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小「あら、蔵リンやないの~部屋着姿もお・と・こ・ま・えやわぁ」
ユ「浮気かぁ小春!」
白「ははっ2人共おやすみ」
小&ユ「「おやすみ~」」
自販機の前でじゃれていた小春とユウジに遭遇した白石。
手を上げて別れた後、今度はロビーに見知った後ろ姿があった。
千「桔平今の観たか!?何度観ても感動するばい…」
橘「ああ、今のところだろ?いい男じゃないか」
千「うう、ア○タカは女心のわかるイケメンっちゃね…」
ロビーの広々としたソファーに座っていたのは、千歳と橘。
目の前の大型テレビにはジ○リ映画が流れていて、千歳は膝を折り曲げて涙していた。
大柄の男が何をしてるのかとツッコミたい気もするが、相手が相手なだけにその気も失せてしまう。
呆れ顔でいる白石に、「お、白石」と橘が顔だけ振り向いた。
白「コラ千歳。また勝手に持ってきたんか?橘くんごめんなぁ…付き合わせてもうて」
橘「いや、大丈夫だ。しかし千歳も変わらんな」
千「白石も一緒に観るか??」
キラキラと小さい子供のような目をして誘う千歳だが、「今度な」とあっさりと断られてしまった。
挨拶もそこそこに白石は1つの部屋を目指して歩く。
大好きな彼女のことを考えるだけで、ふわっと優しい気持ちになれる。
だけど、それも一瞬だった。
微かな風に髪が揺れて、自然と目は開ききった窓の外にいく。
真っ先に飛び込んできたのは、りんがリョーマと共に歩いている姿だった。
連れてかれている感じがするが、彼女も抵抗しているようには見えない。
白「…………」
途端、身体が冷えきったように冷たくなっていく。
ただ、その影が見えなくなるまで眺め続けている白石に、コツ…と足音が近付いた。
要「イケメンくんがいると思ったら、なんだ、君か」
白「………水城、先生こそ」
要「うん、良く言われるー」
いつも心の中で悪態をついている癖で、思わず呼び捨てしてしまいそうになった。
上手く誤魔化した白石に、要はまた一歩近付いた。
白石よりも鋭い瞳を細めて窓の外を見ると、何かを察したように独りでに頷く。
要「だから言ったでしょ。あの2人はどう見たって…「恋人」
溜め息混じりに要が話す前に、白石は言い切る。
白「…恋人みたいやろ」
りんが好きだから、りんの気持ちは痛いほどにわかってしまう。
りんは兄として尊敬しているつもりでも、その感情は……あまりにも恋と似ていて。
リョーマの方はそんなに鈍感ではないから、気付き始めてるのかもしれない。
悔しそうに顔を歪ませた白石は、もう窓の外を見ることはなかった。
要「…やっぱり気付いてたんだ」
白「越前くんが負け組になってここにおらへんこと、りんちゃんの為に言わなかった訳やないです」
心配させたくなかったから、なんて嘘だ。
白「言うたら、りんちゃんは越前くんを追い掛けて行ってまうかもって……全部、自分の為や」
いつもそうだ。りんが離れないように、自分の元に引き留めておく為に。
彼女よりも自分の気持ちを優先している。
そんな汚い自分を純粋に信じてくれるりんに、罪悪感はあっても……
要「…相手を自分のものにしたい。自分が想ってるくらい、相手にも好きになってもらいたい」
自分の心の声を代弁したような台詞に、白石は下げていた面を上げた。
横を向いている要の表情はわからない。
要「誰かを100%自分のものにするなんて、出来ないよ」
白「…知っとります」
要「自分が傷付いて、相手を壊すだけ」
その言い方に何がわかるのかと反発しそうになった時、要は寂しそうに眉を下げて笑った。
要「君は昔の俺にそっくりだ」
『………えと、これは…?』
りんは大きな目を真ん丸にさせた。
菊「あ、おチビーズ来た!」
不「良かった、りんちゃん部屋にいたんだ」
リョ「…っス」
『??え、えと』
「ちょっと来て」とリョーマに連れていかれ、寮から出て歩くこと数分。
そこには、勢揃いする青学メンバーと人数分の寝袋があった。
りんは主旨を理解していないもの、パジャマで外にいることが急に恥ずかしくなる。
見渡せば皆も部屋着を纏っていたので、ホッと安心した。
桃「それより、いきなり全員集合って…何かあるんスか?」
ふぁ…と欠伸を堪えきれず口を開ける桃城に、「皆揃ったな!」と嬉しそうな大石。
大「今から、全員ここで寝よう!!」
…………は、い………?と全員心の中で首を捻った。
菊「寝るって…ここで!?」
大「そうだ!川の字になって全員で寝ようじゃないか」
河「急に何事かと思ったら…」
乾「全員で眠る時点で川の字じゃなくなる気が…」
河村や乾の呟きも、やる気満々の大石には届かず。
ギラギラと期待に満ちた目で見つめてくる大石に、う゛…と皆は断る言葉を飲み込んだ。
桃「大石先輩ってたまに突拍子もないこと言うよな…」
リョ「…俺もたまに怖いっス」
菊「俺もたまにわかんなくなるにゃ…」
コソコソと小声で話す3人。
手「…うん。添い寝すると子は育つと言うしな」
不「何言ってるの手塚?」
同じく部屋着のまま、今まで黙って聞いていた手塚が静かに頷いた。
