てのひら
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*りんside*
夢を見た。
お兄ちゃんと白石さんの姿が見えなくなって、真っ黒な空間に1人きりでいる夢。
怖いのに、声が出ない。手を伸ばして、掴むことも出来ない。
唯一動かせる足だけで必死に探すけれど、ただ真っ暗な闇が続くだけ。
『…………う』
泣きたくても泣けなくて、呼吸だけが苦しくなってきた時……誰かが、私の名を呼んだ。
ーりん、
まるで全てを包み込んでくれるみたいで……とても安心する。
額に温かさを感じて、次第に苦しさが安らぎに変わっていった。
良かった。もう怖くない。
リリリリリ…
何処からか聞こえる音で目が覚めた。
暫くぼーっと天井を見つめてから、ゆっくりと身体を起こす。
何だか…頭が軽いような気がする。
まだ寝ている杏ちゃんを起こさないようにして、そろーと部屋の扉を開けた。
『(何処の部屋だろ…?)』
部屋の目覚ましの音だと思い、それを便りに歩みを進めていく。
角を曲がると、異常な程に音が大きくなっていった。
『…ここだ』
"205号室"と貼られた部屋の前に立ち、誰も起きてないんだ…と確信する。
でも、このまま鳴り続けてたら駄目だよね?
暫く待っても止める気配がなく、すぅと息を吸って恐る恐る部屋の扉を開けると……
ジリリリリ
リーリーリー
ピピピピピピピピピ
『(わ、わわわ!)』
"アラーム大合戦"
という言葉がピッタリ当てはまるほど、大音量で色んな音が鳴り響いていた。
兎に角近所(?)迷惑になってしまうと、音を発する物体を探すことにした。
まず、2段ベッドの下で枕を抱き締めながら寝てる赤也先輩に目を向け、傍にセットしてある目覚まし時計を止める。
次に階段を上がって、背中を背けて寝ている財前さんの時計を止めた。
反対側のベッドの下は誰もいなくて、その上で寝ている日吉さんの時計を止めたのが最後みたい。
『や、止んだぁ………』
大合戦が終わったことに、思わずホッと息を吐いてしまう。
こんな大きな音が鳴っていても起きない先輩達に驚きつつ、『赤也先輩、朝ですよ』と声を掛けた。
先輩は「ん、んー…」と身体を反転させ、眠そうに瞼を擦る。
赤「…んあ"?……何で…りんがいんの?」
『目覚ましの音をたどっていったら、この部屋に着いたんです』
「まじ?あんがと…」とちゃんと理解してるのかわからないけれど、呟く赤也先輩。
座りながら瞼を擦る姿が何だか小さな子供みたいで、クスクスと笑みが溢れた。
『それにしても、皆さんお疲れなんですね…』
赤「いや~それもあるけど、こいつらも俺も朝弱いんだよな」
ふんふんと先輩の話を聞きながら、「ふぁ~」と欠伸をする姿に何だか申し訳なくなる。
無理矢理起こしちゃったのかな…としゅんと落ち込む私に気付いた先輩は、
赤「ちーがうって。前に部屋の奴等全員、遅刻しそうになってさ。ふくぶちょーにこれでもかってくらい叱られたから、早目に目覚ましセットするようにしたんだよ」
「だからりん様様っつーわけ!」と赤也先輩はニッと笑ってくれて、私も頬を緩めた。
赤「おーいキノコ起きろ!」
日「………………………うるさいワカメ……」
暫くの間があってから、ダルそうに身体を起こした日吉さん。
眼鏡をかけてから顔を上げた時、その目は大きく見開かれた。
日「何故…いる」
『え、えとっ』
朝の不機嫌なオーラを纏った日吉さんに見つめられ、ビクッと肩を震わす。
赤「んな怒んなって。りんは起こしに来てくれたんだからさ」
日「…別に怒ってない」
赤「眉間に皺ばっか寄せてたらすぐ老けるぜー」
日「…だから怒ってない!!」
ケケケと楽しそうに笑う赤也先輩に、日吉さんはカッと顔を赤くして今にも突っかかりそうで。
『せ、先輩…っ』と慌てて間に入ろうとした瞬間、2段ベッドの上で動く気配がした。
赤「財前ーお前起きるのビリだぞ!」
日「さっさと仕度しろ。お前が遅刻すれば俺まで怒られる」
『財前さんっおはようございます』
一斉に話し掛けられた財前さんはゆらぁと身体を揺らしながら、上半身だけ起き上がる。
それから顔を片手で覆うようにして、財前さんは動かなくなってしまった。
赤「財前?」
