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*博生side*
みんな~こんちはっっ桃城博生(モモシロ ヒロキ)っス!
青学テニス部、桃城武の弟だよ!
何で俺sideかって?知らね~
やっぱ注目選手だからじゃん??
葉「…博、さっきから誰と喋ってんの?」
こいつは親友の海堂葉末(カイドウ ハズエ)。
兄ちゃん同士は顔を合わせれば喧嘩同士の仲だけど、俺らの関係は至って友好なのだ。
葉「いい加減ふざけてると埋めるよ」
……うん。友好友好。
マイク代わりに持っていた木の枝を置き、葉末の圧力に負けて大人しくダンボールを台車に積んだ。
その中には、人参、大根、ピーマン、レタスに、醤油や砂糖、塩などの調味料系もある。
勿論、小麦粉や牛乳……お米も。
大量のダンボールを乗せた台車を、俺と葉末は汗水流して押していた。
俺らは決して八百屋になった訳ではない。
ましてや引越し屋でもない。
そう、全ては……
博「覚えてろー!合宿めー!」
この山奥で、3ヶ月に渡る長期の合宿に参加している選手達の為だった。
葉「しょうがないだろ…ここのところずっと大雨だったんだから。山奥は交通の便も悪いし」
博「でもさぁ、俺らが食料運ぶ意味なくない?寧ろ何で俺ら?ってレベル。何故にこの人選だよ!?」
葉「さぁ…兄さん達が参加してるからじゃないの?」
博「え、テキトーすぎる。もっと理由あるでしょ、どうしても俺らに行ってほしい理由が……!」
葉「……暇そうだったから?」
葉末の呟きに何か返そうと頭を働かせるも、上手い答えが見つからず、俺は考えることを放棄した。
考えるより手を動かせってな!(←バカ)
つまり、ここのところ大雨や台風の日が続き、そのせいで食料の納期が遅くなった為、合宿参加者が非常に飢えているらしい。
そこで、トラックを待たずして代わりに届けるよう頼まれたのが、俺達2人なのだった。
博「電車動くならどうにかなんじゃんって思ったけど、無理だわ。遠すぎるわ。あ、でもトレーニングには最高じゃね?」
葉「博ちょっと黙って……今足の震えと戦ってるところだから」
博「は、葉末ーーー!!!」
プルプルと産まれたての子鹿みたいに足を震わせる葉末。
親友をこんなにさせるまでこき使いやがって!と、ほとばしる怒りをどうすることも出来ずに、俺は渾身の力を振り絞ってだーっと駆けていった。
『2人共、疲れたよね?本当にありがとうっ』
前言撤回。最高だ、来てよかった合宿。
無事、合宿所に到着し、食堂のおばちゃん達に歓迎されていた頃。
パタパタと軽やかな足音と共に、りん先輩が姿を見せた。
疲れた身体は自然とロビーのソファーに向かう。そんな俺達に気を遣い、一生懸命おもてなしをしようとするりん先輩。
癒されていたのは俺だけじゃないようで、さっきまで死にかけの魚みたいだった葉末も今や爽やかに笑い、姿勢良く座っていた。
……わかりやすい奴め。
『2人が来てくれて良かった』
ふんわりと柔らかく微笑んだ先輩に、気持ちに羽が生えたような感覚になる。
何か、何処までも飛んでいけそうだ……
『重かったよね?』と眉を下げて問われると、俺は首が取れるんじゃないかと思うくらいに、盛大に横に振った。
その横で、葉末の首も負けじと左右に揺れていた。
葉「いえ。このくらい大したことないです」
博「そうそう!楽勝だったっス!」
『ほんとうに?何処か痛いところない…?』
博&葉「「大丈夫です。男なんで!!」」
見事に声を揃え、キリッと決め顔まで作る。
そんな俺達を目をぱちぱちさせて見ていた先輩は、途端に口元を緩めた。
『博くんも葉末くんも、本当に先輩にそっくりだね』
博&葉「「??」」
俺と兄ちゃんが似てる?あんな単純じゃねぇよ??
と思っても、先輩がクスクス可笑しそうに笑うから全てどうでも良くなった。
りん先輩といる時の、ふわふわした優しい気持ちが好きだ。
多分、先輩が柔らかい人だから、相手にも伝染するんだと思う。
先輩は、言わば青学のマドンナ…アイドル的存在だ。
部活の辛い練習も、りん先輩が居て、いつも応援してくれるから頑張れた。
俺が入った年は、全国大会優勝の経歴から新入部員が溢れるほどいた。
けれど現実は厳しく、葉末の兄ちゃん(海堂先輩)の考えた練習メニューは鬼かと思うほどキツかった。
「辞めたい」と空を見つめボヤいていた部員は何人もいたが、その度にりん先輩の顔を思い浮かべては励まし合ってきた。
それほど、青学にとってりん先輩は重要な存在なのだ。
『2人共、今日泊まってくよね。良かったら先にお風呂入る?』
葉「大丈夫です。今から戻るんで」
『えっでも、もう電車ないよ…?』
葉「……それは本当ですか」
チラリと葉末の腕時計を盗み見ると、5時になったところだった。
「田舎すげぇ」と騒ぐ俺をスルーし、葉末はどうしたものかと頭を悩ませている。
葉「一度、竜崎先生に聞いてみます」
博「えーいいじゃん、泊まっちゃおーぜ!楽しそうだし」
『うんっ先生のとこまで一緒に行こっか』
葉「ありがとうございます」
博「皆俺のこと見えてないのかな…?」
てか、りん先輩まで…!?