最早父親目線になる手塚に、不二は穏やかにツッコむ。
桃「で、でもキャンプ見たいで楽しそうっスね!」
河「確かに新鮮でいいかもね」
海「(全員で寝るなら怖くねぇよな…)」
実は、薄暗い中外にいることが怖かった海堂は一安心する。
周りが盛り上がる中、りんだけはまだキョトンとしていた。
『…梓さんは?』
大「え?一宮さん?」
同じようにキョトンと目を丸くする大石。
皆が同じような顔をしているので、りんは自分が変なことを口にしたような気になってきた。
『梓さんも連れて来たんじゃないの…?』
リョ「連れてきてないけど。何で?」
『な、何でって…っ』
逆に尋ねられてしまい、りんは焦ったように手を動かした。
ヤキモチだってことは、とっくにわかっていた。
ここは自分の居場所なんだって言いたくても言える訳なくて、ただ落ち込む自分が嫌で。
唇を噛んで俯くりんに、「馬鹿じゃないの」とリョーマが呟いた。
リョ「ほんと、馬鹿りん」
『!お、お兄ちゃん!?』
リョ「ば「僕らのマネージャーはりんちゃんだけだよ」
涙目のりんにすっと近付き、ニッコリと微笑む不二。
本当に言いたいことを先に越されてしまった悔しさから、リョーマはムッと眉を寄せた。
菊「?不二何言ってんのさ、そんなの当たり前じゃん」
桃「何かもう家族みたいっスよね~」
河「ははっそうだね。大石がお母さんで、手塚がお父さん」
大「お、お母さん??」
手「…………」
ふざけてお母さんお父さんと呼ぶ先輩達を見つめていたりんは、手塚と視線が合う。
全てを察したように優しく微笑むから、思わず涙が溢れそうになった。
『……お兄ちゃん達、お父さん、お母さん』
いつものようにふんわりとした笑顔を向けるりん。
大「りんちゃんまで……」
海「…寧ろ自覚がなかったのにびっくりっス」
がっくりと頭を垂れる大石に、皆は同時に笑った。
『…お兄ちゃん、寝ちゃった?』
練習の疲れからうとうとしていたリョーマは、ソプラノの声に顔を隣に向けた。
芋虫のように寝袋に包まれるりんが、自分も同じ格好をしているにも関わらず面白い。
リョ「…寝てない」
『そ、そっか』
リョ「?」
何か言いたそうなりんをじっと見ていると、布団で顔を半分隠してしまった。
『……い、一緒に寝てもいい…?』
か細い声を聞いて、リョーマは眠気が吹っ飛ぶのを感じた。
"一緒"とは、寝袋に一緒に入りたいということだろうか…?
流石に狭すぎると断ろうとしたリョーマだったが、不安気に待っているりんを見てハァと溜め息を吐いた。
リョ「…入れば」
『…!うん!』
その短い言葉にパァァと顔を輝かせ、りんはいそいそとリョーマの寝袋に入った。
まるで尻尾を振る子犬のようだと、リョーマは笑ってしまいそうになる口を押さえた。
りんはとん、とリョーマの肩に頭を付け、横向きになる。
『(…お兄ちゃんの匂いだ)』
くっついて見ると、以前と比べて肩も広くなったことがわかる。
ただ、変わったのは身長や体格だけで、中身は優しい兄のままだけれど。
『お兄ちゃん、あの時何で食堂にいたの?』
リョ「…あの時ってどの時?」
『私がここ(合宿所)に来た日の夜、音が鳴ってた時…』
あの時、確かに目が合っていたのに…リョーマは自分から視線を背け行ってしまった。
真剣に尋ねるりんに、リョーマはあの日のことを思い出しながら語った。
リョ「…負け組を指導してたオジサンが、俺らに酒取ってこいって言ってさ」
それも、謙也と比嘉の田仁志と共に。
見事食堂に忍び込んだのは良いが…大柄な田仁志がレーザーに引っ掛かってしまい、警告音が鳴ってしまったのだった。
リョ「りんが見てたのは…知ってた」
『ええ!知ってたの?』
同時に、合宿に参加したという事実にムカついた。
今回の合宿は3ヶ月もある。
りんを良く思っている男は大勢いるし、身の安全の保証はない。
しかも、自分は負け組でいないのだ。
リョ「(ほんと、どうするつもりだったんだよ……)」
見境もなくキスしようとしてくる恋人もいるし。
いつもりんは、あんなに簡単に受け入れているのだろうか。
悶々と考えるリョーマに首を傾げながら、りんは天を仰いだ。
山奥だからか、空気が澄んでいて、都会と比べて星が綺麗に見える。
吸い込まれそうなくらいの満面の星空を眺めていたりんは、ハッと目を奪われた。
『お兄ちゃん、流れ星…っ』
それは、一瞬。
キラッと真上を通り過ぎたのは間違いなく流れ星だった。
星が瞳に移ったんじゃないか、というくらいキラキラと瞳を輝かせるりんにつられ、リョーマも空を見上げた。
もう一度、キラッと星が真上を通り過ぎると、双子は同じ顔をする。
『!またっ見た?お兄ちゃん』
リョ「見たけど騒ぎすぎ」
『すごいねー先輩達も見たかな?』
リョ「寝てると思う」
『わかんないよ!寝てるようだけど、実は起きてるかも!』
リョ「…何それ、怖」
やけに自信満々なりんは、桃城のいびきが聞こえていないのだろうか。
菊丸なんて寝てる間にコロコロ転がり、反対向きになっているというのに。
リョーマがそっと目を瞑ると、自然とりんも目を瞑る。
小さい頃からずっと変わらない匂いに安心しながら、りんは深い眠りに落ちていった。