『財前さん?』
財「………………っ」
まるで二日酔いで頭が痛いお父さんのようで、オロオロと心配になっていると…
財「…揃いも揃ってキャンキャンと吠えやがって………………耳障りや」
まるで聞いたこともないような低い声に、私と赤也先輩はピシッと凍り付く。
財「…………なんや?」
赤「『なななんでもございません…!!』」
ヒュオオオオ~と財前さんの周りだけに冷たい風が吹いているよう。
何者も寄せ付けないような目で冷たく見下ろされれば、私の動きは完全に停止した。
海「!?りん何でここに、」
『か、か、どっせ…ぱ、い…!(※海堂先輩)』
ガチャッと部屋のドアが開かれたと思ったら、タオルを首に巻き、ランニング帰りのような海堂先輩がいた。
すがるように助けを求める私と赤也先輩に、ギョッと驚く先輩。
隣で日吉さんが「…取り合えず顔洗え」と呆れたように呟くのが聞こえた。
謙「財前?あいつ寝起き最悪やからなぁ」
すっかり目が覚めて、朝食をとる為に食堂に来ました。
時間が早かったのか、私と赤也先輩と日吉さんしかいなくて。(海堂先輩は汗を流す為、財前さんは目覚めの為にシャワーを浴びに行きました)
暫くして、謙也さんと神尾さんがやって来て、皆で朝食をとることになったのです。
赤「それにしても低血圧すぎっスよ」
謙「…そやな。合宿の時も毎度どこの死人かと思ったわ」
まるで地獄の淵から這い上がってきたようなオーラだったと話す謙也さん。
お兄ちゃんも朝は弱い方だと思ってたけど、もしかしたら…そんなことないのかも…?
今朝の財前さんを思い出していると、隣に座る神尾さんが何だかそわそわしていた。
神「あのさ、あ…杏ちゃんって一緒じゃない?」
『?杏ちゃんなら、もう少しで来ると思いますよ』
「そそそっか」とまだ落ち着かない様子の神尾さん。
どうしたのかなと首を傾げていると、神尾さんは顔を赤くして俯いた。
神「…学校、一緒に行きたくて」
……………学校??
暫くぽけっと固まっていた私は、山奥に新設された学校の存在を思い出した。
『(そうだった…!)学校っていつからでしたっけ?』
赤「へ?昨日からだぜ」
謙「りんちゃん昨日は1日寝込んでたらしいから、知らない筈やわ」
風邪をひいた日から、丸1日経ってたなんて…
どれだけ寝てたのだろうと恥ずかしく感じていれば、コツンと後ろから軽く頭を叩かれた。
正面に座る赤也先輩も同時に叩かれたらしく、揃って後ろを振り向けば……
仁「学校の存在を忘れるとは、たるんどる!………プピーナ」
『!仁王先輩』
丸「あーかや偉いじゃん、早く起きてよ」
赤「!丸井先輩」
丸井先輩はガムを膨らませながら、「よ、」と手を上げる。
『おはようございます』と言うと、仁王先輩も「プリッ」と返してくれた。(…挨拶?)
仁「似てたじゃろ?」
『はいっ一瞬真田さんかと思っちゃいました』
赤「朝からふくぶちょーの顔なんて見たくないっス…」
丸「あーあ、真田が聞いたらまた怒鳴られるぞぃ」
赤「ちょ、ちょ!絶対言わないで下さいよ!!」
3人の掛け合いが面白くて、自然とクスクスと笑みが溢れる。
すると、ふと丸井先輩と目が合った。
丸「体調良くなって良かったな」
『はい!ご心配お掛けしました、』
仁「本当じゃき。ブンちゃんずっとりんりんうるさかったからのぉ…」
丸「!仁王!///」
素早く仁王先輩の元まで来て、「黙ってろぃ!」と怒った様子の丸井先輩。
そのまま振り返った顔は赤く、何故か私も恥ずかしくなってしまって。
丸「………し、心配だったから。お前危なっかしいし」
『は、はい。ありがとうございます…』
次第に尻窄みになる私達を、仁王先輩と赤也先輩は何故かニヤニヤして見ていた。
日「……跡部さんも、心配していた」
『?ふぇ、』
日「何回か見舞いに行ってると思うが、」
温かいお茶を啜りながら言う日吉さんの言葉を、目を丸くして聞く。
跡部さんがお見舞いに…?
『…し、知らなかったです』
日「そうなのか?」
謙「侑二が言うとったけど、跡部って薔薇の花束贈ったんやろ? どんだけセレブやねん」
「キザかっちゅーねん!」とツッコミを入れる謙也さん。
私は食べ掛けのクロワッサンを口に入れながら、お礼を言わなきゃと決意を固めていた。