侵入者
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あれから15分経ってもそのスピードは落ちず、"ピンポーン!"と凄まじい勢いでボタンを連打する男達の姿があった。
どうやら、先程の質問は〈基本編〉らしく、〈学校編〉〈趣味編〉と長く続いていき……
忍「第30問。〈りんちゃんの趣味は…〉」
千石「"ピンポーン!"料理!」
忍「〈…ですが、和食の中で一番の得意料理は?〉」
リョ「"ピンポーン!"魚料理」
こんな問題朝飯前だ、とでも言うように次々と答えていくリョーマ。
"ピンポーンピンポーン!"と正解の音が鳴り響くと、他の者は悔しさでギリリと奥歯を噛み締めた。
財「あんだけりんバカなのに、部長が負けるとかあり得ないっスわ」
千「(財前が珍しく白石の応援しちょる…)まぁまぁ。でも白石、基本編は殆んど正解だったばい」
髪型の名称、身長、体重、何故かホクロの数まで、白石はロボットのようにスラスラと答えていたのだ。
白石の重すぎる愛を知っている四天宝寺メンバーは、これしきのことで今更驚きはしないが…
りんの幼少期の人間関係を知っていた時は、流石に頬を引きつらせた。
財「…いつかストーカー違反で捕まるんちゃいますか」
千「(……すまん、白石。弁護する言葉が見付からんばい)」
ぽつりと呟く財前に、千歳は悲しくもフッと目を伏せた。
観客席でそんな会話が繰り返されているとは露知らず、"ピンポーン!"と美しいフォームでボタンを押す白石。
白「(りんちゃんが最近した料理は…)マグロの味噌漬け!」
忍「"ピンポーンピンポーン" 第32問。〈りんちゃんが作る洋食の中で、一番の得意料理は?〉」
白「"ピンポーン!"ふわふわハンバーグ!」
「「「「(す、すげー………)」」」」
参加者含め、観客席で見ていた皆は白石の正解率に呆気に取られるばかり。
これは流石にりんも引いているんじゃないか…と一斉に視線を向けると、彼女は頬を桃色に染め、恍惚とした表情でいた。
『(……か、かっこいい///)』
「「「「(何故…………)」」」」
ストーカーの疑いがある彼氏でも、りんは独自のフィルターに掛けて見ているようだ。
忍「第33問。〈りんちゃんが最近作った編み物は?〉」
リョ「"ピンポーン!"腹巻き」
『わわわ!お兄ちゃん…!///』
恥ずかしさで、"ピンポーンピンポーン!"と鳴る音が一際大きく感じた。
最近、父南次郎がお腹を冷やしたと言っていたので、編んだばかりではあるが…
腹巻きと公開されると、恥ずかしくなるのは事実だ。
カァァと顔を赤くして俯くりんだが、皆は真剣な面持ちで、組んだ手の上に顎を乗せていた。
白「(………りんちゃんの作った腹巻き、巻きたいわ)」
跡「(………手作りなら欲しい)」
丸「(………てゆーか編み物してるとこ見たい)」
リョ「(………帰ったら親父殴ろう)」
腹巻きでも何でもいいから、身に付けたい一同だった。
其々ポイントを獲得していき、残すは〈恋愛編〉だけとなった。
菊「さー最後の問題は、◯×問題!手元の札を上げて答えてねー!
そしてそして~最後のお題の出題者は、この人にお願いしてます!!」
要「はーいよろしくね~」
リョ&白「「!?」」
『!要先生!』
爽やかに登場した要。
「りんーお前大人気な」と手を振り合っていれば、その光景を見ていたリョーマと白石はゴオッと火花を散らした。
敵意を露にする2人の物凄い殺気を感じ、「…早く質問していいかな?」と要はダラダラと冷や汗を流す。
要「〈恋愛編〉第40問。〈りんのファーストキスの相手は、白石くんである。◯か×か?〉」
『(ふぇ!?)』
リョ「…………」
突然すぎる質問に、りんの身体は飛び跳ねた。
回答は、白石が「◯」リョーマが「×」跡部が「×」丸井が「◯」
千石が「×」ダビデが「◯」裕太が「◯」であった。
そして、正解は………
要「正解は、"×"ね。」
『!』
ファーストキスの相手は、白石ではない。
りん自身もその記憶がないので…内心動揺していた。
リョ「(…やっぱ覚えてないんだ)」
リョーマはチラリとりんに視線を向けると、困ったようにここを見つめていた。
白「…………」
要「第41問。〈りんの好みのタイプは、要先生のようにかっこいい人である。◯か×か?〉」
これは、全員一致で「×」の札を上げる。しかし、正解は……
要「正解はー"◯"」
「「「「!??」」」」
『ええ!?』
語尾にハートマークまで付ける要に、りんも思わず叫んでしまった。
跡「おい、勝手に答え作ってんじゃねぇぞ!」
丸「お前みたいなインチキ臭いやつ、りんが好きなわけねーだろぃ」
千石「うんうん、同感だね。勘違いは見苦しいですよ?先生」
要「ちょ、酷いなぁ。俺だってモテるんだよ?」
