kiss
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朝からぽつり、ぽつりと降り続いていた雨は次第に本降りとなり、ザーと強い音が響いていた。
憂鬱な空と同じように、不機嫌なオーラを纏う男がここに。
紅「…………なぁ、謙也」
謙「…………何や」
紅「もう毎度毎度言いたくないんやけど………めちゃくちゃ機嫌悪ない?」
謙「……俺も思っとった」
ヒソヒソと幼馴染み達が話す先には、ずーんと負のオーラに包まれる白石がいた。
異様な空気をクラスメイトも感じ取っているのか、先程から彼に近付くものはいない。
河「ねぇ、何か白石可笑しくない?」
乾「ずっとブツブツ呟いてるな」
謙「えっ」
心配して河村と乾が言えば、確かに白石は机に向かって何かを囁いている。
疑問に思い、謙也と紅葉が近付けば………
そこには、机サイズに引き伸ばしたりんの写真が貼られていた。
謙「はいタイホーーー!!!!!」
紅「変態や!変態がおる!!」
ベリッと謙也はその写真を思いっきり剥がす。
「りんちゃん……りんちゃん」とまるで呪いの呪文のように呟く白石にゾクッとした。
謙「ひ…!し、しし白石ぃぃぃいー!!しっかりしいや!」
白「りんちゃん、ははは…りんちゃん」
紅「アカン、完全に頭にきとる!!」
謙也がガクガクと肩を揺すっても、白石はひたすらにそれを呟くだけ。
クラスメイトが騒ぐ前に何とか宥め、2人は話を聞いてあげるべく近くの椅子に座った。
紅「…で、ほんまは聞きたない、聞きたないけど、いやめっちゃ聞きたないけど、りんちゃんと何かあったん?」
謙「(…今3回言うたな)」
面倒事が嫌いな彼女は、余程聞きたくないのだろう。
「実は…」と話しながら、白石がさりげなく机サイズの写真を丸め懐に仕舞うのを、謙也は見ていた。
白「ここ数日、りんちゃんとまともに話せてないねん」
紅「りんちゃんもマネージャーの仕事で忙しいんやないの?」
白「それもあるけど、話そうとするとな、越前くんが間に入ってきて…………」
※ここからは白石さんの回想でお送りします
白「りんちゃん!」
廊下歩いてたら、荷物持ってヨロヨロ歩く可愛いりんちゃんがおってな、話し掛けたんやけど、
『あ、白石さ「りん、」
越前くんが来て、りんちゃんの荷物持って歩き出したんや。
『お兄ちゃんいいよ…っ』
リョ「…先生まだかって言ってたよ」
『えっほんと?急がなくちゃ!』
可愛いりんちゃんは申し訳なさそうに振り返って、『白石さん、また』と頭を下げた。
教室覗いて可愛いりんちゃんがおっても、いつも越前くんと話して気付かへんし。
可愛いりんちゃんとお弁当一緒に食べようと思っても、青学の皆と食べてて入れへんし。
挙げ句の果てには、俺の方を振り返って……
リョ「………………」←近付くなオーラ
白「……………」
…お兄ちゃん(越前くん)がめっちゃ睨んでくるんや。
謙「…どうでもええけどりんちゃんの前に"可愛い"付けるんは決まりなん?」
白「え、付けとった?」
謙「(こいつ……無自覚か!)」
自覚があったらあったらでまた面倒な気がする。
ゲッソリする謙也と同じような顔をした紅葉は、隣で頭を抑えていた。
紅「そんなんなぁ…蔵がいっつも独り占めしとるんやからええやないか」
白「…それだけやないねん」
謙「?」
ぽつり呟いたきり、白石は拗ねたように机に伏せてしまった。
白「りんちゃんが……嬉しそうやから」
謙也と紅葉は顔を見合わせる。
「それは(ブラコンやし)しゃーない」と口を揃えて言いそうになったが、親友の弱々しい姿に何も言えなかった。
『……?』
ふと誰かに名前を呼ばれた気がして、りんは振り返った。
杏「どうしたの?」
『あ…なんでもないよっ』
杏「そう?何だかりんちゃんご機嫌ね」
『ふぇ!?』
いつもよりニコニコと笑っている自覚がないのか、驚くりん。
隣で資料を持って歩いていた杏は、自身の顔を触る姿にクスクスと笑う。
杏「いいなぁーりんちゃんは。あんなに素敵な恋人がいて」