泣きべそをかきながら後ろから付いていけば、先輩は『ごめんね』と悪戯っ子のように笑いながら振り返った。
そんな顔が見れるなら、これからは率先していじられにいこうかな……
ニマニマと口を緩める俺を見ていた葉末は、「博、キモいよ…」と引いていた。
博「いや~さいこ~だわ~~」
広い大浴場で身体を温めた後、近くのマッサージチェアに寝そべっていた。
まだ練習中らしく、他に人はいない。
隣にいる葉末も何だかんだ満喫しているようで、ピッとコースを強に変える音がした。
葉「………それでさ、」
博「んー?」
葉「りん先輩の絆創膏だけど」
葉末の呟きに、うとうとしていた頭がピクッと反応した。
この極楽気分が一変し、深刻な雰囲気となっていく。
博「…気付いてた。虫刺され、とかじゃねぇよな?」
葉「違うでしょ。あんなピンポイントで首元だけとか…考えられなくもないけど」
博「やっぱ、彼氏かな、」
ウイーンと、マッサージチェアの音だけが響く。
先輩の彼氏……噂では聞いてたけど、そんなに独占欲が強い奴だったなんて。
「「俺らの(?)りん先輩に…」」と2人揃ってゴゴゴ…と怒りが湧き上がってきた。
博「ちがう!もしかしたら越前部長が付けたのかも!」
葉「それはそれで大問題だよ……」
問題発言をしたことに気付かない俺に、葉末はハァと溜め息を吐く。
だってさ、何処ぞの誰か知らない男より、越前部長の方がずっと安心じゃん?(←本気)
パタパタと近付いてくる足音に気付いて、ばっと身体を起こした。
『やっぱり2人共ここにいた!』
リョ「博、葉末」
博&葉「「越前部長!」」
ホッと安心した顔をするりん先輩の後ろには、部屋着姿の越前部長がいた。
流石部長、ラフな姿でもかっこいいぜ…!
部長は、2年の時は殆んど俺と身長が変わらなかった。
でも今はかなり伸びて、見上げるほどになったのだ。同時にかなりモテていることも知っている。(クラスの女子も先輩かっこいいとか騒いでるし)
部長みたいなクールでかっこいい男になるんだ!と兄ちゃんに言うと、何でか豪快に笑われるんだよなぁ。
『2人共、今日泊まる部屋だけど、1室空いてるからそこでいいかって』
葉「はい。大丈夫です、ありがとうございます」
リョ「先輩達がケーキ奢ってやるって言ってる…食堂のだけど」
博「ほんとスか!?やり~!」
思わずバンザイをする俺に、博は「1個だけにしろよ」とたしなめた。
ふと賑やかな声が聞こえ始めたと思えば、練習を終えた選手達が集まってきていた。
これでも上下関係の厳しい運動部で生きてきたのだ。俺達がいない方が良いことくらいわかる。
そそくさと退散しようとした時、「ぶへぇ!」と何かにぶつかってしまった。
金「たたた……目がチカチカするわぁ…」
博「……っ(何だぁ…??)」
「1番風呂やー!」と服を脱ぎながら豪快に走ってきた男と衝突。
尻餅をついて目を回す俺は、男が眩しい赤髪であることしか判断出来ない。
金「あ!コシマエ、これから風呂なん??一緒に入ろ~や!」
リョ「やだ。騒がしそうだし…」
『き、金ちゃん服着て…っ///』
両手で顔を覆って恥じらう先輩が可愛い……じゃなくて!
越前部長に戯れ始めた"金ちゃん"という男は、タメ口なので俺の先輩なのかもしれない。
女々しくも地べたに女の子座りする俺を、「大丈夫か?」と後ろから誰かが起こしてくれた。
白「コラ金ちゃん、そない走ったら危ないやろ。自分ケガないか?」
金「げ!白石……兄ちゃんごめんなぁ!」
博「全然大丈夫!それと多分、俺の方が年下だし、兄ちゃんじゃないっスよ」
金「え、そうなん??」
越前部長が葉末と俺の自己紹介を軽くしてくれると、「桃ちゃんとマムシの兄ちゃんの弟なん!?」と金ちゃんは興味津々に食い付いてきた。(上半身裸で)
その隙に白石?さんは自分の着ていたジャージを脱ぎ、金ちゃんに羽織らせていた。
白「りんちゃんと越前くんの後輩なんやな。遠いとこぎょーさん運んでくれて、ほんまにありがとう」
キラキラと効果音付きの笑みを浮かべる白石さん。
その眩しさに思わず目を細め、「い、いえ…」としか言えない俺。
『あ、シャンプー切らしてたので、新しいのに換えておきました。あとボディソープも』
白「おおきに。1人で大変やったやろ」
『いえっ杏ちゃんも、手伝ってくれたので…』
博「?」
あれ?りん先輩、急に雰囲気が変わったような…?
それにしても、2人共整った顔立ちだから、並ぶと更に輝きが増して直視出来ない。
白石さんってジュノ◯ボーイか何かか?
身長も高いし、物腰柔らかだし、超モテそう……
葉「…りん先輩に似てる」
博「うん…」
2人の醸し出す雰囲気が似ていて、今まで傍観を貫いていた葉末がポソリと呟いた。
もしかして…と"その"可能性にたどり着くと、葉末も同じことを思ったのかお互いに顔を見合わせる。
博「あの、りん先輩の彼氏って……」
唐突な質問に、驚いた先輩はボッと顔を赤くした。
え、と小声で呟いたのは、俺なのか葉末なのか。それさえもわからないほど、動揺していたのだ。
視線を動かして白石さんを見ると、まるで肯定を意味するように、ニッコリと綺麗な微笑みを浮かべていた。
博「(ああ………)」
やっぱり最悪だ、合宿!