一斉に責められ、返す言葉に困る要。
『あの、先生…私もそんなこと言ってませんよ?』
要「りんまで!?」
普段は優しいりんがキッパリと言い切るので、流石に泣きたくなってきた。
「水城先生…」と低い声に呼ばれ、振り向くと。
白「ふざけんといて下さい。本気でやっとるんですから…お願いします」
ビキキ…と頭に何個もの怒りマークを付け、ニッコリと微笑む白石。
まるで地獄の淵から這い上がってきたようなオーラに、要は渇いた笑いで答えるしかなかった。
要「…コホン。第42問。〈りんは好きな人にはMである。◯か×か?〉」
『!(何でそんなこと聞くの!?///)』
今すぐ要の口を塞いで質問を止めさせたいほど、恥ずかしい質問ばかりだ。
あわあわと慌てるりんの心配も空しく、皆は至って真剣な面持ちで答えを考えていた。
丸「(……絶対M)」
千石「(……絶対Mだけど)」
裕「(…Sなりんも……)」
「「「(いい!!!)」」」
ポワワ~ンと想像し、思春期真っ盛りの男子高校生達はぐっと拳を握った。
いい子なりんが、見下すように命令するのもいいかもしれない。
そんな妄想を勝手にされているとは知らず、りんはプルプルと顔を赤くして震えていた。
その後も耳を塞ぎたくなるようなプライベート丸出しの質問が続き、りんはその都度、顔を赤くしたり青くしたり忙しなかった。
『(~…っか、要先生は絶対Sだ……)』
「第50問ー」と楽しそうに出題する要を、りんは恨めしく思って見つめる。
要「〈最近キスをした。◯か×か?〉」
ドクンと、心臓が大きく鳴った。
『(………キ……ス)』
熱を帯びた指で、唇にそっと触れる。
無意識に漂わせた視線は、ある人物の元に止まった。
白「(…キスって……)」
放課後の教室でりんとしたことを思い出し、白石は◯の札を上げようとした。
無意識にりんを見つめた時……気付いてしまった。
その瞳が、自分に向いていないことに。
『……………』
自分でもない、リョーマでもない、それは……跡部に向けられている。
白「(………な…んで……)」
遠くからでもわかるほど、頬を染めて。
そっと跡部を見つめる顔は…自分を好きだと言ってくれる時と良く似ていた。
跡部の手に握られた"◯"の札が静かに動いた時……「これは何事ですか!?」と思いもよらぬ声が響いた。
黒「齋藤コーチ!マネージャーの件は済んだ筈ですが?」
齋「黒べぇの言う通り、1回は決まったんだけどね。納得がいかないって他のチームの選手達が訴えてきたので…クイズ大会をすることに」
黒「だからそれが可笑しいのです!兎に角、今すぐ練習に戻りなさい」
黒部の迫力ある怒声に、近くにいたりんは『っ!』と身を縮めた。
それに気付いた黒部は一瞬躊躇い、「……この件は、一旦こちらが持ち帰ります」と僅かに声を小さくして話す。
皆納得がいかないが渋々と動き始め、りんも席を立とうとした時だった。
突然腕を握られ、顔を上げる間もなくその人物は歩き出した。
『あの…っ白石さん?』
白「……ええから、ちょっと付き合うてや」
スタスタと大股で歩くから、りんは半ば引き摺られていた。
ぐっと力強く握られた腕が痛み、『白石さん、腕…っ』と捩るが、びくともしない。
ゾクリ、と震える。
自分に対して、ここまで怒りを露にする白石は初めてだ…
リョ「白石さん、離して下さい」
『!』
りんを守るように立ち塞がるリョーマを、白石は足を止めて見返した。
白「何処連れてくのも、俺の自由やと思うけど?」
リョ「りん、怖がってるんで」
白「…りんちゃんが怖がってるって何でわかるん?」
リョ「兄妹だから「兄妹やからって、何でもわかるとは限らんやろ!!」
その大声に、空気が震えた気がした。
一瞬しん…と静まり返るが、すぐにざわざわと周囲は動き始める。
紅「ちょ、蔵?落ち着きぃや、取り合えずりんちゃんの手離し…」
前に回って白石の顔を覗いた紅葉は、ハッと息を飲んだ。
顔を見てすぐに、怒りでどうしようもない感情だけが伝わってきたから。
跡「何の騒ぎだ?」
千石「わかんないけど、白石がりんちゃんを連れていこうとして、越前くんが…」
離れた場所にいる者もその異変に気付き、不思議に思った跡部は近付いていく。
いち速く気付いた白石は横目で睨み、腕を掴まれていたりんは面を上げた瞬間、ハッと気付いたような顔をした。
目と目が合った時…その頬はカアッと赤く染まっていった。
白「……行くで」
『!い…っ』
リョ「りん…!」
俯くりんを強引に引っ張り、白石は歩き出す。
痛さで顔を歪めるりんのもう片方の腕をリョーマは慌てて掴むが、『お兄ちゃん、大丈夫だから』と言われてしまった。
リョ「っ」
無理矢理笑顔を作って、安心させたいのは明らかだ。
そっと手を離し、リョーマはただ、離れていく妹の言葉を信じるしかなかった。