"恋人"と聞いて、『…う、うん///』と小さく頷いた。
杏「この間、白石さんと出掛けてたんでしょ?一緒に帰って来た時はちょっとびっくりしちゃった」
『!それなんだけど…』
恥ずかしそうにもじもじするりんを不思議に思い、杏は顔を近付けると小声で囁かれて。
『…わ、私、どんな感じだった?』
杏「?どんな?」
『変だった?』
一緒に寝て?なんて本当にお願いしたのだろうか。
白石の言ったことがもし本当なら、恥ずかしくて恥ずかしくて消えてしまいたい。
カァァァと顔を赤くして答えを待つりんを、杏は微笑んで見つめた。
杏「いつも通りだったわよ。ただ、何かお邪魔かなーと思って私は隣の女子部屋にいたの」
『そ、そうだったんだ///』
杏「でも一緒に寝てたとは思わなかったけど…」
『!!?』
少し顔を赤くして杏が呟くので、りんは更に真っ赤になる。
「大丈夫、誰にも言わないからっ」とガシッと手をとられ、何やら大きな勘違いをさせてしまったみたいだ。
杏「りんちゃんが大人の階段を登ったことは少し寂しいけど、」
『?…………え、えええっ!?』
"大人の階段"と聞いて、鈍感なりんでも何を指しているのか理解した。
『ち、違うよ…!』と慌てて否定するが、うんうんと独りでに頷く杏。
杏「大丈夫。付き合ってるんだし、そういうことになるのは自然だと思うわ」
『ち、違うってば!///』
杏「確かに、最近りんちゃんもっと可愛くなったし……」
『ほんと…?で、でも違うからね!!』
何を言っても聞き耳を持ってくれない杏に、りんは顔と手を目一杯横に振って否定する。
芥「なーになに?何の話してんの~!」
『!?ひゃわ!』
ガバァと後ろから突然抱き付かれ、りんは思いきり変な声を上げてしまった。
ぱっと振り向けばニッコニッコと太陽のように笑うジローがいて、何処かホッとした。
『ジロちゃんかぁ…びっくりしたよ』
芥「えへへ~あ、それ俺持つC!」
いつものごとくハイテンションな様子で、りんと杏の持っていた資料の束を持つジロー。
『え、悪いよ…っ』と直ぐ様断ろうとしたりんも、「だーいじょうぶ!」と笑われてそれ以上は言えなかった。
『ありがとう、ジロちゃん』
杏「ありがとうございます」
芥「このくらいどーってことないC~いっつもハードな練習してんだもん」
練習中、大抵は眠って過ごしていたので、ジローにとって合宿の練習は"地獄"以外何物でもない。
「りんちゃんが氷帝のマネージャーだったらEのに」と呟くジローに、りんも嬉しくて微笑む。
芥「そしたら練習も頑張れるのになー」
『ふふ、氷帝の皆は元気?』
芥「うんっあ、そうだ!」
ポンッと何かを思い出したように手を叩く。
芥「今日さ、皆で中庭でお昼食べる約束してるんだよね!」
『わぁ、楽しみだねっ(仲良いなぁ)』
芥「すっげー楽しみだC!りんちゃんも一緒に行こうよ」
『へ??』
"一緒に行こう"の言葉に、一瞬ドキリとするりん。
ある人物が直ぐ様頭に浮かび、払うようにブンブン頭を横に振った。
『えっと……あ、跡部さんもいるの…?』
芥「え?跡部?」
ジローはキョトンと目を丸くして、りんを見つめる。
芥「来ると思うけど…だって跡部の家から取り寄せたお肉でバーベーキューするから」
さらっととんでもないことを言ったジローに、「流石跡部さんね…」と杏は頷いた。
『お肉取り寄せても大丈夫なんだ』と、その隣でずれたツッコミをするりん。
芥「……りんちゃんって跡部と喧嘩したの?」
『え!?』
芥「だって、2人共なんかよそよそしいC、あんまり話してないから」
何処かしょんぼりして話すジローに、りんは『ち、違うよ…っ』と慌てて否定した。
端から見たら、そんな風に思われてるのだろうか。
りんはモヤモヤを消し去るようにもう一度頭を振り、ジローを見つめた。
『…私も、楽しみにしてるねっ』
ジローも岳人もいるし。それに、皆に会いたい。
自分の気持ちを正直に伝えたりんを見て、ジローは嬉しそうに頬を緩めた。
芥「うんっ!ちょー楽しみだね!」