。
白「りんちゃんってほんまにウサギみたい」
『??』
白「寂しがりやですぐビクビクして、泣き虫で逃げ足が速くて……ほんまは甘えたいのに、下手くそなところ」
『(へ、下手くそ……!?)』
ガーンとショックで固まるけれど、冷静になれば全部その通りで言い返す言葉もない。
白石さんは親指でもう一度涙を拭い、「可愛くてしゃーない」と微笑んだ。
『(………あ)』
笑った。白石さんが…私に向かって。
いつもみたいに、笑った。
もう、二度と微笑んでくれないかもしれないと思っていた。
それでも、白石さんは……
気付いたら、ポロポロと涙が頬を伝っていて、白石さんの掌の上に落ちた。
『…………すき』
好きだ。こんなにも、愛おしい。
『…好き、白石さんのこと』
白「……………」
『好きなんです……』
例え白石さんに嫌われたとしても、きっと私は。
『(ずっと好きだ………)』
せめてこれ以上落胆されないようにと、目に力を入れて涙を止めようとしたのに、「うん…」と優しい声音が私をあやす。
白「…おいで。りんちゃん」
『……っ』
両手を目一杯広げて待つ白石さんの胸に、躊躇いなく飛び込んだ。
よしよしと背中の後ろをさすってくれる手が優しくて、また涙が溢れそうになる。
ドクドク高鳴る鼓動が重なって、このまま1つになって消えるかもしれない。不思議とそれでも良いと思った。
白「………俺も………好き」
少し震えた低い声が、耳の奥を掠める。
抱き合ってわかった。
"好き"ただそれだけ。
それだけなんだ。
白「好きや……っこんな好きになって、ごめんな」
白石さんの吐き出すような告白に胸がいっぱいになって、ぎゅっと背中に回した腕に力を入れた。
『(大好きだよ……)』
全部全部、伝わったらいいのに。
私達は、進んで、戻って、ほんの少し進んで。
幾度となく繰り返すことさえ、愛おしいと思ってしまうから。
飽きるほど愛を囁いて、これ以上くっ付けないくらい密着して。
鼓動が落ち着いてきた時、漸く顔を上げた。
白「目ぇ真っ赤」
『!だ、誰のせいだと思ってるんですかっ///』
白「うん。ごめんな」
『…っ』
どれだけ心配したと思ってるんですか。言いたいことはいっぱいあるのに、ふっと目を細める白石さんに何も言えなくなってしまう。
涙を拭いてくれる指が頬を撫でて、自然と上を向かされる。
ぎゅうっと目を瞑る私に、クスリと微笑む白石さん。
白「なんか…緊張するな」
『…白石さんも…?』
白「心臓バックバクやで?」
「かっこ悪いけどな」
眉を下げながら笑った白石さんに、またきゅうううと胸が締め付けられて。
吸い寄せられるように顔が近付いて、恥じらいながらどちらともなく瞳を閉じる。
辿々しくて、まるで…これが初めてするキスのようだった。